10月半ばになると、朝の時間帯に半袖で園芸作業をするのが、さすがに寒くなりますね…。
徐々に秋に向かい気温が下がってくるのと共に、薔薇の花芽が成長して蕾が形成され膨らみ、秋の開花へ向けた最終段階に来ていることが感じられる季節になりました。
早咲きの薔薇は秋薔薇が満開になっているものもあるのではないでしょうか?
そんな秋の開花が待ち遠しい季節、実は困ったことに見舞われました。
開花を直前に控えた薔薇の蕾が、ポロポロと急に落ち始めてしまったのです。
薔薇の蕾が落ちてしまったことは、今までにも2度経験をしていますが、今年もその症状が現れてしまいました。蕾が落ちてしまう原因はそれぞれ異なる上に、原因を断定することが難しいのが事実です。
この記事では、蕾が落ちてしまった例と共に、その原因について様々な面から考えてみたいと思います。
蕾が突然落ちてしまった薔薇の実例と経緯
本記事で紹介する蕾が落ちてしまった薔薇は、ポールセンローズの「ノヴァ」という薔薇になります。
2020年9月に夏剪定を行い、順調に蕾が上がってきて、もう少しで満開の時を迎えると思った矢先、蕾がポロポロと落ちている所を発見しました。
夏剪定後は順調に育っており、とても健康的な状態だったので、何の心配もしていなかったのですが、突然蕾が落ち始めるととても心配になります。
どのような状態かと言うと、表現するのが難しいので、以下に2つほど写真で例を挙げてみます。
下の写真では、赤色の矢印で示す部分のに蕾が無くなっていることが分かります。また、茎が枯れてしまったような様子は全くなく、突然ポキっと茎が折れてしまったようになっていることもわかります。
さらに、青色の矢印で示す部分には咲きそうな蕾があるのですが、今にも蕾が落ちそうな状態になっていることもわかります。この青色矢印で記した蕾は、この写真を撮影した後で少し触ったら、蕾が完全に落ちてしまいました。
また、次の写真は別の部分の写真になりますが、一部虫食いの様な葉がありますが、花芽の頂点にあるはずの蕾が無くなってしまっていることがわかります。
このように蕾が落ちてしまった箇所が、1つの株に対して5つほど見られました。秋の開花を目前にして、蕾がどんどん落ちていくので「せっかくの蕾が…」と、ショックを受けました。
虫に葉を食べられたり、黒星病が多少出ても薔薇は咲いてくれるのですが、蕾が落ちたら手立てがありません。
この原因について、以下で少し考えてみたいと思います。
害虫を疑い直ぐに薬剤の散布すると…
取り合えず、直ぐに応急処置としてできることは害虫が原因であることに備えて、即効性のある薬剤散布です。
手元にあった直ぐに使える薬剤として、住友化学園芸さんの「ベニカR乳剤」です。これを規定量に希釈して、株全体に散布していきました。
すると、散布して直ぐに効果が現れ、葉を食べ散らかしていた犯人が現れました…バッタさんですね…。周辺から3匹出てきました。
また、少し時間た経ってから株元の付近に、もう一匹の珍客が現れました…。ナメクジさんです。最近は、家の花壇であまり見ていなかったのですが、特に対策をしていなかったので住みやすい状況ができていたのかもしれません。ナメクジも薔薇の葉を食害する害虫の一つになります。
しかしながら…バッタとナメクジが、蕾を落とした原因とは思えないのです。
バッタもナメクジも葉を食害するのですが、蕾を落とすような食害はしないと思います。もちろん蕾を食害することもありますが、大きく育った蕾を連続で何個も落とさせるような食害はできないと思います。
私の予想では大きなヨトウムシあたりが出てくるのかと思っていましたが、薬剤を散布して2日経っても、ヨトウムシが出てくることはありませんでした。
つまり、今回、薔薇の蕾が急に落ちてしまったことは、害虫が根本的な原因とは思えないのです。
害虫以外の理由について
害虫が悪さをしていたという事実があるのは確かだと思います。実際に上で紹介した写真では、蕾のすぐ下の柔らかい葉が食害にあっています。
しかし、何度見ても蕾の落ち方については、害虫の食害とは思えないような落ち方をしているのです。
例えば、下の写真の例ですが、ハサミで切った様に蕾の部分だけが取れてしまっている状況であることがわかります。
また、次の写真の例では、蕾の付いていた茎の部分が少し色が変色しているものもありました。もしかしたら、この例では蕾が落ちてから時間が経ち、このように茎の部分が変色してしまったのかもしれません。
このような蕾の落ち方は、害虫以外の別の要因があるとしか思えません。
以下では、その原因についても考察してみたいと思います。
今回は栽培条件の変化や病気は考えにくい状況
一つ直ぐに思いつくことは、薔薇の栽培条件の変化です。
例えば日照条件。
薔薇は、栽培されている環境の日照条件に適した蕾や花の大きさを決めると言われています。蕾が形成されてきた薔薇の栽培条件を変えると、蕾が付きにくかったり、蕾が上手く開花しないことも知られています。
しかし、今回の例の薔薇は地植えにされている薔薇であり、環境を急に変えることがほぼ不可能な状態です。
また、病気による影響も理由として挙げられますが、今回紹介しているポールセンローズの「ノヴァ」は、8月から10月まで病気を全く発症していません。
黒星病やうどんこ病、灰色かび病などの病気に罹った履歴が無いのです。
さらに、肥料の過不足も原因の一つかもしれませんが、夏剪定の時に規定量の緩効性肥料を与えていますので、問題は無いと思われます。
つまり、栽培環境・栽培方法と言う観点では、特に問題が見つかりませんでした。
気温の変化 (乱高下) の影響
2020年9月は、私の住む関西では9月の半ばから急に気温が落ち始めました。
例年であれば10月までは残暑が続くのですが、今年は少し様相が異なり、30℃を下回る日が比較的早く訪れました。
そして、涼しくなったと思いきや、10月に入って再び気温が上がる日が何度か続いていました。
薔薇の蕾が成長する時、日照条件以外にも気温がとても大事な役割をすることは皆様が御存じの通りかと思います。暑過ぎると花の色が薄くなり花が小さくなりますが、春や秋の適温の時には素晴らしい花を咲かせます。
気温の上下が少し大きく、それによって薔薇の蕾の成長に影響が出てしまった可能性は一つの要因として考えられるかと思います。
気温も環境変化の一つではありますが、ここでは気温に着目して記載をさせていただきました。
また、それに加えて、次に紹介する蕾の多さも理由の一つとして考えられます。
1つの株に対して蕾の数が多すぎる
薔薇はとても立派な花を咲かせるのですが、花を咲かせるためには、それだけ多くの養分を必要とします。
そのため、多くの蕾が付きすぎると、薔薇の株自体が咲かせることができないと判断して蕾を自ら落とすことがあります。
今回のポールセンローズの「ノヴァ」については、2020年10月10日の時点で、一つの株に14個の蕾を形成していました。そのうち5個の蕾が残念なことに、落ちてしまうという結果となってしまいました。
もしかしたら、14個と言う蕾の数が、その時の株の状態にとっては多すぎる蕾の量だったのかもしれません。
5個の蕾が立て続けに落ちていきましたが、その後は蕾が落ちることは無く、無事に開花を迎える蕾が沢山出てきたことを考えても、蕾の量の調整と言うのも一つの要因では無いかと考えられます。
せっかく時間をかけて膨らんできた蕾が落ちてしまうくらいなら、蕾が顔を出した時点で摘心を行い、無駄な養分を使わせない方が良いのかもしれません。
ただ、咲くかもしれない蕾を摘心するのは少し勇気がいるのですが…。
この記事の最後に
本記事では、薔薇の蕾が突然落ちてしまう原因について、実例を交えて紹介をさせていただきました。
薔薇が蕾を落としてしまう原因は、確固たる理由を突き止めることはできません。喋ることができない植物を相手にしている以上、真の原因を突き止められる人はいないでしょう。
しかしながら、過去の経験や栽培環境の変化などを考えてみると、蕾が落ちてしまう原因として考えられることが見えてくる場合もあります。
薔薇の栽培が失敗と成功、そして経験の連続でなかなかうまくいかないことが多いですが、蕾が少し落ちても薔薇自身が枯れてしまうことは稀だと思います。
次の開花シーズンには蕾が落ちないように、今回の経験を一つの教訓として考えていきたいと思います。