2019年の春にロサ オリエンティスの木村 卓功さんが発表された薔薇「シャリマー」。
発表された翌年に我が家にもお迎えすることを考えておりましたが、苗が入手できないくらいの人気で、2020年には入手することができませんでした。
しかし、2021年春に我が家にも新苗でお迎えすることができ、その栽培をスタートさせました。
木村 卓功さんは「今後の薔薇は病気に強いことが必須であり、その新しい薔薇の時代が始まっている。」と述べられています。参照元リンク: 木村 卓功さんのブログ
薔薇を育てている自分からすると、病気に強い薔薇が多く発表されることは本当に嬉しい事です。薬剤の散布から解放されるだけでなく、新たに薔薇栽培に興味を持ってくれる方が増えてくれると思います。
今回紹介するシャリマーも、病気に強い薔薇として発表されました。
新苗は普段であれば7号鉢に植えて大事に育てるのですが、今回のシャリマーは新苗を雨ざらしの地植えにしてみようと思います。敢えて過酷な環境で新苗から育ててみます。
また、害虫対策の農薬 (オルトラン) は適宜使用しますが、病気を防ぐ農薬や治療薬は使わずに育てます。
さて、シャリマーの栽培で病気に強い薔薇の「新時代」を感じることができるのでしょうか?
シャリマーの新苗のお迎えと植え付け
まず最初に、シャリマーの新苗をお迎えした際の状態と、花壇への地植えの作業について紹介します。
2021年4月後半にシャリマーをお迎えしました
2021年4月の後半になりますが、シャリマーの新苗を入手することができました。
4月後半だったことも影響していますが、下の写真の様に、花が開花してしまっている新苗の状態です。また、咲きそうな蕾も2つほど見られました。
本来は、新苗は花を咲かせずに、株の成長を促進することが望ましいのですが、開花株の新苗だったので仕方無しです。
咲いている花は、春に発生したベーサルシュートの先端で房咲きになっている状態でした。
家に持って帰った段階で直ぐに花と残った蕾を切り落とし、地植えの準備を進めました。
シャリマーの新苗の植え付けについて (地植え)
シャリマーは上記の通り、鉢植えでは無く地植えで育てていくことにします。
ポットを触ると、根がしっかりと張っているためか、かなりポットが硬い状態でした。
実際にポットから抜いてみると、次の写真の様に、立派な根鉢が出来上がっていました。
これだけ根がびっしりと張っているのを見ると、早く植え替えないと生育に影響がでることが容易に想像できます。
我が家の花壇はあまり深く掘ることが難しいので、深さ30cm程度、縦横30cm程度の小さな穴を掘り、そこに薔薇用の培養土を敷き詰めて植えていきました。
今回はレイランディの木の株元に穴を掘って植え付けました。また、周囲にはクリスマスローズが植えてあります。
理想的には、もっと広い場所に植えたいのですが、限られたスペースで薔薇栽培をしているので仕方ないです…。
決して薔薇栽培に適した環境・花壇とは言えませんが、シャリマーはこのような環境の中でも成長してくれるのでしょうか?
引き続き、成長を観察していきます。
シャリマーの葉は艶が少ない
薔薇の栽培を趣味にされている方であれば、薔薇の葉の美しさも一つの楽しみ・鑑賞ポイントかと思います。
特に春の1番花が咲くシーズンは新しい葉がどんどん展開してくるため、艶のある葉を持つ品種は、株姿そのものが美しく見えるものです。
しかし、葉の艶が強い品種もあれば艶が少ない品種もあります。
シャリマーの葉の艶はどうなの?という観点で言うと、艶は少ない方だと思います。下の写真がシャリマーの葉の拡大写真ですが、艶が少ないことがおわかりいただけるかと思います。
下で紹介しますが、新しく出て来たベーサルシュートの葉もこのような特徴なので、葉に艶が少ないのが特徴の一つと言えそうです。
もしかしたら、成長の過程で艶が出てくるのかも?しれませんが、もし葉の特徴が変われば、あらためて記事の更新を行いたいと思います。
ベーサルシュートの発生と株の成長 (2021年5月中旬)
新苗で薔薇の栽培をスタートさせる醍醐味は、何と言っても5月から6月にかけてのベーサルシュートの発生です。
ここでは、シャリマーのベーサルシュートの発生とその成長過程について記載していきます。
地植えにした直後にベーサルシュートが発生!
植え付けを行ってから約10日後になりますが、何とベーサルシュートが発生してきました。
しかも、下の写真の黄色矢印で示す通り、3本のベーサルシュートが顔を出しています。
植え付けてから約10日という非常に短時間の間の変化ですが、小さなポットから地植えにした効果がもうすでに出ているということになりますね。
上で紹介した通り、新苗で購入した時点で、既に小さなポットでは根が窮屈な状態でした。
根がしっかりと張れるようになると、株は見違えるように成長をするのは分かっていましたが、ここまでダイナミックに違いが出てくると驚きです。
これはシャリマーの底力を見せつけられているかのようにも思えます。
この3本のベーサルシュートが全て元気に育つかはわかりません。中には顔を出しても成長を止めてしまうベーサルシュートもありますので…。
この3本のベーサルシュートが元気よく育つことを願うばかりです。
ベーサルシュートの成長と株姿の変化
ベーサルシュートは、発生すると凄い勢いで成長を遂げています。
下の写真がベーサルシュートを確認してから10日後 (植え付けから20日後) の様子ですが、既に20cmくらいの背丈になってきました。
私の経験上での話ですが、鉢植えの薔薇よりも地植えの薔薇の方がベーサルシュートの成長が速い様に思います。
もちろん品種に依存するところもあるのですが…
ただ、鉢に比べて根の成長が自由になるので、その分だけストレスなくベーサルシュートが成長できているのではないかなぁ…と思います。
ベーサルシュートが元気に成長した時点で、古くて弱りかけている葉や、出開きの状態の発芽部分は除去を行いました。
また、株全体の様子としては次の写真の通りです。
ベーサルシュートが成長したことで、株にボリュームが出てきた感じがわかります。
シャリマーの新芽やベーサルシュートの特徴として、葉の色は薄い黄緑色であることが挙げられますね。
薔薇の品種によっては、葉の色に赤みが強く最初から濃い色の葉を展開していくものがありますが、シャリマーの葉は生え始めた当初は黄緑色でだんだん深い緑になるような特徴と言う感じですね。
また、成長したベーサルシュートについては、小さな蕾が付いたことを確認した上で、下の写真の様に先端をピンチして成長を止めました。
発生したベーサルシュートについては、全てこの処理を施しています。
春から晩夏までは全ての蕾を摘心で除去
新苗の育成になりますので、基本的に夏剪定が完了するまでは花を咲かせないで株の成長に特化して栽培を行います。
シャリマーの新苗も、5月中旬以降は蕾がどんどん出てくるようになりますが、全ての蕾を摘心で除去して花を咲かせないように注意しました。
下の写真は5月後半に出て来たシャリマーの蕾ですが、これくらい小さい時に摘心で除去してしまいます。
上で紹介したベーサルシュートの蕾に加えて、既存の枝に付いた蕾も全て摘心です。
高温になる6月後半からは成長速度が鈍化?
シャリマーに限った事ではありませんが、多くの薔薇は日本の暑い夏には弱いです…。
毎年夏の時期になると、成長が大きく変化する品種が多いです。
シャリマーを地植えにした4月後半は、ベーサルシュートを多数出してくれてとても樹勢が強そうなイメージがありました。
しかし、6月中旬以降になると株の勢いが少し落ちて、新芽の成長もそこまで速いものでは無くなりました。
夏でも樹勢が強い薔薇であれば、赤い葉を伴って新芽が成長しますが、シャリマーは上の写真の通りで6月後半以降は新芽の成長数が少ないように感じました。
とはいえ、株を全体的に見ると、梅雨の時期であっても黒星病で黄色く変色する葉や、うどんこ病も全く出ていない状況ですので、特に心配はいらないかと思います。
8月後半の暑さで水切れ・夏バテ状態に…回復させる作業へ
一つ上で6月後半からは成長速度が少し遅くなるということを記載しましたが、その傾向は7月、8月も続きました。
私の住んでいる関西圏の市街地は、夏の暑さが厳しく、品種改良された現代の薔薇にとっても厳しい環境なのだと思います。
そんな中、8月の後半になりますが、少し水切れの状態と夏バテをしているような状態に陥ってしまいました。
次の写真に示す通り、株元付近の葉が水切れの症状で黄色く変色してしまっています。毎日、朝晩の水やりは欠かさず行っていましたが、地植えと言えど暑い夏の中で、土壌中の水分量が足りていなかったのだと思います。
黄色く変色してしまった葉は、基本的には光合成に寄与することはできず、近く枯れ落ちてしまう運命にあるので、この状況になったら除去してあげるのが最善策です。緑色で元気のある葉はなるべく残してあげます。
とはいえ、ここまで症状が厳しくなると、ほぼ全ての葉が無くなってしまうのが現実です。
このような場合には、葉を取り除いて様子を見るのではなく、思い切って株を一度リセットすることを考えることも一つの手です。
特に8月後半から9月前半は薔薇の夏剪定の時期に重なります。
夏剪定も意味も含めて、株を剪定してあげて、新しい新芽の発生を促進してあげることとしました。
次の写真が剪定後のシャリマーの様子です。
正直なところ、夏の終わりにこの状態になってしまうとは思ってもみませんでした。
しかし、薔薇はとても丈夫な植物なので心配は無用であると思います。
この剪定の後、肥料と活力剤を適宜使用して、株の新芽の成長を促していきます。
9月末には秋の開花準備が着々と進行中
夏バテと水切れにより大胆な夏剪定を行ったシャリマーですが、9月の中旬になると新芽を元気に伸ばして、葉の数も確実に多くなりました。
葉の全く無かった枝からも元気な新芽を伸ばし、夏バテしたことを忘れてしまうような状態になりました。
そして、9月の後半になりますが、新芽の先端に秋の開花に向けた蕾が形成されていることを確認しました。
まだまだ小さな蕾ですが、シャリマーの花を自分で咲かせるのは初めての事なので、無事に開花してくれることを祈るばかりです。
10月中旬に無事に秋のシャリマーが開花
10月中旬になりますが、シャリマーが無事に秋の開花を迎えました。
下の写真が最も速く開花した蕾になります。
シャリマーの特徴である、外側の花弁が白で内側がピンクの特徴がしっかりとでていますね!
しかし、春と比べると花の色に違いがあるように思います。
下の写真は、春の新苗の時に咲いたシャリマーと、秋のシャリマーを比較した写真になります。
春のシャリマーの方がより鮮やかなピンク色が出ているのに対して、秋のシャリマーは少しおとなしいピンク色になっています。
「薔薇は秋の開花時の方が色が落ち着いて味のある色になる」と言われますが、その通りかと思います。
また、花弁数を比較しても、春の方が花弁数が多いようです。
夏を乗り切った後の薔薇よりも、冬の休眠期に力を蓄えていた薔薇の方が、より大きな花弁数の多い花を咲かせるということですね。
シャリマーの冬剪定
さて、2022年1月になりますが冬剪定の季節となりました。
我が家で育てている薔薇達の剪定と共に、シャリマーも冬剪定を進めていきました。
ただ、昨年のシャリマーの育成がそこまで良くなかったので、剪定はあっという間に終わってしまいました。
今年の春以降にしっかりと太い枝を出してもらうため、細い枝は全て剪定で切り落とし、太い枝だけを3本残しました。
また、残した枝も、20cm未満になるところまで深く剪定して、根元付近から太い枝を出してもらうように調整しています。
株元には赤い新芽が出ていることも確認出来たので、今年の春以降の成長に期待ですね。
シャリマーに発生した病気・害虫の記録 (新苗栽培の1年目)
冒頭で述べたように、今回の記事のシャリマーは、殺菌剤を使わずに育てています。
使用したのは殺虫剤の「オルトラン」のみです。
シャリマーは病気に強い薔薇として発表をされた品種ですが、実際にどのくらいの頻度で、どの程度の病気が出たのでしょうか?
ここからは、シャリマーに発症した病気の詳細を紹介したいと思います。
ただし、私が育てた1株だけの結果ですので、御参考データとお考え下さい。
新苗植付け直後に株元の葉が黒星病を発症
まず最初に、植え付けから2週間ほど経過した時に、株元の葉が数枚だけ黒星病を発症しました (下の写真) 。
株元の少し古い葉ではあったのですが、黒星病によって葉が変色していることが分かるかと思います。
ただし、黒星病に罹患した株元の葉以外は全て健康的な緑色をしています。
薔薇の頂芽優勢の性質により、株元の葉は優先的に栄養分がもらえないため、葉の耐病性が落ちてしまったのだと思います。
少し心配な状況ではありましたが、この黒星病がこれ以上蔓延することはありませんでした。
この時は、黒星病の葉を全て取り除き、薬剤は散布せずに栽培の続行しています。
梅雨時期に一部の葉にハダニが発生 (記録として記載)
薔薇栽培では切っても切り離せない害虫「ハダニ」。
今回紹介しているシャリマーの株にも、6月中旬に一部の葉にハダニが発生しました。
しかし、大きな被害になることは無く、ハダニが発生して元気の無くなった葉だけを除去し、葉裏に水を散布することで対処ができました。
しかし、大きな被害になることは無く、ハダニが発生して元気の無くなった葉だけを除去し、葉裏に水を散布することで対処ができました。
ハダニに関しては、早期発見・早期対処が基本となるので、シャリマーに限らず全ての薔薇に対して定期的なチェックが必要となることは言うまでもありません。
この記事の終わりに
この記事では、2021年春に新苗でお迎えした「シャリマー」の栽培記録を紹介しました。
1年間の栽培を経て、シャリマーの花の素晴らしさと耐病性の高さは実感することが出来ました。
2年目以降は、さらに株が充実して花もシャリマーの持つ本来の形になってくると思います。
引き続き、お手入れとお世話を怠らず、シャリマーの育成を楽しんでいきたいと思います。
また、シャリマーについては引き続き殺菌剤の使用を控えて育ててく予定です。
今後、アップデートすべきことが出てきたら、随時記事を更新したいと思います。