薔薇のルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールは、鮮やかなショッキングピンクの花弁が人気のつる薔薇です。
しかし、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールは、適度に蕾を除去する摘蕾 (摘心) という作業を行わないと、上手く咲かないという噂を聞いていました。
そのため、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールが咲く時期には、必ず摘蕾を行っていました。しかし、それと同時に、摘蕾をしなかったらどうなるのだろう?という疑問が毎年ありました。
そこで、2020年の春の開花シーズンには、勇気を出してルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの摘蕾を行うことを止めました。
結果として、大量の蕾が出てきてくれたのですが、多くの蕾が咲かずに終わり、かつ花の大きさが例年よりも小さくなってしまいました。
この記事では、その詳細を紹介していきたいと思います。
我が家のルージュ・ピエール
まず最初に我が家のルージュ・ピエールについて紹介しておきたいと思います。
私の育てているルージュ・ピエールは、2018年の春に大苗で購入した株になります。
現在は、鉢の大きさは10号鉢で、180cmのオベリスク仕立てで育てています。
年間の開花回数は3回から4回で、四季咲きというよりは返り咲きの性質があります。
肥料は薔薇専用の化成肥料を2カ月に1度与えておりますが、量は規定量よりも少なめに育てています。
毎年、蕾が付くシーズンには、一つの枝に蕾を1つか2つになるように摘蕾をしておりましたが、2020年の春の開花シーズンは蕾を全く取らず、全ての蕾を残して育ててみました。
残した蕾は全て咲くのでしょうか?花の大きさは例年通りなのでしょうか?
その結果を以下で紹介したいと思います。
蕾の数と咲いた花の数の関係
さて、早速ですが、一つの枝に付いた蕾の数と咲いた蕾の数の関係から紹介していきたいと思います。
ルージュ・ピエールは、下の写真に示すように、枝の先端に複数の蕾を付けます。この写真の例では、合計で4つの蕾が付いています。そして、この4つの蕾のうち、何個の蕾がしっかりと開花したのかを調査しました。
その調査結果をグラフにしたものが、下の図になります。横軸に一つの枝に付いた蕾の数、縦軸に咲いた数を示しています。
蕾が全て咲いた場合、蕾の数が咲いた数に等しくなるので点線で示す位置に結果が乗るようになります。
この結果を見ると、摘蕾をしなかったことによる弊害が明らかに出ていることがわかります。蕾の数が1つの枝に1つのものや2つのものは概ね全て咲いてくれています。しかし、一つの枝に3個以上の蕾が付いたものは、全ての花を咲かせることが出来ていない場合が多くなります。
特に、一つの枝に5個か6個の蕾が付いた場合については、2つしか咲かせていません。多くの蕾が開くことなく終わるという結果です。
つまり、咲かなかった蕾の分だけ、栄養やエネルギーを無駄に消費してしまっているということになります。
何だかすごく勿体ない気分になるのはわたしだけでしょうか…。
摘蕾の有無による花の大きさの違い
次に、摘蕾を実施した場合としなかった場合の、ルージュ・ピエールの花の大きさを比較してみたいと思います。
摘蕾をしたデータとしては2019年の春の花の大きさ、摘蕾を行ったデータとしては2020年春のデータになります。
花の大きさの測定は、花が開ききった時に物差しで大体の直径を測定しました。
さて、実際の花の大きさの比較データをグラフにしたものが下の通りです。
横軸が花の直径、縦軸が花のサイズ (直径) になります。
青色の棒グラフは摘蕾を行った2019年春のデータ、オレンジ色の棒グラフが摘蕾を行わなかった2020年春のデータです。
これもグラフを見れば違いが一目瞭然ですね。摘蕾を行った2019年春の方が確実に花の大きさが大きいです。これは、2020年の春の開花を見ていて、目で見て花の大きさが小さいことに気付くくらいでした。
花の大きさを平均すると摘蕾した2019年春は9.4cm、摘蕾しなかった2020年春は7.4cmとなり、約2cmも花の大きさが違っていました。
なぜ摘蕾しないと蕾が開かず花も小さいのか?
上で紹介した通り、摘蕾をしないことで蕾の数に対して花の咲く数が少なくなり、かつ花の大きさも小さくなってしまうことが明らかになりました。では、なぜこのようなことになってしまうのか?を考えてみたいと思います。
エネルギーが複数の蕾に分散してしまうため
まず、薔薇の花が開花に使うエネルギーに着目してみます。
例えば、1つの枝に花を咲かせるためのエネルギーが100あるとします。
もし、蕾の数が1つであれば100のエネルギーを1つの蕾に集中させることができるため、花の数は大きくなりますし、咲かせるエネルギーもたくさんある状態になります。
しかし、蕾の数が4個になると、一つの蕾に送るエネルギーが平均で25になってしまいます。そのため、花弁の大きさが小さくなり、かつ咲かせるためのエネルギーもなくなってしまう傾向になるのです。
摘蕾というのは、一つまたは二つの蕾にエネルギーを集中させ、確実に大きな花を咲かせるために必要な作業になるということがわかりますね。
ルージュ・ピエールの花弁数が多いため
蕾が開ききらないことを薔薇の世界では「ボーリング」と呼びます。
蕾が開かず、蕾が球状のままであることから、ボールに見立ててボーリングと呼ばれます。
今回紹介したルージュ・ピエールは少しボーリングしやすい薔薇であると言われています。
それは何故か?というと、大きな理由に花弁の数があります。
花弁数が少ない品種だと10枚程度ですが、一般的な薔薇では約30枚くらいは花弁があります。30枚の花弁というと、花の中では花弁数が多い部類になりますね。
これに対して、ルージュ・ピエールはどうか?というと…
実際に花を分解して花弁数を数えてみました。その写真が次の通りです。
驚きの数です!花弁数がぴったり100枚です!
花弁数が非常に多いため、それだけ開花させることが難しいのですね。
摘蕾を行わないと、ただでさえ花弁数の多い薔薇なのに、咲かせるためのエネルギーが分散してしまうので咲かなくなってしまうのです。
この記事の終わりに
この記事では、薔薇のルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールについて、摘蕾を行わなかった場合、どのような弊害が生まれてくるのかを調査した結果を御紹介させていただきました。
摘蕾をしなかった場合、蕾をたくさん付けても全ての蕾を咲かせることが出来ません。そのため、咲かなかった蕾に使用した養分やエネルギーが無駄遣いになってしまいます。
また、摘蕾をしなかった場合は、花のサイズが小さくなることもわかりました。これも養分やエネルギーが、多くの蕾に分散してしまった結果だと考えられます。
そしてルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの蕾が開きにくい (ボーリングしやすい) 理由は花弁数の多さにも原因があることも紹介させていただきました。
皆様が育てている薔薇も、花の大きさが中輪以上で蕾を多くつける品種は適度に摘蕾を実施してあげて、養分を無駄遣いしないように調整してあげてください。