1800年代から品種改良が進んだ薔薇、近年になり一気にその美しさが開花し、多くのモダン・ローズが作出され世に送り出されてきました。
オールド・ローズからモダン・ローズへの変遷は「La France (ラ フランス) 」と呼ばれる薔薇よりも以前・以後の作出で分けられています。ラ フランス以後に作出された薔薇がモダン・ローズに分類されます。
現在の薔薇業界を牽引しているハイブリッド・ティーやフロリバンダなど、モダン・ローズにも様々な系統があります。
作出されてきた薔薇は、コンテストで美しさが磨かれ、年々素晴らしい育種が進んでおります。
また、近年では「美しさ」だけでなく、「耐病性」に優れることが素晴らしい薔薇の前提条件になってきています。
この記事では、モダン・ローズの歴史と、薔薇に磨きをかけるコンテストについて御紹介致します。
モダン・ローズの歴史 -構成と系統-
最も歴史のあるハイブリッド・ティー・ローズ
ハイブリッド・ティー (Hybrid Tea) 系統は、ティー・ローズとハイブリッド・パーペチュアル・ローズの交配から作出された薔薇で、現在のモダン・ローズで最も歴史があります。
「ティー」とは、紅茶 (tea) の頭文字のTを表しており、紅茶のような香ばしく爽やかな香りを持つことにちなんで命名されました。
基本的な特徴としては、一つの花枝の頂点に大輪の花を咲かせる系統です。もちろん、頂点部に複数の蕾を付けることもあります。
代表的な薔薇としては、プリンセス・ドゥ・モナコ (Prince de Monaco) やブルームーン (Blue Moon) 、パパ・メイアン (Papa Meilland) などがあります。
有名な薔薇が多いフロリバンダ・ローズ
フロリバンダ (Floribanda Rose) は、上で紹介したハイブリッド・ティーとポリアンサ・ローズを掛け合わせて作出されたモダン・ローズの系統です。
Flowerとbundleから作られた言葉で、「花の束」を意味した名前になります。
その名の通り、一つの花枝に複数の花を付ける薔薇で、四季咲き性の強い系統になります。花の大きさは中輪~大輪のものがほとんどです。
代表的な薔薇としては、アイスバーグ (Ice Berg)、ゴールド・バニー (Gold Bunny)、オールドポート (Old Port) 等があります。
魅力が詰まったイングリッシュ・ローズ
イングリッシュ・ローズ (English Rose) は 、モダン・ローズとオールド・ローズを交配させて完成した系統で、イギリスのデビッド・オースチン (David Austin) によって育成された有名な薔薇の系統です。
四季咲き性の薔薇で、花の形や色、匂いが豊富で、薔薇愛好家の憧れ的な存在でもあります。
ただし、ハイブリッド・ティーやフロリバンダに比べると耐病性に関しては弱いように感じます。繊細な薔薇が多いということもあります。
もしイングリッシュローズに挑戦するのであれば、なるべく樹勢の強いもの (イングリッシュ・ローズの中でも耐病性が高い) から初めることをお勧めします。
私も近い将来、イングリッシュ・ローズに挑戦してみようと計画しています。
代表作は、グラハム・トーマス (Graham Thomas)、アブラハム・ダービー (Abraham Darby) などがあります。
耐病性に優れた優等生 シュラブ・ローズ
シュラブ・ローズは、上記の「ラ フランス」が作出された後に、各系統の薔薇の交配により生まれたシュラブ型の薔薇になります。
耐病性も比較的強く、薔薇には珍しい手が掛からない特性を持つことから、修景薔薇として栽培されることもあります。
また、鮮やかなピンク色の花があることも特徴的で、庭を華やかにしてくれる薔薇です。
ロイヤル・ボニカ、アプリコット・ドリフト、シエスタ等が代表的なシュラブにあります。
京成バラ園の「うらら」も非常に優秀な薔薇で、年間を通じて本当に多くの蕾を上げてくれます。
「ミニ薔薇」で親しまれるミニチュア・ローズ
ミニチュア・ローズ (Miniature Rose) は、ロサ・キネンシス・ミニマとポリアンサ系の薔薇の交配によって生まれた樹形が小さく花の大きさも小輪の薔薇で、一般的に「ミニ薔薇」と称されている系統です。
ただし、ミニ薔薇のミニは、Miniatureのミニではなく、ロサ・キネンシス・ミニマのミニであると言われています。
園芸店で並ぶミニ薔薇がこのタイプに属しており、四季咲き性を有しており、色や花形も豊富で様々なシーンで活躍している薔薇です。現在でも、様々な品種が生み出されています。
ポールセンローズやインフィニティローズが、ミニ薔薇の有名なブランドとして知られています。
最高の薔薇を讃える「殿堂入りの薔薇」
3年毎に開かれる世界バラ会連合の投票によって選ばれ、薔薇文化の発展や薔薇の市場に貢献した薔薇に送られる賞が「薔薇の殿堂」です。
お店で販売されている薔薇の苗に「薔薇の殿堂入り品種」というタグがつけられていますので、初めての方でもお店で確認することができます。
この殿堂に選ばれた薔薇は、耐病性や栽培の容易性をクリアし、かつ世界中広い地域で美しい花を咲かせることができる優秀な薔薇ばかりです。初めて薔薇を育てる方にとっては、敷居が比較的低くなる薔薇の品種と言っても良いかと思います。
私もイングリッドバークマンという殿堂入りの薔薇を育てています。深紅の薔薇で、本当に立派な花を咲かせます。葉もキラキラの照葉で、花だけでなく株全体が美しい薔薇です。殿堂と言われて納得の薔薇です。
以下で、殿堂入りした薔薇を選ばれた年と共に御紹介します。
あらためて薔薇の殿堂を見ると、有名な薔薇ばかりです。薔薇を育てるのであれば、一株は殿堂入りの品種を育てておきたい薔薇達ですね。
どの薔薇も素晴らしい薔薇ばかりで、有名なバラ園に行くと必ず植えられています。日本で最も有名なピエール ドゥ ロンサールも2006年に殿堂入りを果たしました。
殿堂入りの薔薇から、お気に入りの薔薇が見つかるかもしれませんね。
さて、次回開催の2021年大会は、どんな品種が殿堂入りするのでしょう。今から楽しみです。
美しさと耐病性を試されるコンテスト
世界では多くの薔薇のコンテストが開かれています。「美」を求める花の女王の薔薇ですので、服や装飾品と同じようにコンテストが開催されます。
それだけ薔薇の美しさを人々が認めている証拠なのだと思います。
中でも歴史ある有名なコンテストが「イギリス薔薇会賞」「バーデンバーデン国際コンクール」「ジュネーブ国際コンクール」「JRC新品種コンテスト(日本)」等となります。
これらのコンテストでは、ただ単に薔薇の美しさを競わせるものではなく、その品種の病害虫に対する強さも審査をされることになります。
各コンテストでは、育種家の育てた薔薇を実際に栽培し、そこで1年、2年と育てて耐病性が備わっているのか?花付きは良いのか?花の美しさは問題ないか?をテストされます。
つまり、近年の薔薇は「美しい」だけでは審査に通らず、「耐病性」があることが当たり前になっているのです。
言い換えれば、耐病性の無い薔薇は世に送り出されないということになるのです。私たちの手元に届く新品種は、そのような厳しいコンテストや育種家の厳しいチェックを経て送り出された素晴らしい薔薇たちなのです。
安心して育てられるモダン・ローズ
モダン・ローズの多くは、その耐病性の改善から、誰もが敷居を感じることなく挑戦できる薔薇に育て上げられてきました。
少し前までは「薔薇は病気・害虫のデパートだ。」と言われるくらい、病気にかかりやすい品種が多く、黒星病やうどんこ病に悩まされていました。しかし、上記の通り、近年は病害虫に強いことが新品種作出の第一条件になり、病気に強い薔薇・無農薬でも育てられる薔薇が「当たり前の品質」になってきています。
言い換えれば、「薔薇が病気に弱い」というイメージは、過去の言葉になりつつあり、この記事を作成している2020年が、まさにその軌道に乗っているタイミングなのです。
農薬を使わずに有機栽培をされている方や、薔薇をこれから始める方にとって本当に嬉しいことではないでしょうか。
上で紹介した薔薇の殿堂に選ばられた薔薇たちは、少し年代が古いものであっても、耐病性が比較的良いものが多いです。ピエール ドゥ ロンサール以降の薔薇についていえば、本当に耐病性が改善しているものばかりだと感じます。
理想を追い求めると、例え耐病性が高くても薬剤を使用し、綺麗な葉を一枚でも多く残して、株としての生育を促す必要があるかと思います。
しかし、そこまで理想を求めなければ、特に力を入れることなく花は咲いてくれます。それが現代のモダン・ローズです。
園芸を楽しむ方にとっては、薬剤を使用することが無くなるだけで、薔薇に対するイメージが変わり、育ててみたいというイメージが湧くのではないでしょうか?
「手入れの大変な薔薇」から「誰でも育てられる薔薇」になりつつある今、玄関先で一株育ててみてはいかがでしょうか?
この記事の終わりに
この記事では、モダンローズと呼ばれる近代の薔薇の御紹介をさせていただきました。
モダンローズは、育種化の皆様の御努力によって年々耐病性が向上し、誰もが栽培を始めやすい薔薇が多く揃っています。
色・香り・形、そして樹形など、薔薇は様々な鑑賞ポイントがありますが、是非お気に入りのモダンローズを見つけて、一鉢栽培を始めてみてはいかがでしょうか?