9月の中旬の残暑が残る中、薔薇の夏剪定を完了させた方も多くいらっしゃるかと思います。私自身も9月の中旬までに、栽培しているほぼすべての薔薇を夏剪定し終わりました。
私の住む関西ですが、残暑が厳しく残るかと思いきや、2020年の9月は中旬になると最高気温が30℃を下回り、夜も20℃くらいまで気温が下がるようになりました。
薔薇が新しい芽を形成して、蕾を作るのに適した気温になってきていると感じます。
そんな夏剪定を終えた数日後、管理する薔薇の葉に異変が起こるものがあります。毎年ちらほら見られる症状なのですが、夏季は剪定後に葉が変色してしまうことがあります。
この記事では、夏の剪定後の葉の変色について紹介していきたいと思います。
夏の剪定後に葉に現れる症状の例
まずは、夏の剪定後に薔薇の葉にどのような変化が出てくるのかを、実例で紹介します。
下の写真に示すように、夏の時期に剪定を行うと、葉の至る所に茶色く変色したような場所が現れる薔薇があります。これは、特定の品種の薔薇に起こることではなく、出る品種もあれば出ない品種もあります。また、昨年出なかったのに、今年は出てしまったという薔薇もあります。
この写真の葉は、夏の剪定直後には青々とした健康的な緑色の葉でしたが、剪定後3日程度経った後に、この状態になってしまいました。
別の薔薇の株についても、次の写真の様に、同じような模様と色で変色している部分が出てきています。薔薇は花だけではなく、その光沢のある綺麗な葉も鑑賞のポイントになるので、このような茶色い部分があると見栄えが悪くなってしまいます。
ここの症状を見ると「薬害では?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、これは薬害ではありません。この写真を撮影する前は、3週間ほど薬剤の散布を行っておらず、かつ夏剪定をした直後に現れた症状になります。
もし、薬害が出ると、私の管理する薔薇の場合には、下の写真の様にもっと葉が黒く焼けてしまうような症状が出てきます。表現が難しいですが、薬害が出た場合には、不自然な変色で、まさに薬品によって害が出たと思える見た目になります。この症状と上で紹介した葉の様子は、少し違うことが分かるかと思います。
剪定後の葉の変色の原因について
それでは、ここからは夏の剪定後には何故このような葉の変色がおこるのか?を考察したいと思います。
私の考えではありますが、以下で紹介する原因①と原因②の両方が重なることで葉の変色が起こってしまうのではないかと考えています。
原因① 剪定による株のバランスの変化
まず一つ目は、剪定したことによる株内のバランスの変化です。
剪定と言う作業は、薔薇からしてみれば急激な環境の変化になります。剪定の前までは薔薇が自分自身で育ちたいように育っていたのに、人間の手によって枝をバッサリと切り落とされる状況です。
薔薇を健康的に育て、綺麗に花を咲かせるためには剪定が必要な作業ですが、それは言い換えれば薔薇の成長の仕方に変化を与える行為でもあるので、剪定の直後は株の中に大きな変化が生まれます。
このタイミングは薔薇の株に様々な変化が起こってしまう可能性が高いのだと思います。
人間も同じですよね…急にアメリカに住むことになり食生活がガラッと変わってしまうことがあれば、身体に大きな変化が生まれるでしょう。その変化に慣れるまでは、少しの時間がかかりますし、その環境に慣れるまでの期間は風邪を引いたり、体調に変化が現れやすい期間になります。
薔薇も同じで、剪定直後には株の状態の急変に追随できず、耐病性などが一時的に落ちることが考えらえます。その状態で、次に紹介する直射日光の影響があると葉が茶色く変色する等の変化が出てくるのだと思います。
原因② 直射日光による葉焼け
植物全般に言えることですが、直射日光によって葉が焼けてしまうという現象があります。
例えば、室内で育てていた観葉植物を、急に夏の日差しの下に出すと、葉が茶色く焼けてしまうことがあります。私自身も、室内で育てているパキラを7月に1時間程度外に出したところ、何枚かの葉が茶色く焼けてしまった経験があります。
日光が大好きな薔薇でさえも、直射日光で葉焼けを起こしてしまうことがあります。そして、剪定の直後は直射日光による葉焼けが起こりやすい理由があります。
下の図は夏に剪定を行う前の薔薇の株姿の絵ですが、夏は生育が旺盛なので青々とした葉が茂り、一部咲いている小さな花が付いているかと思います。
夏は葉が非常に多くなるため、薔薇の株の上の方の葉は常に強い日差しに当たって育ちますので、強い直射日光にも慣れているような状態になります。
それに対して、株の下や中の方にある葉はどうでしょうか?
一番上にある葉に直射日光を遮られるため、比較的穏やかな日光が届く程度の環境になります。
この株を夏の剪定でバッサリと切ってしまうと、次の絵の通り、今まで直射日光に晒されていなかった葉が全面的に露出することになります。強い直射日光に慣れていない植物に、急に直射日光を当てるとい急激な環境変化を与えるのと同じことを意味しています。
剪定の前は株の上の方にある葉によって直射日光から保護されていた葉が、急に強い夏の日差しに当たるとどうでしょうか?
さらに、上で説明した通り、株の育成バランスが崩れて少し耐病性などが落ちている状況が加わったらどうでしょうか?
それらの相乗効果で葉が焼けてしまい、茶色く変色するということが起きてもおかしくはないと思います。むしろ、この2つの原因が夏の剪定後の葉の変色の原因なのではないかと考えます。
剪定後の葉の変色を防ぐ手立てはあるの?
では、夏の剪定後の葉の変色を防ぐ手立てはあるのでしょうか?
葉が多少変色しても薔薇が枯れるようなことは無いですが、変色しないに越したことは無いですよね。
私の考えですが、上で紹介した原因のうち、急激な直射日光の変化を防げば、葉の変色は防げるのではないかと思っています。
例えば、鉢植えの場合には、夏の剪定を行った直後は明るい日陰で数日管理する等の方法です。明るい日陰であれば、剪定の前後で葉に当たる日光量の急激な変化はないはずです。
ただし、地植えの薔薇については移動が出来ないので、この方法は使えません。正直なところ、地植えの薔薇については剪定直後の葉の変色を防ぐのは難しいのではないかと思います。
また、夏の剪定によって株のバランスが顕著に崩れてしまったことだけが原因の場合、日陰を利用しても葉の変色は防ぎきれない場合もあるかと思います。
基本的に多少の葉の変色は放置します
薔薇の葉は病気になって大半が枯れ落ちてしまうことや、害虫に食害を受けて枚数や面積が減ってしまうこともあります。
しかし、薔薇はそのような状況下でも新しい芽を出して、新しい葉を展開させて成長を続けくれます。
葉が多少変色したからといって、秋の開花に多大な影響を与える訳でもないですし、重要なのは秋の開花に向けて新しく出てくる花芽の管理です。
新しく出てきた元気な葉や茎を守ってあげれば、秋には立派な花を咲かせてくれると思いますので、今回紹介した夏の剪定後の葉の変色は基本的に放置しておいても良いのかと思います。
見栄えが悪ければ、新しい枝が伸びてきた時に、変色した葉を除去してあげればOKだと思います。
本記事の終わりに
この記事では、薔薇を夏に剪定した際、株によっては葉が茶色く変色してしまうことあることを紹介させていただきました。
葉が茶色く変色してしまう原因は、剪定によって株のバランスに変化が生じたこと、そして剪定の前までは株の内側に隠れていた葉が、急に直射日光に当たって葉焼けを起こしてしまうことが原因であると考えます。
ただ、葉焼けを多少起こしたとしても、秋の開花に向けた新しい枝と新しい葉が出てくれば、葉焼けの影響は全く問題ないと思います。
急に葉が茶色く変色すると焦ってしまいますが、変色の理由を考えることと、本当に対処すべき変化なのかを見定めていきたいものです。