花弁数が多い薔薇の方が蕾が開きにくい -ボーリングの調査-

薔薇栽培の専門用語に「ボーリング」という言葉があります。

ボーリングの意味は、何かの影響で開花をすることができなかった蕾のことを示します。

蕾がボールのように丸い状態で咲かずに終わってしまうのでボーリングと呼ばれています。

折角、手塩にかけて冬から準備をしたのに、春の開花のシーズンに蕾が開かないまま終わってしまうというのは本当に悲しいことですよね。

私が育てている大好きな薔薇に「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」があるのですが、とてもボーリングしやすい薔薇です。では、何故ボーリングしやすいのでしょうか?何によって決まるのでしょうか?

その疑問に対する一つの答えとして、今回は薔薇の花弁数や花の大きさとボーリングのしやすさについて、データを取って調べてみたので紹介させていただきます。


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今回の調査内容について

私が通常行っている薔薇の管理として、開花シーズンの前には摘蕾 (摘心) を行って、咲かせる蕾の数を制限しています。

これは、蕾の数を少なくすることで薔薇がエネルギーを使いすぎることを抑制したり、蕾の数を制限することで一つの薔薇の花が大きくなるというメリットがあるからです。

しかし、2020年の春は、薔薇についていろいろとデータを取りたかったので、摘蕾を一切行いませんでした。

摘蕾を行わないことで、薔薇が咲きたいように咲かせてみて、ボーリングをしやすい薔薇としにくい薔薇をデータを取って比較してみたかったのです。

今回の記事では、まず最初に、一つの枝にできた蕾の数と開花した数の割合を調べ品種によるボーリングのしやすさを確認してみます。薔薇は下の写真に示すように一つの枝に複数の蕾を付ける品種がありますが、この蕾の数と咲いた数の割合を調べていきます。

次に、それらの薔薇の花弁数を数えてみて、ボーリングしやすさと花弁数の関係を見てみたいと思います。

ボーリングのしやすさを調査した薔薇

今回の調査でボーリングのしやすさを調査した薔薇は次の品種です。

①ブルームーン (地植え、木立性、大輪)

ブルームーンの写真

②クラリス (地植え、半つる性、中輪)

クラリスの写真

③ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール (鉢植え、つる性、大輪)

ルージュピエールの写真

④イングリッド・バークマン (鉢植え、木立性、大輪)

イングリッドバークマンの写真

これらの品種の蕾の数と咲いた蕾の数を調査し、ボーリングのしやすさを考えてみます。

ルージュ・ピエールについては、別の記事でボーリングのしやすさの検証をまとめています。


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蕾の数と咲いた数の調査結果

それでは、一つの枝に付いた蕾の数と、実際に咲いた数の関係をグラフ化して御紹介していきたいと思います。

①ブルームーンの結果

ブルームーンについては、このグラフに示すように見事に蕾の全てが咲きました。蕾の数=咲いた花の数の結果になっているのが分かるかと思います。

ブルームーン開花数の結果

特に驚くべきは、一つの枝に8個の蕾が付いた枝や12個の蕾の付いた枝も咲きました。12個の蕾は、あまりにも衝撃的だったので蕾の段階での写真を撮影しておきました。

ブルームーンにできた蕾12個の枝

こんなにたくさんの蕾が付いた枝は、全ての花を咲かせることは不可能だと思ったのですが、何と順番に全て咲いていきました。

ブルームーンの開花能力の高さに脱帽した結果です。

②クラリスの結果

クラリスは中輪のつる薔薇なのですが、こちらも出てきた蕾を全て咲かせることができました。

比較的新しい品種の薔薇なので、どうなることかと思っていましたが、一つの枝に2個から5個の蕾を付けてくれて、全て咲いています。

クラリスの開花数結果

③ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの結果

この薔薇が最もひどい結果です。私の大好きな薔薇なのですが、摘蕾を全く行わず、蕾を全て放置した結果、3個以上の蕾がある枝では多くの蕾が咲かずにボーリングしてしまう結果となりました。

毎年、ルージュ・ピエールは摘蕾を行って、一つの枝に蕾を2つまでに制限していました。そうすることで、全ての蕾がきちんと咲いていたのですが、摘蕾を行わないと、ひどい結果ですね…。

ルージュピエールの開花結果

この理由については、下の花弁数との関係の部分で詳しくお話したいと思います。

④イングリッド・バークマンの結果

イングリッド・バークマンはハイブリッドティー系の大輪品種で、春の開花期には一つの枝に一つの蕾を付けることが多いです。

2020年の春の開花でも、一つの枝に一つの巨大な蕾を付けて、全ての花が咲いてくれました。合計で7輪の花が開花してくれて、開花率100%となります。

そのため、特にグラフにする必要は無いのでグラフを作成していません。

ボーリングのしやすさと花弁数の関係

上で各品種のボーリングのしやすさを調査した結果を御紹介し、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールが最もボーリングしやすいことがわかりました。

では、何がボーリングのしやすさを決めているのでしょうか?

それを探るために、一つの調査として花弁数を調べてみました。

咲き終わった花を摘み取り、花を分解して、花弁数を全て数えてみました。

①ブルームーンの花弁数

ブルームーンの花弁数ですが、板の写真に示すように合計26枚になりました。

ブルームーンの花弁数

②クラリスの花弁数

クラリスの花弁数は69枚です。凄い数ですね、ブルームーンの2倍以上あります。

クラリスの花弁数

③ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの花弁数

そして注目のルージュ・ピエールの花弁数ですが、驚異の100枚!

確かに咲いた時に花弁がぎっしりと詰まっている感がとても感じられたのですが、花を分解していくのにも時間がかかりました。

ルージュピエールの花弁数

④イングリッド・バークマンの花弁数

イングリッドバークマンについては、花弁の大きさが大きいのですが、花弁数は32枚でブルームーンと大差がないです。

イングリッドバークマンの花弁数

花弁数とボーリングのしやすさの関係について

この花弁数を見ると、ボーリングのしやすさは一目瞭然だと思います。

私個人的には、花の大きな薔薇がボーリングをしやすいというイメージだったのですが、ブルームーンやイングリッドバークマンという大輪系の薔薇はボーリングをすることなく花を咲かせてくれました。

それに対して、同じく大輪のルージュ・ピエールについては、花弁数が他の薔薇の倍以上あります。そのため、開花に必要なエネルギーが大量に必要になり、かつ一つの枝に5個、6個と多くの蕾を付けるとさらに大量のエネルギーが必要になるわけです。

したがって、花弁数の多い大輪系の薔薇が最もボーリングしやすいという結果になるのかと考えています。


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この記事のまとめ

今回の記事では、薔薇の花弁数とボーリングのしやすさについて、実際の薔薇で実験検証を行った結果を御紹介させていただきました。

ブルームーンの様に一つの枝に10個以上の蕾を蕾を付けても全て開花させる能力がある薔薇もあれば、少し摘心しないだけで咲かずに終わるルージュ・ピエールの様な薔薇もあります。

摘蕾の有無というのは、判断が難しいことはありますが、大輪系の花弁数が多い薔薇に対しては行った方が良いという判断で間違いないと思います。

咲かなかった蕾は、単にエネルギーを消費しただけで何の得もないものになってしまいますので…。

毎年の開花の状況を見て、皆様の経験から摘蕾の方針を決めるのが一番かと思います。この記事が、皆様の薔薇栽培の御参考になれば幸いです。

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