日当たりが悪くても育てたい薔薇を育てましょう!

植物にとって成長に必要な3つの要素は、皆様ご存じの通り「水」「日光」「肥料」です。どれか一つが欠けても、育成に影響が出てしまいます。

水と肥料は誰もが植物に定期的に与えられるものですが、日光 (日照時間) だけは各家庭で条件が異なります。

「日照時間が長い方が植物は育ちやすい。」これは紛れもない事実で、薔薇にとっても同じことが言えます。

日陰に強い品種の薔薇もありますが、その薔薇の品種はあなたが育ててみたい薔薇ですか?

「家は日照時間が短いから…」という理由で「育ててみたい薔薇」の栽培を諦めますか?

私なら絶対に諦めません。育ててみたいと思う薔薇の品種を育てます!

この記事では、私が実践している「日陰で薔薇を育てるための工夫」を分かりやすく説明致します。ポイントは葉の数、肥料の量、株を動かさないこと、そして最も大事なのは日々の薔薇の健康チェックです。


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日本の住宅事情は薔薇栽培に適さない事も多い

薔薇を育てていると「次はどの品種にチャレンジしてみようかな?」と次に栽培する薔薇を探すのが楽しみの一つになりますよね!

また、薔薇栽培を新たに始める人からすると「最初に育てる薔薇はどれにしよう?」と、カタログやインターネットを見て、楽しい時間を過ごされているのかと思います。

しかし、薔薇のことを調べていくと「日照時間が一日に5時間以上は欲しい」という記事やコメントを目にしたことがあるのではないでしょうか?

それを目にした時に「うちは日照短いから無理かな…」と思って、諦めてしまう方も多いのではないかと思います。

現代の日本の住宅事情で、
・戸建てを建てるにしても、なかなか日照条件の良い南向きの土地が見つからない。
・マンションのベランダが西向きで午後の遅い時間しか日が当たらない。
・南向きだけど他のビルやマンションで2時間しか日が当たらない
という悩みをお持ちの皆様も多いのではないでしょうか?

私の家もそうですが、お隣のお家との間が狭かったり、南側にマンションがあるので、特に午前中の日当たりがそこまで良くありません。

また、私自身がそうなのですが、薔薇の苗を増やしすぎて、置く場所が一杯になり、日照時間の短い場所で育てることを余儀なくされている場合もあるのではないでしょうか?

例え、日照条件が悪かったとしても、私はそれを理由に育ててみたい薔薇を諦めるようなことはしません

確かに日陰に強い薔薇を選べば、花数も多くなって楽しむ時間を増やせると思います。ただ、薔薇栽培に興味がある方からすると、「育ててみたい薔薇」と思う薔薇が必ず1品種はあるはずです。

私の場合、憧れた薔薇は、河本バラ園さんの「ガブリエル」という薔薇でした。

「ガブリエルを諦めて、耐陰性のある別の薔薇を育ててみてはどうですか?」と聞かれたら、絶対に「No!」と答えます。

園芸は趣味です。自分が望まないものを育てるとしたら、それは「やらされ感」だけが残って、頑張ろうという気が起きません。

薔薇は皆さんが思う以上に強い植物です。環境を理由に諦めるのではなく、今ある環境で「咲かせたい薔薇」を咲かせる努力をしてみませんか?そのためのヒントとなることをお伝えできればと思います。

紫色の薔薇

なぜ薔薇は日当たりが必要と言われるの?

皆さんは、薔薇により長い時間の日照が必要な理由を考えたことがありますか?

日光が必要なのは薔薇に限ったことではなく、一年草の草花や宿根草も日光が必要ですよね…。

その理由は薔薇の「花」にあります。

もしお時間があれば、摘み取った薔薇の花弁数を数えてみて下さい。私は栽培している薔薇の花弁数を、全ての品種で確かめたことがありますが、本当に花弁数が多いんです…。1枚1枚の花弁の大きさも、他の花に比べて格段に大きいです。

一重咲きのものであれば、数枚程度ですが、品種改良で花弁数が多くなった薔薇は、20枚や30枚は当たり前なんです!

実は30枚は少ない方で、品種によっては100枚もあります!

花弁数100枚の花弁を作るのにどれだけのエネルギーを使うか、そして100枚の花弁を開かせるのにどれだけのエネルギーを使うか…。

他の草花と比較してみると、想像を絶するエネルギーの消費ですよね。

そのため、出来る限り長い時間光合成をさせてあげて、花を咲かせる準備をしないといけないのです。

これが、薔薇には長時間の日照が必要と言われる所以です。

勿論、花弁以外にも健全な葉を育てて病気になりにくくするという意味もあります。

日照時間が長いに越したことはないのですが、この記事の中では、いかに短い日照時間の中で育てるか?がテーマなので、長い日照時間という観点には触れずに話を進めていきたいと思います。

真っ赤な房咲きの薔薇

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日陰に強い薔薇に逃げるのもアリです

上記の通り、日当たりの悪い場所での薔薇栽培は、日当たりの良い場所に比べると難易度が高いのは確かな事実です。これは認めざるを得ません。

そのため、耐陰性のある品種を育てている愛好家の皆さも多くおられます。

それはそれで一つの大事な考え方だと思いますし、私はその考え方を否定するようなことはしません。より多くの花を楽しみたい方や、薬剤散布を減らしたいと考える方にとっては重要なことです。

この記事では、自分が育てたい薔薇を日照条件の悪い環境でもそだてましょうというテーマですが、耐陰性のある薔薇についても紹介しておこうと思います。次に挙げる品種が、比較的、日陰に強い薔薇です。特にマチルダとアイスバーグは日陰でも良く咲きます!
・マチルダ
・アイスバーグ
・マイガーデン
・薔薇の殿堂に選ばれた品種

ただ、今回のテーマは何度も言うように、育ててみたい薔薇を日照条件で諦めないことです。日陰に強い薔薇を選ぶという選択肢も、ここでは考えないでおきましょう!

何よりも「育てたい薔薇」を育てるの一番楽しい

耐陰性のある植物があるとはいえ、やはり園芸で一番大事なことは、自分が栽培してみたい植物を楽しみながら育てることです。

薔薇も同じです。

薔薇を楽しんでいると、育ててみたい憧れの薔薇が必ず出てきます。

その薔薇が、実は耐陰性が少し弱いと知った時に、皆さんは諦めてしまうでしょうか?

私の場合は、諦めずに自分に与えられた環境で、何とか育てる努力をします。例え、花の数が少なかったり、育成が少し悪くなる可能性があってもチャレンジします。

それが「趣味」であり、自分の栽培技術を上げるための良い機会となり得ると考えるからです。

日照時間の短い所で、上手に薔薇を咲かせられたら、次にチャレンジする薔薇にも勇気をもってチャレンジできるのではないでしょうか?

薔薇は結構強い植物ですし、品種改良で耐病性のある薔薇が次々と発表されています。育てたい薔薇にチャレンジすることは、次につながる大事な機会だと考えます。

何事もそうですが、やってみるまでは敷居が高かったことも、チャレンジして敷居を超えると、次の挑戦の時は敷居が低くなっているものです。

薔薇の花束の写真

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日照時間の短い場所で薔薇を育てる重要ポイント

ここからは本題である日照時間の短い場所で栽培するポイントについて、お伝えしていきたいと思います。

私も栽培している薔薇の本数が多くなり、日照時間の長い場所を確保することが難しくなっています。そのため、次の点を気にしながら、日照時間の短い場所で薔薇栽培を楽しんでいます。

皆さんにとって、一つでも参考になる点があれば幸いです。

葉を大事にする (適切に薬剤を使う)

上でも記載しましたが、薔薇が綺麗な花をたくさん咲かせるには、光合成が非常に重要です。そのため、一枚でも多くの健康な葉を残すことが重要になります。

日陰になると、光合成によるエネルギー生成が少なくなりますので、葉の厚さや色も少し悪くなり耐病性も下がる傾向にあります。

そのため、適切に薬剤を使用して黒星病から葉を守ることも必要になります。日陰の薔薇に黒星病が蔓延してしまうと、立て直すことが難しくなります。

ただし、用法・用量を間違えると葉に薬害が出てしまう可能性もありますし、葉自身に薬剤の刺激に耐える耐性が無い可能性もあります。

そのため、私は日陰の薔薇に薬剤を使う時には、濃度を規定量よりも薄めて使用しています。

例えば、ダコニール乳剤は1,000倍が規定量ですが、私は1,300倍くらいに薄めています。

日照時間の短い場所で薔薇を育てる場合には、薬剤との付き合い方が必要であり、かつ薬剤との付き合い方を学ばねばならないと常々感じています。

薔薇の葉の写真

肥料を切らさず活力剤も併用しましょう

肥料が切れると、どうしても耐病性が低くなります。

人間も同じで、食事を抜いて免疫力が下がると、病気に罹りやすくなりますよね!薔薇も同じなんです。

特に、地面に近い部分の葉というのは栄養が回ってくる優先順位が下がります。

植物には頂芽優勢という性質があり、最も高い位置に栄養が集まる習性があります。薔薇も例外では無く、一番高い位置にある芽や葉に養分が優先して回ります。そのため、地面に近い部分の葉から耐病性が無くなり、黒星病も出やすくなります。

肥料が切れてしまうと、葉を守る耐性も下がるため、より病気に弱くなります。それを防ぐため、肥料は適量を切らさずに与えていきましょう。

ただし、肥料の与え過ぎは逆効果です。与え過ぎると、うどんこ病という別の病気の原因になり得ますし、肥料焼けという不具合を起こす可能性も上がります。

また、植物の育成に必要な微量元素を補給するために、定期的に活力剤も併用していきましょう。活力剤を使うことで根の張りが改善するだけでなく、葉や茎の育成も改善する効果が期待できます。

頑張り屋さんの薔薇を抑える (適度な摘蕾)

薔薇は皆さんが思う以上に頑張り屋さんで、蕾をたくさんつけてたくさんの花を咲かせようと頑張ります。

その姿は本当に健気で、そんなに一杯蕾を作らなくても…と思ってしまうくらいたくさんの蕾を作ろうとしてくれます。

例え、日陰であっても、虫に自分を見つけてもらうために、たくさんの花を咲かせようと努力をしてくれます。

しかし、日照時間の短い場所でたくさんの蕾を付けても、全てを咲かせるだけのエネルギーを光合成で作り出すことができないのが事実です。

そのため、咲かせられなかった蕾というのは養分を無駄に使っただけで、意味の無い行動になってしまいます。

そこで、蕾が出てきたら適度な摘蕾を行い、頑張り屋さんの薔薇に制限をかけてあげてください。私は、日照時間の短い場所では、一つの花枝に蕾を2つくらいに制限するように心掛けています。摘蕾を行うだけでも、花を確実咲かせるという観点で、非常に効果があります。

ピンク色の薔薇の写真

鉢植えはなるべく動かさない

鉢植えを動かさないというのは、どういう意味があるの?と疑問を持たれるかと思いますが、これにも意味があります。

実は薔薇は自分が置かれた環境に合わせて蕾を付ける性質があります。

そのため、環境 (特に日照時間と気温) の変化に少し敏感なところがあり、急に日照条件が変わってしまうと、蕾を付けなくなってしまう可能性があります。

鉢植えの場所を頻繁に動かすと、ある意味、薔薇にストレスを与えるような状態になってしまいます。一度決めた場所からは花が咲くまではあまり動かさないようにしましょう。

例えば、一日に4時間の日照を確保している場所に置いてあった薔薇を、何かの理由で日照時間2時間の場所に移動させたとします。すると薔薇は、日照時間4時間の状態で蕾を準備をしていたため、日照時間2時間ではすべての蕾を咲かせられないと判断し、蕾の成長を止めることがあります。

ですので、蕾が出てくる頃には、鉢植えの移動を控えるようにしてみて下さい。

水やりを管理して根の張りを向上する

水やりも工夫が必要だと考えています。

薔薇が可愛いからと言って、2月~4月に毎日のように水やりをすると、根の張りを阻害してしまう要因になるんです。

植物は、土が乾燥した時に根を伸ばして水を探そうとします。そのため、毎日水を与えていると、薔薇が苦労をしなくても水を得ることができるため、根の張りが悪くなります。

「根の長さや密度=養分を吸い上げる力」になるので、いかにして丈夫で立派な根を作るかが腕の見せ所です。

土の表面が乾いただけでなく、土の中まである程度乾いてから水やりをするようにしましょう。その手間だけで、根の張りが大きく向上します。

鉢植えで薔薇を育てていると、根が順調に成長していると鉢底から必ず白い根がはみ出してきます。逆に根の成長が悪い株は、株が不安定だったり根が鉢底から白い根が出てきません。

絵で見て管理できるポイントなので、定期的に鉢の底を除いてみてあげて下さい。

古びたオレンジ色の薔薇の写真

【最重要】日々の状態チェックは欠かさずに

何よりも重要なことは日々の状態チェックです。

薔薇を放置していたら、何も良いことはありません。

出掛ける前に、葉の状態や害虫がいないか?を確認してあげてくださいね。

上で記載したように、日照時間が短いと蕾の数が少なくなるのは当たり前です。

その少ない蕾を大事に育てるためにも、日々の管理は他の植物以上に手をかけていきましょう。日々のチェックは早期の病害虫の発見が可能になるだけでなく、手をかけただけ花が咲いたときの喜びを何倍にも嬉しいものにしてくれるはずです。

私は薔薇の健康チェックを大事にし過ぎて、妻から「子供の面倒を見るより熱心ね…」と愚痴を言われたこともあります…。

日照時間3時間で薔薇を育てた場合の記録

折角なので、私が過去に行った実験についても、御紹介をしておきます。

エリナという薔薇の殿堂に選ばれた品種を、日がよく当たる南面で1年間育てた後、次の年は日照時間3時間の場所で育てた時の花付きの違いです。

南向きの日照時間が十分にある場所では、四季咲き性が強く、年間を通じて4回の花を咲かせてくれました(5月、7月、9月、11月)。

そして、日照時間3時間の時ですが、開花の回数は4回で同じですが、花の数が1/2から2/3程度に確実に減りました。

日陰ということで、無理をさせないために摘蕾をしたことも影響していますが、花の大きさも一回り小さくなった印象があります。

この結果を、皆様がどのように捉えるかが重要かと思います。「やっぱり、花の数が減るのか…」と考えるか、「日照時間3時間でも咲くのか!」と考えるか…。

私は、後者の考えを持ちます。日照時間が僅かであっても、薔薇は咲くのです。

このブログの中でも、何度か「薔薇は強い植物である」と言っていますが、確かにその通りだと思います。

日本の住宅事情が持つ日照時間の確保が難しいという課題については、基本的には克服が出来るものだと思います。

理想を言えば1日6時間以上の日照かもしれません。しかし、その日照時間を確保できるのは大きな薔薇園や大きな庭を方の特権かと思います。

都市部に住まわれる方からすると、薔薇は栽培が難しい植物の様に思われがちですが、3時間程度の日照または常に明るいベランダがあれば薔薇は十分に育てられます。

今までの薔薇に対する日照条件の概念を捨てて、育ててみたい薔薇にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

ピンク色の薔薇のアップ写真

この記事の最後に

この記事では、日照条件が悪くても育ててみたい薔薇を育てるために実践すべきポイントを紹介させていただきました。

薔薇好きの誰もが「育ててみたい薔薇」があります。しかし、日照条件を理由にそれを諦めるべきではないと思います。

日照条件の良い場所に比べて、管理すべきポイントは増えますが、次の点に気を遣えば栽培は可能だと思います。

①葉を大事にして病気を防ぐこと

②少ない量で肥料を切らさず、活力剤も併用すること

③水やりの工夫で根の張りを向上すること

④頑張り屋さんの薔薇を摘蕾で抑え日々の管理を欠かさないこと

私自身も、栽培する薔薇が増え、日陰で育てなければならない薔薇がいくつかあります。しかし、これらの項目を実践することで、毎年きちんと花を咲かせてくれています。

日照条件が悪いからと言って「日陰で育つ薔薇」を選ぶのではなく、「育てたい薔薇」を栽培する工夫をしみるのも良いかと思います。

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