3月中旬になり春本番を迎えると、我が家で育てている多くの薔薇達からも、一番花の蕾が一斉に顔を出し始めました。
待ちに待った薔薇の一番花の季節がやってきたことを実感できる瞬間でもありますね!
樹勢の強い薔薇は既に大きく膨らんだ蕾を持ち、房咲きになる薔薇は頂点にたくさんの蕾が見え始めています。
薔薇は蕾を付けただけ花を咲かせようと頑張ってくれるのですが、実は蕾の量が多すぎて不具合が起こる場合があります。
昨年、私の家では「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」に、その不調が発生しました。
その不調とは、蕾の摘心を行わなかったことによるボーリング現象と花後に体力が一気に無くなったことです。
今年はその時も教訓を活かし、ルージュ・ピエールの摘心をしっかりと進めています。
この記事では、摘心をしないと不調が出てしまうと可能性がある薔薇の特徴や、今年のルージュ・ピエールの摘心の詳細を御紹介したいと思います。
ルージュ・ピエールの一番花後の不調と原因 (2020年の春)
昨年、我が家で育てている「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」を実験的に摘心をせずに育ててみました。
「ルージュ・ピエールは、摘心をしなかった場合に全ての蕾が咲くのだろうか?」という疑問があり、実際に確かめてみたんですね。
その結果としては、散々なものでした…。
蕾は開かないボーリング状態になり咲かない蕾が多く、花のサイズも小さくなり、花後には株が疲れて葉を落としてしまうという状況でした。
摘心しなかったことに、何一つとしてメリットがありませんでした。
その詳細は下の2つの記事で紹介をしておりますので、もしお時間あればご覧いただけましたら幸いです。
ルージュ・ピエールはボーリングしやすい薔薇であるという噂はあったのですが、これほどまでに顕著にボーリングの状態が出てくることは思いませんでした。
私が育てている他の薔薇の中にも、ボーリング状態になってしまったことがある薔薇もありますが、ルージュ・ピエールほど顕著では無いです。
ルージュ・ピエールは上記のリンクでも紹介していますが、花弁数が多く、咲かせるのに多くのエネルギーを要することがボーリングの原因だと思われます。
摘心をした方が良い薔薇の特徴について
私の経験の中での話ですが、ボーリングをしやすい薔薇の特徴は、次に挙げる点を全て満足する品種です。
① 蕾の数が多く房咲きになる品種
② 花のサイズが大輪の品種
③ 花弁数が多いもの (60~70枚以上)
①②③のそれぞれの項目に共通するのは、どれも咲かせるのに多くの養分・エネルギーを使うということです。
①は単純に花の数が多くなるので、養分・エネルギーが分散してしまい、開花に至らない蕾が出てしまうということです。
②は花のサイズが大輪であると、花を開かせるという行為自体にたくさんのエネルギーを必要とします。
③は花弁数が多くなると、一つの花を咲かせるのに多くの養分を使った上に、花を開かせるのにはさらに多くのエネルギーを必要とします。ルージュ・ピエールの場合、上で紹介した記事の中で花弁数を数えていますが、何と100枚の花弁で1つの花が形成されています。
これらに該当する品種を育てられている場合には、花を咲かせ過ぎないために、摘心を検討しながら栽培すると失敗が無いかと思います。
薔薇は頑張り屋さんなので、たくさんの花を咲かせようとするのですが、自分が光合成で得るエネルギーや根から吸い上げられる養分では賄えないくらいの蕾を付けてしまう事があります。
薔薇を栽培している私たちが、薔薇の活動を制限してあげるということになりますね。
ルージュ・ピエールは、①②③の特徴に完全に該当する品種となりますし、さらに「つる薔薇」に分類されるため、本当に多くの蕾を付けます。摘心をしないと負のループに陥ることとなります…。
今年は昨年の失敗を繰り返さないために、下で紹介するように、摘心をしっかりと進めています。
今年はルージュ・ピエールの摘心を実施!
2021年3月末になり、ルージュ・ピエールから今年の一番花の蕾たちが次々と顔を出し始めました。
摘心を行うタイミングですが、摘心は蕾が出てきたらなるべく速い段階で行うことをお勧めします。
蕾が大きく膨らんだ後に摘心をすると、それだけ余分な養分が使われてしまう事になるので、出来れば蕾が見え始めた時に摘心をする方が養分の無駄遣いになりません。
蕾の成長は、最初に作られた優勢な蕾から順に成長していくの、成長している蕾を残して後から出てくる小さな蕾を摘心するという方法で基本的には大丈夫です!
下の写真は今年のルージュ・ピエールの蕾でありますが、この写真を例に挙げてみたいと思います。
この枝からは、写真を撮影したタイミングで4つの蕾が見えております。
1番と記載した蕾が最もよく成長しており、1番の脇から2番と3番と記載した新しい蕾が出ています。
そして、4番は一つ低い分岐点から成長している蕾になります。
この様な蕾の場合には、1番と4番を残して2番と3番の蕾を摘心で除去してしまいます。
1番と4番が最も成長している蕾で、花芽の枝から優先的に養分を送ってもらっている蕾になります。
もう一枚、もう少し分かりやすい写真で紹介します。
この例では、最も成長している蕾が1番と記載したもので、その脇芽から2番の小さな蕾が発生しています。そして、一段下の分岐点から3番の蕾が成長しています。
大きさを考えると頂点に当たる1番が最も成長しており、次に3番の蕾が成長しています。よって、2番の小さな蕾を摘心で除去するようにします。
昨年のルージュ・ピエールの観察で分かったことなのですが、脇芽になっている2番の蕾は成長がかなり遅いです。そして、成長しても蕾は小さく、かつボーリングで開かなくなるものが多かったです。
そのため、優先的に成長している1番と一つ下の分岐点にある蕾以外は、全て摘心してしまっても良いのではないかと思うところもあります。
上記の摘心の方法は私の実践している方法なので、あくまでも御参考ということでお考え下さい。
摘心は一度では終わりません!適宜実施しましょう!
摘心の作業は、1日では終わりません。
薔薇を育てていらっしゃる方であれば分かると思うのですが、3月から4月は蕾が次々に形成されていきます。
そのため、2週間から3週間くらいは定期的に蕾の発生状況をチェックして、摘心の作業を行うことが必要になります。
成長が速い薔薇と成長がゆっくりな薔薇を比較すると、摘心を行うタイミングは少しずつズレてきますので、3月中旬から4月中旬くらいまでは摘心を行う期間となります。
残す蕾の量に目安はあるのか?
正直なところを言うと、栽培されている環境や品種によって、残しておく蕾の量は変わります。
そのため、どれだけ摘心して、どらだけ蕾を残しておけば良いかと言う目標を作るのは難しいです。
今回紹介したルージュ・ピエールですが、私の場合には、一つの枝に2つの蕾を残すようにしています。
太くて元気のありそうな枝には蕾を3個か4個残すこともありますが、基本的に一つの枝の蕾は2個に制限しています。
ただし、摘心をする蕾の最適数については、御自身で実験しながら確かめていくしかないと思います。
薔薇の栽培には、樹形、花の色、花弁数、育て方 (鉢植えか地植えか)、肥料の量など、様々な違いがあります。そのため、昨年の開花の様子を思い出しながら、蕾の量を調整してあげることが必要かと思います。
その意味で、薔薇は単に咲かせるのではなく、毎年しっかりと観察しながら育てる事で、次の年の開花レベルが決まるのだと言えますね。
この記事の終わりに
この記事では、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの実例を基にして、摘心の作業の重要性についてお話をさせていただきました。
薔薇は花をたくさん咲かせようとする努力家の植物なのですが、頑張り過ぎて自分の能力を顧みず蕾をたくさんつけてしまう品種があります。
そんな薔薇は摘心によって蕾の数を制限し、確実な開花と花後の不調を防止する対策が必要になります。
昨年の春の事を思い出してみて下さい。
「この薔薇は何故だか蕾が上手く開かないなぁ~」
「開花後に株が一気に疲れてしまっているなぁ…」
という症状が出ていませんでしたか?
その症状は、摘心で花の数を調整してあげるべきサインなのかもしれません。
薔薇はたくさんの花を咲かせてくれた方が嬉しいのですが、それは薔薇の株の体力とトレードオフの関係にあることを忘れてはいけないと思います。
蕾を取ることは心が痛むかもしれませんが、薔薇のためだと思って心を鬼にして実施してあげて下さい。