園芸用のお花として人気の「ミニ薔薇」ですが、皆さんが持つミニ薔薇のイメージは、株の大きさも花の大きさも小さな薔薇と言うものではないでしょうか?
しかし、ミニ薔薇は上手に育てると普通の薔薇と同じくらい大きな花を咲かせるんですよ!
私はミニ薔薇を購入して、試しに地植えにしたのですが、1年の間に大きな株になり、普通の薔薇に負けないくらい素晴らしい花を咲かせるようになりました。
この記事では、ミニ薔薇を地植えにするときの注意点 (地植えの時期と害虫対策) や植え方・使用する土について、私の経験から内容を詳しく御紹介させていただきます。
記事の最後までお付き合いを頂けましたら幸いです。
本記事の背景と内容
記念日のプレゼントなどで、小さなポットに入ったミニ薔薇をもらったことがありませんか?
また、園芸店でミニ薔薇を購入したけど、花が終わったら放置して枯らしてしまった経験はありませんか?
ミニ薔薇は小さな鉢植えで楽しむことができますが、何点か大事なことを守れば、地植えで立派な薔薇に育てることが可能です。
ミニ薔薇はミニという名前が付いていますが、地植えにして育てると普通の薔薇と同じサイズの花を咲かせる株に大変身します。
私はミニ薔薇を地植えにして、2年目を迎えますが、ミニ薔薇とは思えない立派な株に育っています。
この記事では、私が実践したミニ薔薇の地植えについてポイントを紹介したいと思います。
ミニ薔薇栽培で私が学んだこと
ミニ薔薇の地植えの話に入る前に、まず最初に、ミニ薔薇についての基礎知識をお伝えしたいと思います。
ミニ薔薇って、知れば知るほど結構奥が深いんですよ!
「ミニ薔薇」という名前の起源と定義
ミニ薔薇というと、単純に「花の大きさが小さな薔薇」というイメージがあるかと思いますが、実はミニ薔薇の「ミニ」は起源を探ると小さいを意味するminiから来たものではないのです。
私も園芸を始めた当初はminiだと思っていました。
中国原産の「ロサ・キネンシス」という品種の薔薇があるのですが、そのロサ・キネンシスの突然変異で生まれた小さな樹形の薔薇を「ロサ・キネンシス・ミニマ」と呼んだのです。
この薔薇の名前の最後の部分にあるミニマから生まれてきた言葉がミニ薔薇の「ミニ」の起源になります。
また、ミニ薔薇は花の大きさが小さいことや、樹形もコンパクトなことから、ミニチュア系というニュアンスも含まれて、ロサ・キネンシス・ミニマを親に持つ薔薇たちを総称してミニ薔薇と呼ぶようになりました。
ですので、花の大きさや株の大きさではなく、ロサ・キネンシス・ミニマを親に持つ系統がミニ薔薇の一族になるのです。ミニ薔薇に関する知識として覚えておくと良いかと思います。
しかし、園芸店で売られている品種の記載されていない薔薇は、実はどの品種か判断することがほとんどできません。
ミニ薔薇は下でも書きますが、挿し木苗が流通の主流であるため、品種を選りすぐったブランドではなく大量生産の苗になります。
少し残念な気もしますが、どのミニ薔薇も育てると立派な花を咲かせる株になりますので、ミニ薔薇を手にされた時は、植え替えと肥料をきちんと行い、大事に育ててみてください。
ミニ薔薇の多くは挿し木苗ですが立派に育つ
園芸店で販売されているミニ薔薇は、生産者さんが「挿し木」で育てた株です。
私が地植えしたミニ薔薇も小さなポットに入った挿し木の苗でした。
挿し木は、親株の枝を土に挿して発根させた株ですが、親と同じ遺伝を持つので親と同じ花を咲かせます。
1つのポットに3本から4本の挿し木がされており、店頭で販売されているものは、見るからに細い枝に3cmくらいの花を咲かせています。
挿し木株は、薔薇の大苗のように野薔薇への接ぎ木ではないため、環境変化に弱かったり、株としての勢力が無いように思われがちです。
しかし、ミニ薔薇も元を辿れば、花木という遺伝子を持った薔薇の一種です。時間をかけて大切に育ててあげることで、挿し木苗とは思えない株姿に変貌を遂げますよ。
下で私が育てたミニ薔薇を載せますが、挿し木苗とは思えない姿です。
ミニ薔薇が病気・ハダニに弱いのは1年目だけ
ミニ薔薇は病気に弱いと言われています。確かに、黒星病やうどんこ病にかかりやすい印象があります。
理由は葉の厚さが薄く病気への耐久力がなかったり、葉の数が多いことで風通しが悪くなって病気に発展してしまうものです。
黒星病に感染した葉っぱを取り除いたら、葉が無くなって丸坊主になってしまった…なんてこともよくかることです。
しかし、病気になったからと言ってミニ薔薇が枯れるわけではなく、その生命力で新しい枝を次々と展開していきます。病気を防ぐために各種薬剤の散布や枝葉の整理は必要ですが、市販のスプレータイプの薬剤でも病気は防ぐことができます。
また、ハダニ (葉ダニ) に弱いという弱点もあります。
上記の通り、葉厚が薄いので、ハダニに影響を吸収されるとあっという間に葉がスカスカになってしまいます。
ハダニについては殺ダニ剤で対応ができますが、基本的には葉裏への水散布でハダニを窒息死させるなどで防御ができます。
また、ハダニは乾燥した空気が大好きですので、エアコンの室外機が近い乾燥するような場所を避けるなど、育てる環境にも注意してあげて下さい。
この病害虫に弱いというのは、実は1年目くらいの小さなミニ薔薇の時です。地植えにしたミニ薔薇が大きくなると、少しくらいハダニがでても樹勢が落ちることが無い元気な株になります。
私も1年目は黒星病やハダニに悩みましたが、2年目に株姿が巨大に変貌してからは、病害虫の対策が一気に楽になりました。
ミニ薔薇の地植えに挑戦
ミニ薔薇の地植え最適期は11月
これはミニ薔薇を地植えされた経験者の方で意見が分かれるところだと思います。
今回は私の経験から意見を書かせていただきます。
最適期は11月だと考えています。実際には私は11月中旬に地植えにしました。
秋になるとミニ薔薇のポット苗が流通してきます。その時期にミニ薔薇の苗を購入して、11月中に地植えにしましょう。
理由としてはすぐに休眠できるからです。
ミニ薔薇は上で書いたように、挿し木の苗で流通するので、どうしても株としての樹勢はそこまで強くありません。
そのため、花を咲かせた後はできれば休んでもらいたいのです。
11月に開花した花や蕾を切り落として地植えにすることで、次に花を咲かせることなく休眠期に入ることができます。そして、休眠期にじっくり休んで栄養を蓄えることで、春に新しいベーサルシュートがたくさん出てくるようになります。
私が地植えした薔薇は、次の年の春に、元々あった挿し木の枝の2倍くらいの太さを持ったベーサルシュートが複数本一気に伸びてきました。
正直、それを見た時は驚きました。
ミニ薔薇とは思えない太いベーサルシュートが出て、元々あった挿し木枝の存在が無くなってしまうくらいの勢いでした。
この私の経験を踏まえて、ミニ薔薇を地植えにする場合には、苗を10月くらいに購入して11月中に地植えにすることをお勧めします。
ミニ薔薇を地植えする場所と土選び
まず最初に、ミニ薔薇も普通の薔薇と同じで日光が大好きです。
夏の強い日差しには少しだけ元気がなくなることもありますが、基本的に日光の当たる場所に植えてあげてください。
地植えをするための準備としては、やはり日照時間が大事です。
日照時間によって、成長の速度や株元からの新しい枝 (ベーサルシュート) の出方に大きな違いが出てくるのは確かです。
また、土は市販の薔薇用の土で問題ありませんし、花用培養土でも育ちます。しかし、花用培養土を使う時には、細かい赤玉土を少し混ぜ込んであげて通気性と排水性を良くしてあげることが好ましいです。
私は市販の培養土に赤玉土を25%くらい混ぜ込んだ土を用意しました。
植穴は深く掘ることができなかったので、深さ約20cm、縦横20cmの小さなものでした。ミニ薔薇なので最初の値の張り具合も小さいので、あとは薔薇自身の力で根を張っていってくれます。
ポット売りのミニ薔薇を地植えする間隔
ミニ薔薇は上記の通り、一つのポットに3本か4本が挿し木にされています。
ですので、ポットから取り出し、それぞれの挿し木をそっと分離してあげます。
ミニ薔薇が流通する時期というのは、基本的にミニ薔薇が開花する時期になるので、ミニ薔薇にとっては育成期です。そのため、ポットから出す前に、咲いている花や蕾は切り落としてください。
勿体ない気もするのですが、小さなミニ薔薇にとって花を咲かせるというのはエネルギーを使いすぎる行為です。株を充実させることを優先するために必要なことです。
また、育成期にはポットの中では白い元気な根が高密度に入り組んでいますので、なるべく根を切らないように慎重に株を分離してあげてください。
株を分けることができたら、20cmか30cmくらいの間隔で、深さ20cmくらいの植穴に植えます。
正直なところ、ポット売りのミニ薔薇を20cm ~ 30cm間隔で植えると、土が丸見えで凄い寂しい花壇になってしまうのですが、成長すると丁度良い感覚になりますので御安心を!
また、植えたミニ薔薇の間に別の植物を植えるようなこともしないでおいてください。将来の薔薇の成長の阻害になりますし、根の栄養を奪い合ってしまう原因にもなります。
植えた後は水やりをお忘れなく。また、私がミニ薔薇を地植えにした時は、最初の1カ月は1週間に1度の活性剤も使用していました。根の張りをアップさせるのに効果的です。
ミニ薔薇の肥料は少なめに管理
ミニ薔薇は肥料の量に注意してください。
肥料が多すぎると、うどんこ病になりやすくななります。
実際に私が管理するミニ薔薇も、大きくなってハダニには強くなったのですが、うどんこ病が少し出る時があります。
そのため、置き肥の場合も液肥の場合も規定量よりも少し少ない肥料で管理された方が良いかと思います。
私は液肥を2週間に1度くらい規定量よりもさらに1.5倍くらい薄めて与えています。
それでも十分に育ちますし、新しい葉・枝の展開も問題ありません。
どうしても「肥料をたくさんあげたい」と思ってしまうのですが、過剰な肥料は不具合しか生みません。「多すぎる」よりも「少なめ」を心掛けることが地植え成功のポイントです。
特に、希釈して使う液体肥料は、固形肥料よりも吸収する速度が速くなるので、与える量には注意してください。
筆者の地植えのミニ薔薇 (例)
この写真は、私が玄関先で育てている地植えのミニ薔薇です。
ポールセンローズの「ノヴァ」というシリーズです。2020年3月の写真です。
これは2年前に植えたものですが、ミニ薔薇とは思えない株姿だと思いませんか?
最初は挿し木の細い小さな苗だったのですが、じっくりと育ててあげて、こんなに立派な株に育ちました。
この一株が、挿し木苗の1本分ですよ。凄い生命力だと思いませんか?
植えた当初は花の大きさが4cmくらいだったのですが、現在では8cmくらいの中輪の薔薇を咲かせるようになりました。
この花壇は奥行き僅か20cmくらいのスペースで、元々の土の質は粘土質だったところに、深さ20cmの穴を掘り薔薇用の土を入れて植えたものです。そんな過酷な環境下でも、これだけ立派な株になります。
そして実際に開花した時の花がこの写真です。
いかがですか?これがミニ薔薇ですよ!?小さな挿し木苗がこんなに立派になるんです。
「私達のことは、ミニ薔薇なんて呼ばせない!」と主張しているかのような立派な株です。
このサイズのミニ薔薇になると、葉の大きさも大きく厚みも出てくるので、病害虫に対しても一気に強くなります。写真の通り、黒星病もうどん病もありません。
病気害虫チェックは欠かさないこと
朝の出勤前や買い物等、出掛ける時で良いので、ミニ薔薇の調子をできる限り毎日チェックしてあげてください。
ミニ薔薇が成長すると病害虫に強くはなりますが、それでも病気が無くなるわけではないので、日々の管理が病害虫の早期発見と対応の早さに繋がります。
特にハダニは繁殖能力が非常に強いため、あっという間に葉裏を占拠されてしまいます。
子供を育てるようなお世話になりますが、綺麗な薔薇を咲かせてくれる日のことを期待して努力していきましょう!
最後に
この記事では、ミニ薔薇の地植えについて、私が実践した方法をご紹介させていただきました。
園芸店で売られているポットのミニ薔薇は「花が終わったら終わり」と考えてしてしまう方が多いかと思います。
しかし、地植えや鉢植えにすることでいつまでも長く楽しむことができますし、立派な株に成長すると毎年素晴らしい花を咲かせてくれます。
ミニ薔薇を地植えにするポイントとしては、
①1年目は株が小さいので病害虫の対策は行うこと
②植え付ける間隔は20cmから30cmは空けること
③必ず日当たりの良い場所を選ぶこと
④休眠期に入る前の11月植え付けの最適期
⑤肥料は少なめに管理してうどんこ病を防ぐ
という点です。
皆さんもミニ薔薇の栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?ミニ薔薇も長く付き合っていける「薔薇」ですよ。