冬に向けて気温が下がっていく秋、10月の中旬から11月に開花する薔薇は、春や夏の薔薇とは異なり、少し哀愁があり深みのある花となります。
秋の薔薇は、花の形や色、そして花弁の数も春と夏とは異なるため、同じ薔薇の株でも少し違った花を咲かせてくれます。
そんな秋の薔薇ですが、夏の剪定を行うことで、品種や種類の異なる薔薇も一斉に咲かせることができます。
何も気を遣わずに夏剪定をしてしまうと、品種の違いによって咲く時期がバラバラになってしまいますが、品種ごとの特性を知り剪定時期を調整することで開花時期を合わせてあげることが可能です。
とてもシンプルな方法ではありますが、この記事でその方法を御紹介したいと思います。
秋薔薇を一斉に咲かせるには夏剪定が必須
薔薇は開花時期を気にせずに放っておくと、常に様々な品種がバラバラに咲いてしまいます。
考え方を変えれば、一年を通じて常に花を咲かせてくれているので、庭や玄関先も寂しくなることは無いのですが、薔薇園のように一斉に薔薇が咲き誇るようにするためには開花時期の調整が必要になります。
薔薇は四季咲き、返り咲き、一季咲きの3種類がありますが、それぞれが開花までに必要な時間が異なります。四季咲き性の強いものは1年間を通じて5回か6回の花を咲かせてくれる能力があり、返り咲きは概ね3回か4回くらいの花を楽しむことができます。(一季咲きに関しては、春一度しか咲かないので秋に剪定をする必要は無いかと思います。)
秋の一斉開花のために夏剪定の調整が必要なのは、四季咲きの薔薇と返り咲きの薔薇があることと、薔薇の種類・品種によって花が咲くまでの期間が異なるためです。
開花までの期間が速いものは1か月ちょっとで咲きますし、遅いものは2カ月くらいかかります。その開花に必要な時期を見定めることで開花時期を概ね揃えていくことが出来ます。
春の1番花が咲くまでの期間を思い出しましょう
秋の開花時期を揃えるためには、その薔薇が新芽を出してから花が咲くまでの期間がどのくらいか?を知らなければなりません。
今年の冬に大苗を購入された方や昨年から薔薇を育てている方であれば、今年の春の薔薇の開花を経験したかと思います。
その薔薇が春の1番花を咲かせるまでにかかった期間を思い出してみて下さい。
下の表に示すように、冬から春に季節が変わる2月後半くらいに、どの薔薇も新芽の芽吹きが始まり、早いものでは4月の前半、遅いものではGWくらいが満開の時期になるかと思います。
開花までの期間が短い品種をお持ちの方は、6月に2番花を迎える品種もあったのではないでしょうか?
多分、この開花までの期間を正確に思い出すことは不可能かと思いますが、どの薔薇が一番最初に咲いて、どの薔薇が一番遅く咲いたかくらいは思い出せるかと思います。
その時期を概ねでも良いので思い出していただくことが、秋剪定の時期を調整する第一歩かと思います。
秋薔薇を一斉に咲かせるための夏剪定時期の調整
秋薔薇の開花を揃えるためには、上で紹介した春の薔薇の開花とは逆のことをすればOKです。
秋の開花が揃うように上の表の矢印を移動させれば良いのです。
四季咲き性の薔薇と返り咲きの薔薇がある場合には、開花に必要な期間が1カ月くらい異なるため、完全にそろえることは難しいかと思いますが、なるべく開花を近づける努力をすることはできます。
下の表にあるように、10月の下旬位に満開にしたいことを考えると、まず最初に開花までの期間が長い品種を9月の初旬に剪定を行います。その後、1週間くらいずらして、開花に必要な期間が平均的な品種を選定します。そして、最後に最も開花までの期間が短い品種を選定します。
ここで注意をしたいのは、秋薔薇は開花までに必要な期間が春に比べて短くなることです。
春は寒い冬から徐々に気温が上がっていくため、茎の成長や蕾の成長がゆっくりと進むため、開花までに必要な時間が比較的長いです。
しかし、秋は夏の残暑の残る暑い時期から徐々に気温が下がる方向です。そのため、暑い夏の期間を経て新芽が成長するため、春よりも新芽の成長が速くなり、開花までに要する期間も短くなります。
ただし、開花までに必要な期間は、開花までが早い品種は秋も早いままですし、開花までが長い品種は長いことに変わりはありません。そのため、春の開花情報は夏剪定にも参考になる情報となります。
最近の日本の夏はとても暑く、暑さが年々増していることは確かです。また、暑さが秋まで続く年もあれば、冷夏になる場合もあります。そのため、その年によって夏剪定の時期をずらす必要もあるかと思います。下の記事では、日本の気候変動と夏剪定時期の変化について私なりの考えをまとめてみました。
私の場合ですが、毎年の夏剪定は9月の前半に返り咲きの薔薇、9月中旬くらいから四季咲きの薔薇の夏剪定を始めるように心掛けています。秋の気温が低くなった中で成長する蕾の方が、美しい花を咲かせてくれる傾向にあるので、夏の暑い期間はなるべく避けて蕾を成長させるようにしています。
9月前半に一斉に夏剪定したら開花期が相当ズレます
一般的には「夏剪定は9月前半を目標に行いましょう」と言われていますが、もし9月前半に全ての薔薇を夏剪定したらどうでしょうか?
もう言わずもがなですが、開花期が大きく異なってしまいます。
下の表に9月初旬に一斉に夏剪定をした場合の例を示していますが、花が咲くまでの期間が短いものは、特に夏の時期はその期間が早まります。中には1カ月程度で咲いてしまう薔薇があるので、最も早い薔薇は9月の終わりから10月の初旬には開花してしまいます。
そして、開花までの期間の長い返り咲き性の薔薇については、暑い9月を経ても開花までに1カ月半から2カ月弱はかかります。
そのため、秋の薔薇が咲くのが9月後半から10月後半までの1カ月の間でバラバラになるので、夏剪定をした意味が相当薄れてしまいます。
さらに、9月の暑い期間に蕾を形成するため、特に開花までの期間が短い四季咲き性の薔薇は花のサイズも小さく、秋薔薇とは言えない状態で10月を迎えることになります。
このようなことが起こらないように、開花までの期間を考慮した夏剪定を心掛けることが重要かと思います。
この記事の終わりに
この記事では、秋薔薇を一斉に咲かせるために必要な夏剪定について、薔薇が咲くまでに必要な期間を考慮した夏剪定の時期調整を紹介させていただきました。
秋薔薇を咲かせる品種には、四季咲き性と返り咲き性があり、それぞれの開花までの期間を把握することで、秋の開花を揃えることが可能になってきます。
そのためには普段の薔薇の管理の中で、それぞれの薔薇が咲くまでに必要な期間を把握しておく必要もあるので、少し頭の片隅に入れておくと夏剪定の時に便利かと思います。
正確に開花までの期間を知らずとも、大体知っていれば夏剪定の時期をずらすことは可能だと思いますので、今年の夏剪定は品種ごとに時期をずらしてみてはいかがでしょうか?!
ちなみに、この記事を作っている2020年9月7日に、私の管理する薔薇の中で最も開花までの期間が長いルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールを夏剪定しました。これから2週間をかけて夏剪定を進めていきます!