「さぁ、鉢植えで薔薇を育てよう!」と決心した時、薔薇の鉢選びに困ることはありませんか?
「テラコッタ鉢 (素焼きの鉢) とプラスチック鉢、どちらが良いの?」という疑問です。
一般的に「薔薇はテラコッタ鉢」が良いと言われていますが、本当にそうでしょうか?
ベランダや玄関先で薔薇を育てる時、鉢を動かして掃除をする必要がありますよね。その環境で重いテラコッタ鉢を選べますか?
私は以前、薔薇栽培にテラコッタ鉢も使用していましたが、今は全ての薔薇をプラスチック鉢で育てています。
私がプラスチック鉢に完全に移行してしまった理由は簡単です。プラスチック鉢で問題なく薔薇は育てられるからです。
最近作出された薔薇は暑い環境にも強いですし、場所を移動してあげれば、夏の暑い環境でもプラスチック鉢で問題ないのではないかと考えています。
各比較項目で鉢の材質を比較
通気性と排水性の観点を比較
一般的にテラコッタ鉢の方が「通気性」が良いと言われます。
これは、素焼きは土を焼いて作られるため、土にすき間がありそこから空気が出入りできることに由来します。確かに、水を与えると鉢の側面から水がしみ出すテラコッタ鉢もあり、通気性が良いことは確かに伺えます。
しかし、テラコッタ鉢は鉢底には、穴が小さく1つしか開いていません。そのため、下の図に示すように、確実に鉢底の穴が開いている部分を除いて水が溜まります。
テラコッタ鉢は焼き物ですので、プラスチック鉢の様に鉢底を平らにする精度はありません。そのため、確実に水が溜まるスペースができます。
プラスチック鉢は、プラスチックという材質のため、側面から水分が染み出すことはありません。その代わり、鉢底には多くの穴が開いており、そこからの排水性能はテラコッタ鉢よりも確実に優秀です。
基本的に水は重力で下へ下へ落ちていきますし、このプラスチック鉢の排水性は、テラコッタ鉢の通気性と同等の性能があると考えています。
また、プラスチック鉢ではスリット鉢と呼ばれる鉢底に大面積のスリットが入っているものがあり、通気性も排水性も抜群のものもあります。
したがって、私は通気性と排水性の観点では、どちらの鉢も薔薇栽培に問題は無いと結論付けています。
鉢内部の温度上昇の比較
鉢内の気温については、春・秋・冬は特に考えることは無いですが、夏の暑いときに考えてくべき項目です。
近年の日本は夏が訪れるごとに気温の上昇がニュースになり、日差しも強くなっていっているのが現状です。
そんな中で、鉢内の温度の観点でテラコッタ鉢とプラスチック鉢をどう考えますか?
テラコッタ鉢は素焼きのため、温度が上がりにくいと言われています。そして、プラスチック鉢は側面の通気性も無いため温度が上がりやすいと言われています。
しかし、私はこれについては異論を唱えたいと考える部分があります。
テラコッタ鉢は基本的に茶色系の色をしており、プラスチック鉢は白や灰色も選べます。白は基本的に光を吸収しませんので、茶色に比べると鉢自体の温度が上がることは避けられます。
また、温度が上がるのは、鉢自体だけでしょうか?
多くの栽培環境下では、表面の土そのものに直射日光に当たることの方が多いのではないでしょうか?
つまり、鉢自体だけでなく土の表面からの温度上昇も考えなければならないのです。土は茶色または黒系の色ですよね?土の表面は白色のプラスチック鉢よりも熱の吸収が大きいはずです。
また、土が湿っている場合、熱を伝えるのは土自信ではなく、最も熱を伝えやすい水分になります。この水分については、テラコッタ鉢もプラスチック鉢も同じ条件になるはずです。
したがって、鉢内部の温度上昇については、テラコッタ鉢もプラスチック鉢も気にするほど差はないと考えて良いかと思います。
ただし、夏の直射日光の吸収を考えると、黒や茶色のプラスチック鉢は避けた方が無難です。
根腐れのしやすさの観点
この項目に関しては、私の結論から述べます。根腐れについては、テラコッタ鉢もプラスチック鉢も気にすることは無いです。
根腐れを防げるか否かは、鉢の問題では無いです。
根腐れの問題は、鉢の材質ではなく栽培されている方の水やりの時間帯、頻度に一番大きく依存します。
テラコッタ鉢を使用するのであれば、テラコッタ鉢に合った水やりをする。
プラスチック鉢を使用するのであれば、プラスチック鉢に合った水やりをする。
ただ、それだけだと考えます。
根腐れを起こすのは鉢の問題である前に、管理する人の水やりの仕方に依存すると言えます。
プラスチック鉢で栽培していて、常に土を乾かし気味に育てていて、水が原因の根腐れは発生するでしょうか?
もし常に土は乾かし気味に育てていても根腐れをするなら、それは鉢ではなく別の原因を探るべきです。
鉢にカビや苔が生えるという観点
テラコッタ鉢の通気性が良いという点にトレードオフとなるデメリットですね。細かな穴が開いているため、そこにカビや苔の胞子が入り込みやすく、定着してしまうというデメリットです。
ただし、日陰に置いて常に湿っているような状態でなければ、カビや苔が生えることは無いかと思います。
ですので、この点は栽培される方の環境を整備する努力に依存するところが大きいですね。
もし、カビや苔が生えやすい所で園芸を楽しんでいるかたは、プラスチック鉢にすることでカビや苔の問題は解決できると思います。
もし、プラスチック鉢にカビや苔が生えても、拭き取れば綺麗除去できます。
重さの観点ではプラスチック鉢がメリット大
私としては、ここが一番の関心事です。
鉢植えの良い所は、自分の好きな場所に鉢を置けることや、掃除の時にどかすことができるという点です。
この「可動性」を考えると、確実にプラスチック鉢の方がメリットが大きいです。
ベランダで栽培される方は、洗濯物の時にちょっと移動させてたり、置き場を変えて気分を変えたいという希望もあるかと思います。
その時、テラコッタ鉢だと重くて移動が億劫になります。
プラスチック鉢であれば8号鉢から9号鉢であれば、女性でも移動ができると思いますが、素焼きの8号鉢は多分無理です…。重すぎます。
薔薇の鉢を10株用意して、全てテラコッタ鉢だと、移動させる気力も起きません…。
価格の観点でもプラスチック鉢が有利
価格の観点では、確実にプラスチック鉢に軍配が上がります。
プラスチック鉢は、10号鉢でも数百円で手に入ります。しかし、テラコッタの10号鉢となると¥3,000以上というのが一般的かと思います。
薔薇の数が多くなってしまうと、鉢の価格でちょっと薔薇の購入をためらってしまうこともあるかもしれません。
鉢のデザイン性
この観点は、皆様の感性によって意見が分かれると思います。
「どんなデザイン、どんな形でも出来る」という意味では、工業的に様々な形や柄が自由に作れるプラスチック鉢の方が良いと言えます。
しかし、テラコッタ鉢は焼き物にしか出せない味のある柄やデザインも可能になります。
そのため、デザインの観点では、皆様のご判断にお任せしたいと思います。
品質の観点
プラスチック鉢は工業的に製造される製品のため、同じプラスチック鉢であれば性能が変わることはありません。
しかし、焼き物であるテラコッタ鉢は土の状態や焼き加減によって通気性が変わってきます。また、デザインや鉢の大きさ・厚さをよく見ると一つ一つが異なります。そのため、同じ商品を買っても性能が変わったりすることがあります。
管理方法を完全に統一したいという方は、プラスチック鉢の方が管理しやすいです。しかし、そこまで品質を気にせず、それぞれの鉢の個性として受け止められれば、テラコッタ鉢でも問題ないです。
結論としてどちらの材質が良いのか?
上で議論してきた通りですが、一般的にテラコッタ鉢の利点であると考えられている「通気性」「温度上昇」の観点は、私の意見としてはどちらも「同等」であると考えています。
「根腐れのしやすさ」の観点も、これは鉢の材質の問題ではなく、栽培する方の水やりの量・方法に依存します。
その他の点を見ると重さや価格、品質が統一されているという観点から、プラスチック鉢の方がメリットが確実にあります。
冒頭で、私は鉢植えの全てをプラスチック鉢に移行したことを記載させていただきました。
理由としては、玄関先には最も綺麗に咲いている薔薇を置いておきたいという背景があります。
薔薇の咲くタイミングは株・品種ごとに異なりますので、その日、その週で最も綺麗に咲いている薔薇は違います。そのため、鉢の位置を入れ替えて玄関を飾りたいという考えがありました。
テラコッタ鉢ですと、鉢を動かす作業が嫌になりますし、落としてしまったら割れてしまうというデメリットもありました。(実際、一鉢落下で割りましたし、私自身が腰痛持ちなんですよ。笑)
総合的に考えて、上記の通り性能に差が無いと判断し、プラスチック鉢に移行したのです。
プラスチック鉢に完全移行して以来、根腐れや花付きの悪さなどのデメリットは一つもありません。むしろ動かせるメリットの方が確実に大きいです。
日々の管理を怠らず、土の状態や薔薇の健康状態に向き合うことができれば、プラスチック鉢に移行して問題ないというのが私の考えです。
どちらの材質を使うか決めるのは皆様
基本的に、薔薇はテラコッタ鉢でもプラスチック鉢でも問題なく育てられます。
各サイトにテラコッタ鉢とプラスチック鉢のメリット・デメリットと記載があるのですが、どこにもその性能を計測した定量的な事実は記載が無いんです…。例えば、真夏のテラコッタ鉢の中の土の温度は何度で、プラスチック鉢の場合は何度というような比較ですね。そのデータなしに、どちらが良いと言われても私個人としては説得力が無いと感じるところが多いです。
近年発表されている薔薇は、どれも現代の自然環境に合っているものが多いです。少し気温が上がっても、水やりを劣らなければ枯れることはありませんし、綺麗な花を咲かせてくれます。
自分が無理なく栽培を続けられると思う方を選べばよいと思いますし、鉢のサイズが8号以上であれば、お気に入りのデザインだけで選ぶのもアリだと思います。
気に入った鉢でお気に入りの薔薇を育てることが一番楽しいです。
その鉢栽培に合った管理を探ることも「趣味」の一環かと思います!
趣味とはいえ、薔薇栽培は毎年様々な観点で勉強の繰り返しですね。