薔薇苗の種類と初心者こそ「新苗の薔薇」から始めるべき理由

一般的に購入できる薔薇の苗は「新苗」「大苗」「開花株」の3つのパターンで販売されています。

この言葉自体、薔薇栽培の世界では知られた言葉ですが、一般の方や初めて薔薇を始める方からすると、どういう意味?という疑問符が出る言葉です。

それぞれの苗の形態で、販売される時期が全く異なりますし、それぞれに必ず確認すべき重要なポイントがあります。

この記事では、私が苗を購入する時に注意しているポイントを紹介させていただきたいと思います。失敗しない苗選びということで、必ず見ておいて欲しいポイントをお伝えしたいと思います。

また、薔薇の苗については、一般的には大苗からスタートすることが望ましいとされていますが、私はそうは思いません。初心者こそ新苗で薔薇を始め、さまざまな事を経験すべきだと思っています。

少し長い記事ですが、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。


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若い「新苗」の薔薇

新苗の写真

新苗とは?

夏から秋にかけて、野薔薇の台木にブランド品種の枝を芽つぎして育てた株で、翌年の春に鉢上げして販売される薔薇の苗を指します。また、冬に切り接ぎした株も春に新苗として販売されることもあります。

新苗は、前年に育てあげたばかりのまだまだ子供の苗のため、下で紹介する大苗に比べて貧弱なところはあります。

上の写真は新苗の写真になりますが、細く若い緑色の枝が1本だけしか出ていませんので、見た感じはちょっと頼りなさを感じます。

しかし、購入直後に元気な新しいベーサルシュート (新梢) が出たり、若い薔薇の成長を見ながら栽培を始めることができるため、育て甲斐のある苗と言えます。

ただし、やはり弱い所があるのは否めないので、初めて薔薇を栽培する方は大苗から始める方の方が多いです。私は、この記事の後半で、それに反論するのですが…。

新苗購入の最適時期は3月と4月

新苗の流通時期は毎年春の3月から6月になります。3月は流通し始めた頃ですが、最も量が多い出回るため、狙いの薔薇・好みの薔薇を購入しやすい時期になります。

前年に接ぎ木した苗を鉢上して販売するので、そこまで大きな苗ではなく、小さなビニールポットで売られていることが一般的です。

「え?薔薇の苗なのにビニールポット?」と思われるかもしれませんが、新苗はビニールポットなんです。

そのため、すぐにポット内で根が窮屈な状態になりますので、早い時期に購入して適切な鉢に植え替えてあげることで、その年の育成をスムーズに進めることができます。

インターネットや店頭販売で購入できますが、可能であれば店頭販売で実際の苗を見えてから購入することをお勧めします。

また、店頭販売されている新苗は、6月になると状態が一気に悪くなる傾向があると感じます。いわゆる、売れ残りの状態になるというイメージです。枝枯れ、葉落ち、病気という状態が目立つので、出来る限り4月までに購入するようにしましょう。早ければ早いことに越したことはありません。

薔薇の絵画

新苗選びで必ず見て欲しいポイント

新苗購入時の株選びのポイントですが、以下の項目は必ずチェックしましょう。

  • 葉が綺麗で黒星病などの病気が無いこと
  • 接ぎ木した部分が安定していること。グラグラするものはNG。
  • 接ぎ木した枝から新しい枝が伸び葉の数も多いこと。丈夫そうな太い枝があると頼れる株と言えます。
  • 株元から新しいベーサルシュートが出てきているものは良い株の証拠。

新苗は上で書いたように、まだまだ若い不安定な株と言えます。そのため、購入時または購入直後にトラブルに見舞われるケースもあります。

出来る限り店頭で苗を確認し、購入後にトラブルにならないように上記の内容を確認しておきましょう。また、私はインターネットでの新苗購入はお勧めをしません。大苗なら良いですが、新苗は店頭で現物確認が絶対だと考えています。

新苗購入後は必ず植え替えをする

新苗を購入したら、すぐに6号鉢くらいの鉢に植え替えてください。

新苗の多くは、小さなビニールポットで販売されているので、根がポットの中で窮屈になっていますし、ビニールポットという状態も必要最低限の水分補給しかできません。

根が伸びるスペースが無いと健全に育ちませんので、早めに植え替えを行い、薔薇にとって快適な空間を提供してあげましょう。

私の経験上ですが、4月の新苗を植え替えで鉢増しをすると、薔薇が喜んで6月にはベーサルシュートを2, 3本出してくれる株が多いです。

薔薇は梅雨の時期位からベーサルシュートを多く出すので、4月に植え付けると、ちょうど5月後半から6月にかけて新しいベーサルシュートを伸ばしてくれます。

苗の植え付け写真

安心して栽培を始められる「大苗」

薔薇の大苗とは?新苗と何が違う?

大苗は新苗を鉢上げせず、そのまま1年間成長させた大人になった株のことを指します。

薔薇の専門業者が農園で1年間大切に育ててきた株なので、健全な株を購入することができます。大苗は業者が2年間育てた株になるので、別名「2年生苗」とも言われます。

2年経つと既に大人の株になるので、株自体が充実しており、初めての方でも安心して薔薇を始めることができます。

下の写真が大苗のポット売りの写真ですが、新苗に比べて立派な茶色い枝が何本も出ていることがわかります。これだけ太い枝になると、大きく立派な花を咲かせる能力がありますので、安心して栽培をスタートできるのです。

薔薇の大苗の写真

大苗の購入最適時期は12月!

大苗の流通時期は10月から2月の冬のシーズンになります。

これは、薔薇が休眠している時期に鉢上げし販売することで、薔薇の苗にダメージを与えることなく販売することができるためです。

大苗で購入した株も、購入時の小さなポットでは小さすぎます。購入後にポットから取り出すとわかるのですが、太く立派な根が小さなポットに押し込められている状態です。

そのため、購入後はなるべく早い段階で植え替えを行いましょう。

大苗は、遅くとも1月末までには植え替えを行います。

2月以降になると、薔薇の新芽が芽吹き始め活動が活発になります。そのため、その時期に植え替えを行うと、根や株にダメージが入ってしまいます。

3月や4月にも小さなポットで大苗を販売しているホームセンターを見かけますが、既に薔薇が活動を開始しており、植え替えをするのに不適切な時期を迎えてしまっています。

そのため、大苗は12月から1月の初旬にかけてに購入し、1月中には植え替えを行うようにします。鉢植えにする場合には、10号鉢では少し大きすぎるので、8号鉢くらいの大きさが目安になります。

大苗も確認すべき品質がたくさんある

大苗は新苗に比べると丈夫な株になるので、安心して購入してしまいがちですが、きちんと確認すべき品質が多くあります。

新苗よりは丈夫さを信頼して購入することができますが、以下の項目を必ず確認しておくことをお勧めします。

  • 太く丈夫な枝が2,3本あること。丈夫な枝は次の春に花を咲かせる大事な枝になります。複数あると花の数が多くなり、より薔薇を楽しむことができるのです。
  • 接ぎ木した部分が安定していること。新苗の項目でも書きましたが、接ぎ木部がしっかりしていることを確認してください。少し触ってみて、グラグラしておらず、きちんと木質化していればOKです。
  • 枝が枯れ込んでいないかを確認をする。たまに枝が黄色くなっている大苗がありますが、その枝は花を咲かすことができません。そのような株は病気を持っている可能性もありますし、避けてくこと方が賢明です。
  • 赤い新芽が膨らんでいると良い株の印です。赤い新芽は次の春に成長する大事な芽になります。その株が期待できる証拠になりますので必ずチェックしましょう。また、その赤い芽は触らないようにします。非常にもろく、取れてしまうと花枝が失われることになります。

薔薇の写真

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直ぐに薔薇を楽しめる開花株

一番贅沢な購入方法である「開花株」

開花株は、その名前の通り花が咲いている状態で販売されている薔薇の株になります。

薔薇を育てている人からすると、一番贅沢な状態で購入できる株になります。

薔薇は、花を咲かせるまでに様々な苦労が付き物ですが、その苦労をすっ飛ばして花を楽しむことができるのです。

また、花の形・色・匂いを全て確認して購入できるので、自分のイメージに合った株・品種を確実に選ぶことができます。しかし、株自体が大きくなってしまっているので、輸送費用もかかるため、新苗や大苗に比べると流通量が少ないです。開花株はインターネット販売が主流なのかなと思います。

価格も比較的高くなるので、街のホームセンターでもあまり見かけません。

私は、薔薇を開花株で購入することをお勧めしません。理由は下で記載する通りです。

開花株は薔薇の開花シーズンに購入する

開花株は春の開花シーズンから店頭に並びます。また、花が終わったものも店頭に並んでいることがあるので、正確に述べると春から秋まで購入することができます。

しかし、一番のベストシーズンは何と言っても春です。春の1番花は、年間を通じて薔薇の花が最も大きく、最も素晴らしい花を開花させる季節です。

最も美しい花を確認できる季節になりますので、開花株を購入される方は、必ず春に購入を検討しましょう。

また、開花株を確実に入手するためには、薔薇専門店に行くことをお勧めします。種類も豊富ですし、病害虫からの管理もしっかりしている信頼できるお店になります。

ピンク色の薔薇の花束

侮ってはいけない開花株の選び方

開花株は花が咲いていることが保証されていますが、花が終わった後も長く栽培を楽しむために確認しておくべき項目が多くあります。

以下のポイントは最低限チェックすべきポイントになりますので、しっかりと頭の中に入れておいてください。

  • 黒星病やうどんこ病を発症していないこと。これが基本です。病気の株を買って帰ると、栽培直後から苦労をすることになるので、健康な株を選びましょう。
  • 葉の数と葉の色を確認しましょう。健康な薔薇は、株元から蕾のある頂点まで葉が多く残っており、葉が鮮明な緑色をしています。葉の数が少ないものは、黒点病で葉を落とした履歴も疑われます。葉の数は薔薇のバロメータと言われるくらい大事なチェックポイントです。
  • 蕾の数を確認すること。購入後にしばらく花を楽しむために、蕾があるものを選びましょう。蕾が多いということは、それだけ株が充実し、花を咲かせる能力がある証拠です。
  • 可能であれば樹形のチェックをしましょう。片側にだけ枝が伸び、バランスが悪いものでないことや、枝の数が少なくスカスカの株でないこと等を確認してください。

私は新苗と大苗の両方で薔薇をスタートさせました

私自身、薔薇栽培を始めた時に初めて購入したのは大苗でした。

しかし、大苗を購入した直後に新苗も購入して、大苗と新苗の両方で薔薇栽培を始めました。

大苗の成長は非常に旺盛で、次々と太い枝を出し、花芽を上げていってくれるので安心して栽培を進めることができました。

新苗は、少し葉を落としてしまうと元気が無くなったり、元気がないはずなのに蕾を付けて体力を消耗したり…子供を育てているような気分です。

しかし、「手のかかる子ほど可愛い」という言い方があるように、お世話を必要とする薔薇の方が、愛着が湧き頑張って育てようという気になります。病気にしないために、初めて農薬のことを学び、害虫を駆除するために毎日のように株の様子を確認していたことを覚えています。

自分で経験したことは自然に身に付き、自分のレベルアップに本当に役立つことばかりでした。

今思えば、私の薔薇栽培の経験で、最も勉強になったのは、最初に買った大苗ではなく、初めて購入した新苗だったと思います。その新苗は「アイスバーグ」というとても有名な白い薔薇でした。

色・形ともにとても美しく、初めて花を咲かせたときのことは今でも覚えています。その株も今では立派に成長し、健全な株に育ったので、母へのプレゼントとして実家に置いてあります。

ピンク色の薔薇

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初心者こそ「新苗」でスタートすべき!?

私の経験から、開花株で薔薇を始めることはお勧めしません。

新苗や大苗で薔薇を始める場合、美しい花をたくさん咲かせることを目標に栽培を始めるので、様々なことを勉強して栽培を進められます。

病害虫からの防除や肥料、土選びまで、新苗と大苗は薔薇に関わるあらゆることを知識として吸収することができます。

開花株を買われる方も多いかと思いますが、花が終わると放置状態になってしまうことが多いです。玄関先で手入れがされておらず、購入当時の鉢植えのままで咲いている薔薇を見かけることがあります。

薔薇を美しく咲かせるには、知識と経験は必要です。

理想的ではないかもしれませんが、理想に近づける努力は必要です。経験に失敗は付き物ですが、薔薇は多少失敗をしてもやり直せますし、最低限の管理を忘れなければ枯れることはほとんどありません。

病気になったとしても、次の花期に向けて健気に新しい新芽を出そうと頑張ってくれます。

その失敗と成功を繰り返してこその薔薇の栽培だと思います。

自分の薔薇栽培技術を早く向上させるためにも、最も薔薇の成長を観察できる新苗からスタートさせてはいかがでしょうか?

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