ロサ オリエンティスの育種家・木村卓功さんの代表作の一つに「オデュッセイア(2013年作出)」があります。
半つる性の薔薇で、青みがかった深紅の花弁に素晴らしい香りが特徴の薔薇で、薔薇愛好家の方であれば知らない方はいないのではないかと言えるほど有名な品種です。
また、その花弁はフリルのように美しく波打つことも特徴で、特に大きく育ったオデュッセイアが壁一面に開花する姿は圧巻の一言です。
2023年の冬になりますが、そんなオデュッセイアの大苗を我が家にお迎えし、栽培をスタートさせることにしました。
本当は、つるを長く伸ばす栽培をしたいところですが、ベランダ栽培でスペースが非常に限られているため、10号鉢での栽培となります。記事内で紹介していきますが、オデュッセイアは10号鉢でベランダ栽培も可能な品種と言えます。
今後、オデュッセイアを栽培してみようとお考えの方に、少しでも参考になれば幸いです。
オデュッセイアの大苗を京都・松尾園芸さんで購入
毎年、大苗の時期になると京都の松尾園芸さんを訪れ、その年に育てる新たな株をお迎えしに行きます。
2023年は、オデュッセイアを購入することを決めたうえで訪れることとなりました。
松尾園芸さんに到着して薔薇苗のコーナーに行くと、いつもと変わらないすごい数の大苗 … 。
毎年思いますが、本当に驚かされます。
その大苗の中から、お目当てのオデュッセイアを発見!
どの大苗も太くて立派な枝が出ており、どれにしようか迷います…。
私が大苗を買う時に必ず見るのは、太くて丈夫な枝の数です。
太い枝が多い方が、その年の春に多くの立派な花を咲かせてくれる確率が高くなります。
複数ある大苗の中で、太い枝が3本出ている大苗に決定し購入して帰宅しました。
オデュッセイアを10号鉢に植え付け
さて、実際に購入したオデュッセイアの大苗が下の写真です。
上記の通り、太い枝が3本と少し細めの枝を1本持つ大苗です。
この大苗を、10号のプラスチック鉢に植え付けて育てていきます。
いつも通りのカインズホームさんのプラ鉢です。
使用した培養土は、松尾園芸さんが発売しているオリジナルの薔薇専用の土です。
通気性と排水性が良く、根がしっかりと張ってくれるのでお気に入りの商品です。
植え付け直後の状態が下の写真となります。
さぁ、今年一年、どんな成長を見せてくれるのでしょうか?
大苗を植え付けている時が、一番ワクワクする時間かもしれません。
春のオデュッセイアの成長と1番花の開花
さて、それでは春の一番花の開花までの様子を詳細に紹介していきます。
植え付けから約2か月後の様子 (2023年3月中旬)
植え付けから約2か月後の状態が次の写真となります。
無事に新芽が伸びておりますが、やはり頂芽優勢の性質が出ており、最も高い位置にある芽が最もよく成長していることがわかります。
葉の色は赤みを帯びており、艶はそれほど強くありません。
どちらかというと、マット感があるような質感の葉ですね。
また、葉の厚みは比較的薄いようなに感じました。春の風が吹くと、自分の棘で容易に葉が傷ついてしまいました。
4月中旬に1番花の蕾が大きく成長
4月の中旬になると、一番花の蕾が大きく膨らみ始めます。
下の写真が最もよく成長している枝に形成された蕾たちです。
複数の蕾がある場合、摘蕾した方が良いと思いますが、今回は初めての栽培ということで、摘蕾はせずに開花をさせてみようと思います。
一つの花枝に4つ~5つの蕾が芽を出しています。
また、最も成長した枝の長さですが、約70㎝程度ありました。
半つる性ですので、その特徴が出てきているのかと思われます。
4月後半に1番花の開花を迎える
ゴールデンウイークの直前になりますが、大きく膨らんだ一番花の蕾が開花の時を迎えました。
それと同時に、玄関前に素晴らしい香りが漂い始めます。
開花したことがすぐにわかるくらいの強い香りです。
青みがかったフリルの花弁が非常に美しい薔薇です。
また、数日後には最初に開花した花の周囲の蕾も開き始めて、房咲きになりました (次の写真) 。
また、開花した時の株全体を映した写真が次のものとなります。
花が重くて枝が垂れ下がってしまいましたので、支柱でサポートすることとしました。
残念ながら1年目の梅雨時期はベーサルシュートが発生せず…
一番花が咲いた後は、枝を約1/2のところで剪定して2番花の開花の準備をしました。
また、それに加えて、梅雨時期のベーサルシュートの発生を期待していました。
しかしながら、2023年の梅雨時期にはベーサルシュートが発生することはありませんでした。
かなり期待していたのでちょっと残念です。
ただ、夏以降もベーサルシュートが発生する可能性はあるので、気長に待つこととしました。
夏のオデュッセイアは樹勢が落ちる?
続いて、夏季のオデュッセイアの様子について、私の栽培経験で感じたことを紹介していきます。
オデュッセイアは夏に弱い品種なのではないかなぁ…と感じることが多々ありました。
7月初旬に2番花の開花
6月の梅雨の時期を経て、暑さが徐々に厳しくなってくる7月初旬に2番花のタイミングを迎えました。
他の薔薇たちは6月中に2番花を咲かせていたので、ちょっと遅い2番花の開花となりました。
下の写真が2番花の様子です。
春の1番花に比べて夏の2番花の特徴としては以下の点が挙げられます。
① 花弁の数が少し少ない
② 青みがかった色が少し抜けて深紅が強くなる
③ 香りが少し弱くなる
①と③は夏の薔薇にはよくあることなのですが、花弁の色の変化は想像よりも強かったです。
春は少し青みがあるような赤色をしていたのですが、その青色が完全になくなったような色です。
一般的な深紅の薔薇と変わらないような色です。
上で紹介している春の1番花の写真と比べていただけると違いがよくわかると思います。
最高気温35℃を超えると明確に樹勢が落ちる
2番花が終わり、30℃を超える暑さが続くと、オデュッセイアの成長に明確な変化が出てきました。
「成長が少し遅くなる」という特徴です。
言い換えると、樹勢が落ちたような状態になりました。
春の1番花の後は比較的早く2番花の新芽が出てきたのですが、2番花が終わった後は、8月になっても新芽の成長があまり進みませんでした。
そのため、7月後半から8月後半までは花を見る機会が無い状況でした。
他の薔薇は7月~8月は、あっという間に蕾が形成されて花が咲くのですが、我が家のオデュッセイアにはその様子が見られません。
もしかしたら、オデュッセイアは夏の暑さに敏感で、暑さにより成長力が下がるような特徴があるのかもしれませんね。
皆様の育てているオデュッセイアについて、夏の様子をコメント欄で教えていただけると幸いです。
秋のオデュッセイアは色に深みが出る
私の住む関西の市街地では、9月中旬に夏剪定を行ったところ、11月中旬に秋のオデュッセイアが開花しました。
オデュッセイアは春と夏で花の色が大きく変わりましたので、「秋のオデュッセイアはどうなんだろう?」という率直な疑問がありました。
実際に開花した秋のオデュッセイアが下の写真になります。
光の当たり具合によって見え方が異なりますが、秋は花の色が確実に濃くなって深みが増していました。深紅の赤色が、より濃い赤色になっています。
上で紹介している春と夏のオデュッセイアの写真を見ていただけば、その差は明らかだと思います。
春は青みがかった深紅のオデュッセイア、夏は少し鮮やかな深紅のオデュッセイア、秋は深紅の色が最も濃くなったオデュッセイアという感じです。
皆さんはどの季節のオデュッセイアが気に入りましたか?
個人的には秋のオデュッセイアも良いですが、春の青みがかった深紅のオデュッセイアが一番好きですね。
この青みがかった深紅はオデュッセイアの大きな特徴だと思います!
ただ、どの季節のオデュッセイアも「美しい」です。
また、秋のオデュッセイアの香りも気になるところですが、春には負けますが夏に比べると香りが復活していました!
オデュッセイアは病気に強い!(筆者の経験談)
さて、次にオデュッセイアの耐病性について記載したいと思います。
筆者の栽培環境下での経験になりますので、あくまでも御参考までに留めてください。
1年間オデュッセイアを育ててみましたが、病気の発生はほとんどありませんでした。
夏に少しだけ黒星病のような症状が株元に近い葉に出ましたが、葉を除去して様子をみていたら、特に再発することもなかったです。
薬剤は害虫対策のオルトラン (培養土に撒くタイプ) だけで、黒星病やうどん粉病を抑制する薬剤は一切使っていません。
ただ、1年を通じて直射日光がしっかりと当たる軒下で管理していましたので、雨に当たりにくく、それが病気を防いでくれた可能性もあります。また、肥料も必要最低限の量しか与えていなかったことも良かったのかもしれません。
これだけの耐病性があれば、初心者の方でも比較的楽に栽培を楽しめるのではないかと感じました。
耐病性に関しては、基本的にあまり手のかからない優秀な品種だと言えるかと。
オデュッセイアを上手に育てるコツはあるの?
「オデュッセイアを上手に育てるコツはあるのか?」
個人的に思うことは、基本的な薔薇の栽培方法を忠実に守っていれば特にコツは無いと思います。
一つ上の見出しで耐病性について記載しましたが、病気の発生も少ない品種でした。
唯一挙げるとしたら、「半つる性の特徴を、いかに制御するか?」だと思います。
(これはオデュッセイアに限ったことではなく、全ての半つる性の薔薇に言えることですね…。)
オデュッセイアは半つる性の薔薇のため、茎をのばそうと思ったら長く伸びます。
剪定しなければ、蔓のように茎が伸びていきます。
そのため、ベランダで栽培されている方や、玄関先で栽培される場合には、伸びる茎をいかに制御するかが重要になります。
適宜剪定すれば良いのですが、剪定を怠ると暴れるように成長します。
株を大きくしたくない場合、花が咲いたらしっかりと剪定し、不要な枝はカットするように心がけてください。
この記事の終わりに
この記事では、木村卓功さんの代表作である「オデュッセイア」の栽培記録を紹介させていただきました。
事前の情報通り、非常に美しい青みがかった深紅の薔薇で、耐病性や花数など、文句の付け所がありませんでした。
木村卓功さんの「シェエラザード」や「シャリマー」と同様に、とても育てやすい薔薇だと感じます!
深紅の薔薇は数多くありますが、花弁のフリルや色、そしてあの素晴らしい香りは「オデュッセイア」だけの特徴だと言えるので、まだ育てたことが無い方は次に育てる薔薇の候補にしてみてください!
さて、2024年の冬には、どの薔薇をお迎えしようか…
この記事を公開する2023年12月15日から悩み始めています。
それでは!