一株の薔薇は、一年にどのくらいの花を咲かせてくれるのか?
皆さんは、その数を御存じですか?
もちろん、品種によって大きく異なります。また、四季咲きの薔薇であれば、春から秋にかけて概ね1か月半から2カ月の間隔で花を咲かせてくれますが、一季咲きの品種では春に一回の開花となります。
さらには、肥料や日照条件などの栽培条件にも依存する部分があります。
「いくつの花が開花するのか…?」そんな疑問があったので、2020年の実験の一つとして、春と秋の開花時に幾つの薔薇の花が咲いたのかをカウントしてみました。
今回はその結果を紹介したいと思います。
花数をカウントした薔薇の栽培条件
私が薔薇の栽培で行っているととして、基本的に春と秋以外は花を咲かせないようにしています。
つまり、夏の間は摘心によって蕾を取ってしまいます。
四季咲きの薔薇は、夏の間にも花を咲かせます。しかし、夏の薔薇は花の大きさが小さく、花弁数が少なく、色も綺麗では無いので咲かせないようにしています。
夏の間に幾つもの薔薇を咲かせると、株自身が夏バテの状態になり、秋の開花に影響があると考えている背景もあります。
そのため、今回の実験では、休眠期から目覚めた春の開花と、夏剪定後の秋の薔薇の開花に焦点を当てて、1株当たりの薔薇の花の数をカウントしています。
ただし、下で紹介する育成旺盛なミニ薔薇の「ノヴァ」と「ラニ」については、夏の間も開花をさせていました。ミニ薔薇は本当に疲れ知らずで、摘心しようが剪定しようが、あっと言う間に蕾を上げてきます…。
また、この実験を行った2020年の春と秋の開花シーズンの間は、以下で紹介する5つの品種は摘心をせず、ほぼ自然のままに咲かせています。肥料は規定量を定期的に与え、家の南側の日当たりの良い場所で育てている薔薇になります。
花の数をカウントした薔薇の品種の紹介
この記事で紹介する花の数をカウントした薔薇は次の品種になります。
全ての薔薇の花数を数えると、とてつもなく大変な作業になるので、下の5つの品種についてカウント作業を行いました。
① イングリッド・バークマン
一つ目は、薔薇の殿堂に選ばれている名花のイングリッド・バークマンです。
大輪の深紅の薔薇を咲かせる有名な品種で、深紅の薔薇の最高傑作とも言われる素晴らしい薔薇です。
「赤い薔薇のお勧めはありますか?」と聞かれたら、私は即答してイングリッド・バークマンを推薦します。耐病性や花の素晴らしさの観点で、それくらい素晴らしい薔薇だと思います。
② ブルームーン
清々しいブルー系の香りで有名なブルームーンです。
この薔薇は、花弁が比較的少ない品種ですが、蕾を付ける数が多い品種でもあるので、花の数をカウントして見ることにしました。
花の大きさは上で紹介したイングリッド・バークマンにも負けないくらいの大きな花を咲かせますが、花数に違いはあるのでしょうか?
③ プラム・パーフェクト (夏に癌腫発症)
2020年の夏に癌腫病に罹ってしまったプラム・パーフェクトです。
この花も、春の時期に花数を数えていました。癌腫になり、この記事の対象にするか否かを迷いましたが、癌腫の影響も見る意味で秋にも花を咲かせています。
下のリンクで癌腫病の除去や回復の紹介をしています。
④ ポールセンローズ「ノヴァ」と「ラニ」 (ミニ薔薇)
最後の2品種はポールセンローズ (ミニ薔薇) のノヴァとラニです。
ノヴァの方は、今年はハダニによる被害を受け、梅雨時期に株の葉が無くなり、株を強剪定するという事態に陥りました。しかし、その後は株が完全にリセットされて例年通りの育成を続けています。
ミニ薔薇って、本当に強い品種だと思います。
春と秋の花数をカウントした結果
では、2020年春と秋の薔薇の花数をカウントした結果を紹介します。
下のグラフで、青色の棒グラフが春の開花時の花数、オレンジ色の棒グラフが秋の開花時の花数となっています。
まず気付くことは、春よりも秋の方が花の数が多くなっていることです。
これは、春から秋にかけて薔薇の株が成長して、枝の数が多くなることに由来する結果だと言えます。
ただし、プラム・パーフェクトは秋の方が花数が減っていますが、これは夏の間に癌腫病を発症したことが大きな原因だと思われます。
また、特にミニ薔薇については、春と秋で花の数が大きく変わっていることもわかります。
それぞれの品種の結果について、少しだけ理由を考えてみたいと思います。
イングリッド・バークマンとブルームーンは大輪の花を咲かせる品種ですが、ブルームーンの方が花数が多くなっています。
これは、イングリッド・バークマンは一つの枝に花弁数の多い大きな花を咲かせるのに対し、ブルームーンの方は花弁数が少ない花を枝先に多くつける品種であるという点が一因だと思います。
また、ブルームーンは夏以降、枝数が増えやすく、その結果として秋の花数も多くなっているという特徴があります。
ミニ薔薇のノヴァとラニについては、春の開花以降、次々と新しい枝を出し、ベーサルシュートも複数本出しています。普通の薔薇に比べミニ薔薇が枝を出す数は非常に多いです。そのため、1つの枝の寿命も短い傾向にあると感じます。
しかし、元気な枝を出す数の方が多いので、その結果として、秋の花数が非常に多くなっているように思います。
こう見ると、花数を楽しみたければ、ミニ薔薇を育てるというのが一つの解になるようにも思えます。園芸店で販売されているミニ薔薇は、挿し木の小さな苗ですが、育てると普通の薔薇と同じくらいの株の大きさになります。下の記事で、私がミニ薔薇を大きく育てた事例を紹介しています。
無暗に枝数を増やしても花は咲かない
上の結果をあらためて考えると「花の数を増やしたければ枝の数を増やせばいいのでは?」と考えられる方が多いかと思います。
しかし、枝数と花の数が完全に比例するかと言うと、そうでもないです。
その薔薇の株には、その株の栽培条件や肥料、根の張り具合で決まる花の数しか咲かせられません。
枝数が増えていっても、結局その枝に蕾が付かずに、ブラインド状態となってしまう枝が増える場合もあります。
また、枝数が増えても、枝の太さが花を咲かせるだけのものでなければ花はさきません。
「薔薇は剪定して咲かせる植物」と言われますが、まさにその通りだとおもいます。
枝数を無暗に増やすのではなく、細い枝を整理して、太い枝に立派な花を咲かせるというのが基本になるのだと思います。
この記事の終わりに
この記事では、薔薇が咲かせる花の数をカウントした結果を紹介し、春と秋の違いについてもお話させていただきました。
薔薇の花の数は、その品種 (花の大きさや品種の系統) に依存するところが大きいです。そのため、多くの花を楽しみたいときには、花数が多く咲きやすい薔薇、そして1年間の成長を見据えた品種選びが重要になるのかと思います。
また、それと同じくらい大事なのが、剪定や肥料などの栽培環境の整備です。剪定をすることで立派な新しい枝やベーサルシュートが伸びてきて、開花を担う枝の数が増えます。その環境を整備してあげるのが管理者である私達でもあります。
無理な管理はしなくても良いですが、薔薇の開花に必要な最低限必要な管理だけは怠らずにしてあげたいものです。