薔薇好きの皆様は薔薇の品種を選ぶときに、何を重要視して選ばれておりますか?
花の形、花の色、花の大きさ、耐病性、連続開花性…様々な指標がありますが、どれも重要視したいポイントですよね!
そんな薔薇の特徴の一つが「香り」ですが、薔薇には本当に多くの特徴的な香りがあります。ダマスク系、ブルー系、柑橘系など、薔薇の花を楽しむ際の一つのポイントになることは間違いないです。
ただ、「香りの強い薔薇は日持ちしない」という噂や話を聞いたことがありませんか?
何でも検証してみないと気が済まない筆者の心をくすぐる疑問です。
さて、今回も薔薇の検証シリーズとして、2020年春の1番花を対象にして薔薇の香りと花持ち (花の寿命) の関係を調べた結果を紹介したいと思います。
ただし、この検証結果は私の栽培条件での結果なので、あくまでも御参考としてお考えいただければ幸いです。
なぜ香りの強い薔薇は花持ちが悪いと言われるのか?
そもそも、香りが強い薔薇は花持ちが良くないと言われる所以は何なのでしょうか?
一般に言われていることは、香りの強い薔薇は花の寿命を長くすることよりも強い香りを放つために栄養分を消費するためであると考えられています。
香りを放つということは、それだけ香りの成分を作らないといけないわけですので、香りの弱い薔薇に比べれば養分を消費する量が多くなってしまうのは考えやすい理由かと思います。
薔薇に限らず、ユリも香りが強いものはあっという間に寿命を迎えてしまいますね。特に大輪の強香のユリは咲いてから3日くらいで花弁が垂れ下がってしまいます。その分、香りの強さは強香の薔薇を凌ぐものがあるのですが…。
薔薇の世界ではこのように言われているのですが、それが本当なのでしょうか?
以下で、検証方法とその結果を御紹介させていただきます。
香りの強さと花持ちの検証方法
花持ちや花の寿命と言っても、正確に花の寿命を測定することって難しいですよね…。人によって意見は分かれるでしょうし、どこからどこまでが花の寿命かは判断すること自体が難しいです。
そこで、今回は私の判断で「蕾が少しでも開いた日から自然に花弁が落ち始めた日まで」を寿命として取り扱いたいと思います。
花弁が落ち始める日は1枚でも自然に落ちていたら寿命が来たと判断しました。
咲いたすべての薔薇を調査することはできないので (そんなことしたくないので)、以下で紹介する薔薇の花を2つずつ選んで花持ちを測ることとしました。
また、それぞれの花は切り花にせず、株で咲いている状態で花持ちを検証しています。
検証の対象にした薔薇の紹介
香りの強い薔薇の検証品種
■ ガブリエル (ブルー系の強香, 花の色はホワイト)
■ フィネス (ダマスク系の強香, 花の色はピンク)
私の栽培している強い香りの代表格としては、この2品種です。
フィネスは京阪園芸の小山内さんが作出された「香りの薔薇」としても有名ですね。実際に育ててみると確かに香りも良く、ダマスク系の香りと聞いていましたが、単純なダマスク系の香りではなく、独特の素晴らしい香りを持っています。
香りが少し弱い薔薇の検証品種
■ イングリッド・バークマン (ダマスク系の中香, 深紅の薔薇)
■ ラ・ドルチェ・ヴィータ (ティー系の中香, オレンジ色の薔薇)
香りが中くらいの薔薇の代表としては、上記の2品種を選んでみました。
イングリッド・バークマンは、私のブログにも何度か登場していただいているのですが、本当に素晴らしい薔薇です。下のブログに詳細な栽培記録も紹介しています。
香りがほとんどない薔薇の検証品種
■ プラムパーフェクト (微香のため香りの種類が判定不能, 紫色の薔薇)
■ ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール (微香のため香りの種類が判定不能, ショッキングピンクの薔薇)
香りがほとんどない薔薇というのも実は結構存在します。その中から上の二つを選んで検証をしています。
プラムパーフェクトは、別の記事でも紹介していますが、最近発表された耐病性が抜群の薔薇です。初心者の方にも絶対おすすめできる薔薇です。
検証結果の紹介
さて、それでは早速ですが花持ちの検証結果をグラフ化したものから御紹介します。
グラフの左側から強香品種→中香品種→微香品種の順番で並べています。
結果から見てもわかるのですが、強香の品種はやはり花持ちが悪い傾向にあることが分かりますね。
特にフィネスは1週間経たないうちに花弁が落ちていました。フィネスは花弁が少し小さい薔薇なので、花が散り落ちやすいというのも背景にあるのかもしれません。
中香品種はどれも1週間から10日くらいの花持ちとなりました。まぁ、一般的な薔薇であれば、このくらいという印象でしょうか。
そして微香の薔薇については、プラム・パーフェクトは中香の薔薇とはあまり変わりがありませんでした。しかし、ルージュ・ピエールは14日経っても花弁が落ちることは無く、そのまま花が周囲から朽ち果てていくような状態になったので、14日目で測定をストップして剪定しました。
ルージュ・ピエールは花弁が落ちるよりも先に外側の花弁が腐り始めるような特徴があるため、咲かせ続けるのではなく適切な時期に花摘みが必要になる品種と言えそうです。
薔薇の花は適切な時期に切りましょう
今回の検証では香りの強さと花持ちを調査するために、敢えて花を切り取らず残しておきました。
しかし長く咲かせると花は少し色あせてきたり、完全に開ききった薔薇はそこまで美しいと言えるものでもありません。
やはり咲き始めから満開になる手前が一番きれいな時期だと思います。
そのため、完全に開ききる前に切り取り、切り花として楽しむ方が良いかと思います。
その方が、薔薇の株に「花を維持する」という余分な体力を使わせずにも住みますし、新しい芽やベーサルシュートの発生にエネルギーを使わせることができるかと思います。
私自身、薔薇の香りの強さに関係なく、花が咲いてから3日か4日後には切り取るようにしています。
長い期間かけて育てた薔薇の花を3日くらいで切り取るのは残念に思うのですが、その方が薔薇の株にとっては良いことだと思います。
「美人薄命」です。
この記事の最後に
今回は香りの強い薔薇が花持ちが悪いという噂を調べるために、実際に私が育てている薔薇の花持ちを調査してみた結果を紹介させていただきました。
結果からすると、確かに香りの強い薔薇は花持ちが悪い傾向が見られました。また、微香の薔薇になると10日位、花弁が散らないものもあります。
今回は検証を行った薔薇の品種が少なく、花持ちを調査した薔薇の花数も少ないため、検証数が少ないことは否めませんが、香りが強い薔薇は花持ちが悪いという噂は事実なのだと思います。
これから薔薇を購入してガーデンや玄関などを彩ることをお考えの方は、長く花を楽しむという観点で「香り」という指標も考慮した薔薇選びをすると良いかと思います。