狭い空間で薔薇をコンパクトに育てる方法 -ベランダ栽培で必要な知識-

小さな花壇やスペースの限られたベランダでは、薔薇の株が横方向に成長してしまうとスペースを取ってしまい困るケースが多々あります。

私の場合ですが、薔薇を始めた最初の頃は、薔薇の株の制御を知らなかったので、玄関先の薔薇の枝が横に広がり妻から怒られたことが多々あります。

また、薔薇の場合には棘があるので、あまりにも横張性が強い状態だと、他の植物の葉・茎を傷つけてしまうこともあります。

限られたスペースで薔薇を楽しむために、そのような悩みは未然に防げたら良いですよね!

薔薇は、新芽の出る向きを意識して剪定をすることで、枝の広がりを抑えたスリムでコンパクトな株に仕上げることが可能です。

この記事では、私の実践している剪定による樹形の整え方について説明させていただきます。


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薔薇の茎が広がる理由

薔薇の茎が外に向かって広がってしまう理由は、私の経験上、基本的に以下で説明する3つです。

薔薇の樹形が広がることにお悩みの方は、多分ですが、どれかに当てはまるのではないかと思います。

新芽が外に向くように剪定してしまっている

花が咲いた後には必ず剪定をしますよね!

その時に、何も考えずに無意識に薔薇の剪定をすると、いつの間にか枝が外へ外へと伸びていってしまうことがあります。

薔薇栽培を始めた1年目の私もやっていた失敗です。「とりあえず剪定しておけばいいや!」という意識の低さだったので…。

枝が外へ外へと成長してしまうのは、剪定の時に芽の向きを意識していないために起こることなのです。

薔薇の新芽は、葉の付け根の部分にあり、その芽の向いた方向に新しい枝が伸びていきます。

言葉では説明しにくいので、実際の例を図で見てみましょう。図1(a)に春の一番花が咲いた様子を図示しました。

新芽の伸びる向きの説明図
図1: 薔薇の剪定と次の芽が伸びる方向

この花が終わった後に、図1(a)の「剪定位置」で記した場所で剪定したとします。すると、その選定した位置の葉の付け根から新しい花枝が伸び、図1(b)に示すように、2番花が咲きます。

この時、左側を向いた葉のすぐ上で選定したので、新しい枝は左側に向かって伸びていきます。さらに2番花が終わった後、図1(b)の剪定位置で切ったとします。

すると、また左側に向いた葉の上で切りましたので、図1(c)に示すように、さらに左側に向かって枝が伸びていくことになります。

これを繰り返してしまうと、どんどん左の方向へ新芽が伸びていく樹形に仕上がってしまうのです。これが、剪定方法が原因で起こる薔薇の枝が広がってしまう理由になります。

この新芽の伸びる方向は、薔薇の成長の仕方を知らないと絶対に意識できませんよね…!?

薔薇栽培1年目の私は「剪定して切れば大丈夫」とだけ考えていたので、新芽の向きなど無視していました。その結果、直立性の薔薇なのに枝が横たわるような状態になり、一度バッサリと剪定する羽目になったこともあります。

小さな花壇や玄関先の鉢植えの薔薇がこのよう広がると、せっかく綺麗に咲く薔薇もちょっと邪魔な存在になってしまいますよね。剪定の前には枝の伸びる方向を考えて剪定をしていきましょう。

私自身、この選定方法を実践して、新芽の出てくる方向をきちんと確認したので、樹形や薔薇の茎の広がりに悩むことが少なくなりました。

薔薇の写真1

直立性では無く半つる性の薔薇を選んでいる

薔薇にはまっすぐ空へ向かって伸びる直立性、茎が長く伸びるつる性、直立性とつる性の中間に位置する半つる性の3種類の樹形があります。

つる性の薔薇は枝がどんどん伸びていくため、直立した成長をすることができません。そのため、支柱を断てない限りは必ず枝が広がってしまいます。つる薔薇をスリムに育てるには、オベリスクに巻き付けたりトレリスを用意する必要があります。

半つる性の薔薇は「直立性にもつる性にも使えますよ」と言われているので、花の形や色だけを見て苗を購入してしまうことがあります。しかし、いざ半つる性の薔薇を育ててみると、予想していた以上に横張りが強かったり、枝が非常に長かったりします。

また、上で説明した新芽の方向を意識した剪定をしていないと、半つる性の薔薇は、つる性に近い状態で育ってしまうこともあります。

私は「半つる性薔薇」と紹介された「クラリス」という薔薇を育てていますが、半つる性どころかつる薔薇に近い姿で成長しています。クラリスは剪定をしても、枝が自立できない状態で成長するので、半つる性では無く、つる薔薇だと思っています。

そのため、限られたスペースで栽培するのであれば、できれば「木立性」と記載された薔薇を選ぶことをお勧めします。もし、半つる性の薔薇を選んでスリムに育てたいのであれば、新しい枝の伸びる方向を考えた栽培を心掛けることや支柱を使って枝が倒れないようにサポートをしてあげることが絶対に必要です。また、半つる性の薔薇の中でも、枝が比較的強いものを選ぶと、枝の垂れ下がりなどに悩まされなくなるかと思います。

私の経験上、半つる性の薔薇は放置しておくと確実につる性の薔薇の習性を出してきますので注意してください。スリムに育てたいなら「直立性 (木立性)」の薔薇の一択です!

薔薇の写真2

枝の太さに対して花の大きさが大きい薔薇がある

薔薇の品種によるところなのですが、品種によっては枝の太さ・頑丈さに似合わない大きな花を付けるものがあります。

例えば、私も栽培しているガブリエルです。

ガブリエルは花の色や形がとても素晴らしい薔薇で、薔薇業界の中でも人気の品種なのですが、本当に繊細な薔薇の一つです。

細い枝に対して、枝の細さに合わないような立派な花を咲かせるので、枝が下の写真で分かるように、倒れてしまっていることがわかります。

薔薇のガブリエルの横張り写真

春先はこんなに横張りの樹形では無かったのですが、蕾が大きくなるに連れて、蕾のと花の重さに耐えきれず、だんだんと横に倒れてきてしまいました。

このようになった場合には、せっかく付いた蕾や咲いた花を剪定するわけにもいかないので、支柱を立ててあげたり、麻ひもで茎をまとめてあげたりしなければなりません。

この写真のガブリエルは、そのままにしておくと枝が折れてしまいそうだったで、支柱を立てて枝をまとめて対処しました。ちょっと見栄えは悪いのですが、大切な枝が折れてしまうよりは絶対に支柱を立てたほうが良いです。

外に広がると良い効果もある

「スリムに育てましょう」という記事を書いているのに、樹形が広がることの利点を書くのも微妙ですが、一応書いておこうと思います。

薔薇の枝が外に広がることは、実は薔薇にとって悪い事ではありません。広がることによって、株全体に日光が当たるようになりますので、葉の光合成を促進できるという利点があります。

また、外に向かって枝が伸びることで、風通しが改善されますので、病害虫に対する対策になるのは確かなことです。

内側に向かって枝が伸びると、どうしても内側の葉が込み合って、病気の原因になりますし、株の下の方にあって隠れている葉は光合成ができません。

広がり過ぎは考え物ですが、適度な広がりは薔薇の健康な育成に必須の樹形なのだと思います。

どこまで広げれば良いの?という定量的な目標は無いのですが、日向に薔薇を置いた時に、薔薇の葉全体に日光が当たっているような状態であれば問題は無いかと考えています。


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枝が広がり過ぎると折れる原因になる

枝が広がり過ぎて枝が折れてしまう事、これは私も何度も経験したことがあります。

地植えの薔薇が「少し横に広がって枝が伸びたなぁ」と思っていたら、風の強い日に根元からポキッとその枝が折れていました。

枝が横方向に広がると枝の重みによって株元にかかる力が強くなるので、少し力が加わっただけで枝は折れやすくなります。「しっかりした太い枝だし、大丈夫だろう」と思わない方が良いです。薔薇の枝は根元付近から太いものが出てきますが、枝自体は太くて強いのですが、枝の付け根である根元付近は意外と弱いです。

もし折れそうな時には、折れる前に支柱を使うなどして、支えを作ってあげてください。特に春の薔薇は成長速度が非常に速いので、あっという間に枝が折れるような大きさに成長してきます。

支柱を立てる時期としては、蕾が付き始める前には終わらせてあげたいところです。「枝が立派に伸びたなぁ」と感じたら、その時が支柱を立てるタイミングです!

支柱は地植えの薔薇だけでなく、鉢植えの薔薇に対しても有効な手段となります。薔薇を育てるのであれば、支柱を多めに用意しておくと便利です。

薔薇の写真3

薔薇を健全にスリムに育てる方法

剪定の際に内向きの芽を有効活用する

図1の例では、左向きの芽の上で選定を繰り返したために左側にばかり伸びる枝になってしまっていました。ですので、右向きの葉の上で切るということをしてあげれば、バランスが良くなるのです。

図2(b)の2番花が終わった後、剪定位置を右向きの葉の上にしてあげることで、3番花の茎が伸びる方向を右方向にすることができます。

こうすると、左側にだけ伸び続けることを防ぐことができます。完全に直立とまではいかないですが、横幅を抑えることができます。

スリムに育てる剪定の方法
図2 : 芽の方向を考えた剪定

しかし、この方法は注意が必要です。全ての芽を内側に向くように切ってしまうと、内側が込み合ってしまい、互いに茎を傷つけあったり、成長を妨げてしまいます。

そのため、一部の新芽を内側に向け、残りの芽は外側を向くように調整をしてあげてください。

枝が多くなると、だんだん難しくなりますが、慣れてくるとあっという間に剪定位置が決まるようになります。まさに「習うより慣れろ」です。

葉に日光が当たらなくなると、薔薇自体が健康に育つことができませんし、花の大きさにも影響を与えてしまいます。

あまりにも内側が込み合ってきたら、外側の芽の上で切るようにしたり、一部の枝を伐採するなどの対応が必要になります。

私の過去の経験では、内側に向いた芽の上で剪定をしていたら、葉が込み合いすぎて「ハダニ」と呼ばれるダニが大発生したことがあります。風通しが悪く、葉が込み合っており、かつ雨にも濡れない場所というダニが大好きな場所を無意識に作り上げていたことが原因でした。

それ以来、常に内側の芽だけを残すのではなく、外側の芽と1 : 1くらいの割合で残すようにしました。今のところ、そのくらいの比率で目を残すと、大きな不具合は出ていません。

直立性の薔薇を選ぶ

直立性の強い薔薇を選ぶことも、狭い空間で薔薇を栽培するときの大事な指標になります。

どのような樹形かは薔薇のタグを見ればわかりますし、もしわからなければ、薔薇に詳しい店員さんに伺うのが一番です。

また、近くの薔薇園に行くと、大きくなった薔薇の成木が見れるので、最終的にどのような樹形になるのかを確認することもできます。

私も購入を検討している薔薇がある時には、実際に薔薇園に行ってその薔薇が無いか探しています。薔薇園は、花を楽しむだけでなく、そういう観点で見学すると2倍の勉強量になりますよ!


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この記事のおわりに

この記事では、玄関先やベランダなどの限られたスペースでも薔薇の株の広がりを抑えられる、スリムな薔薇の育て方について御紹介させていただきました。

スリムな薔薇に育て上げるポイントは簡単で、

①直立性のある薔薇の品種を選ぶこと

②内側に向いた新芽を利用してあげること

の2点だけです。

冬にしっかりと剪定をしても、春以降にどんどん枝を伸ばしてしまうため、株の横広がりを抑えられない状態になることもしばしばあります。

しかし、新芽の向き考えることで横幅は抑えられますし、邪魔になったら花が咲いた後に思い切って剪定してしまえばいいのです。

薔薇を始めた当初は、あまり切り過ぎると問題があるのではないかと心配になるのですが、思いっきり剪定しても薔薇は剪定が原因で枯れることはほとんどありません。

皆さんもこの方法を実践して、限られたスペースでも邪魔にならない「スリムな薔薇」を育ててみて下さい。

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