薔薇は初夏の2番花が終わると、7月には3番花の新芽が伸び始めます。
植物は休眠期を除いて、年間を通じて常に成長しようとするので、その勢いを止めることはできません。
2番花まで咲かせると、正直どの薔薇も体力が落ちてきており、夏の暑さも影響して薔薇の花の美しさが落ちてきます。
そのため、その疲れた株を回復させることを優先するため、夏にも芽かきを行って、成長の調整をしてあげるようにしています。
この記事では、薔薇の夏の芽かき作業について、少し詳細に紹介したいと思います。私は、7月18日の梅雨空の下で、夏の1回目の芽かき作業を終えてきました。
ただし、皆様自身のお考えや、薔薇の成長のさせ方も人それぞれですので、この記事は御参考程度にお考えいただけましたら幸いです。
2番花後の薔薇の状態(例)
毎度、お馴染みの我が家の「ガブリエル」ですが、成長が早く6月の中旬には2番花が咲き、その2番花の花摘みと軽い剪定を終わらせた状態です。
葉の数も多く、黒星病の兆候も見られない健康的な状態であるのですが、黄色の矢印を付けた部分を見てください。
次の新芽が出てくる位置に黄色の矢印を付けているのですが、とても細い枝の部分であることがわかります。これは2番花の後に、葉を多く残したかったので、そこまで深く剪定しなかったことが影響しています。
次に出てくる新しい枝がベーサルシュートであれば嬉しいのですが、基本的に頂芽優勢の性質がある限りは、必ず黄色の矢印の部分から新芽が芽吹いてきます。
この状態で放置しておけば、また1.5カ月後くらいに次の3番花を見ることが出来るとは思うのですが、この細い枝から咲いた薔薇は美しさと花の大きさに期待が持てません。
3番花の芽吹きの様子
上の写真を撮影してから1週間後には、下の写真に示すように、予想通りの位置から3番花に向けた新芽が伸びてきました。
黄色の矢印で示しますが、2番花を摘み取った位置のすぐ下から2つの新芽が伸びてきています。
このまま放置すれば、この2つの新芽がどんどん伸びてくるのですが、この細い枝から新芽が出てきても、それを支えるだけの力ありません。
良そうですが、このまま伸ばしたら、この枝が重さに耐えきれず枝が折れてしまう可能性が高いです。
また、下の写真では、同じ日に撮影咲いた別の位置の3番花の新芽も見てみます。
この位置の目も同じですね、2番花の終わったすぐ下から新しい芽が生えてきています。この枝も一つ上の写真の枝と同様に、成長してもらっても枝が折れてしまう可能性があるので、芽かきが必要です。
実際に、この目を手で摘んでしまった後の写真が次の写真です。手で簡単に取れるので、ハサミなどを使わずに作業可能です。
薔薇は葉の付け根の部分に3本の新芽を芽吹かせる能力があるので、1つを除去しても残った2本が伸びてくることもあります。その際には、伸びてきたら除去するようにしてあげればOKです。
夏の芽かきをしない方が良い薔薇について
夏の芽かきは、全ての薔薇に対して行う必要は無いと思っています。基本的には病気や害虫の被害に合っていない場合、そして四季咲きの薔薇と返り咲きの薔薇に対して行うようにしています。
春から夏にかけて、黒星病やうどんこ病、そして害虫による被害で葉の数が極端に少ない薔薇は、新芽を伸ばして葉の数を増やす必要があります。
日本では7月中旬の梅雨明け以降、強い日差しの中で薔薇は育つので、それに向けて株の回復をしていく必要があります。葉が無いと光合成が出来ませんし、秋の薔薇に向けた準備が上手く進みません。
そのため、葉の少ない薔薇は新芽をなるべく伸ばして、光合成を行う準備が出来るようにしてあげたほうが絶対に良いと思います。
また、一年に一度しか花を咲かせない一季咲きの薔薇は芽かきの必要は基本的には無いです。一季咲きはつる薔薇がほとんどだと思いますが、新しく出た新芽に来年の花を咲かせるのでその芽を伸ばしてあげる必要があります。つる薔薇の樹形を整えたいというような理由が無い限りは成長させておいて、冬の剪定で樹形や枝の整理をすることになるかと思います。
夏の芽かきを行うメリット
ベーサルシュートの発生を促進
最もベーサルシュートが出やすいのは6月の1番花の後くらいになりますが、夏の間はベーサルシュートが伸びてくる機会がまだ続きます。
ベーサルシュートが出てくるのは健康に育っている株であることが第一条件で、かつベーサルシュートを出すだけの樹勢のある株と言って良いかと思います。
新芽の成長、そして3番花に向けた花の準備が始まると、そちらに全ての養分を取られて行ってしまうのでベーサルシュートの発生に使うエネルギーが無くなります。
芽かきを行うことで、光合成で生成した養分をベーサルシュートの発生に使ってもらうように促すことができます。
太いサイドシュートの発生を促進
サイドシュートは、既存の枝の株元に近い部分から伸びてくる比較的太い新梢のことを言います。
(ベーサルシュートが株元の接ぎ木部分から出てくるのに対して、再度シュートは既存の枝から出てくる新梢になります。)
芽かきを行うと、薔薇の枝は成長点を失うことになりますので、次に芽吹かせることが出来る位置から新しい芽を出してきます。
下の図に示すように、一番上にある新芽を芽かきで除去すると、次には1段下の芽の位置から新芽が出てきます。これを繰り返して、株元に近い位置から新芽を芽吹かせてあげるという調整が可能です。全ての薔薇がこのようになってくれるかは自信が無い所ではありますが、このような性質はどの薔薇も大きく変わらないと思います。
株元に近くなるにつれて枝が太くなっていきますので、より丈夫な枝の発生に期待できますし、今年の秋以降の主力となる枝になる可能性もあります。
この芽かきが上手く行えると、秋以降には下に示すように、2本に分かれた両方の枝に薔薇の花を咲かせることができます。
これは思い通りに成長してくれた場合の理想的な例ですので、実際には少し異なった成長になる可能性もあります。
葉を失うことなく成長の調整ができる
成長の調整をしたいなら、剪定をしてしまえばいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、剪定を行うと、それは同時に多くの葉を失く事にもなるのです。
植物の成長や株の充実には光合成を行う葉が欠かせません。それは薔薇にとっても同じことです。
芽かきで新芽を除去するということは、既存の葉を失うことなく成長の調整ができるという利点があります。そのため、私は夏の時期はなるべく深い剪定は行わず、芽かきで成長の調整を行うようにしています。
夏に深い剪定をするのは、基本的に9月上旬の秋薔薇の開花調整に向けた剪定のみにしています。夏剪定については、また時期が来たら記事にしたいと思います。
この記事のおわりに
この記事では、夏の間の薔薇の管理の一つである「夏の芽かき」について記載させていただきました。
芽かきと言うと春先の1番花の芽を整理するようなイメージがあるかと思いますが、夏の成長の早い時期にもやっておいた方が好ましい作業となります。
来年以降の樹形、枝の数を決める大事な作業でもあるので、薔薇の株全体を見て調整してあげて下さいね。
夏は人間も薔薇も暑さに負けそうになる時期なので、薔薇にもあまり無理をさせず、秋に備えた管理を進めていくという観点でも重要かと考えています。
夏の暑い時期の作業になりますので、熱中症には注意して薔薇のお世話をしてあげて下さい。