近年の日本の気候で注目すべき変化は、何と言っても気温の上昇です。
夏は最高気温がどんどん上昇し、40℃を超える地域が出てくるのが当たり前になってきました。また、冬については、比較的暖かい暖冬となることも多くあります。
地球の気候変動や温暖化の影響で気候が変わってきていることは紛れもない事実かと思います。
薔薇の夏剪定を考えると、従来は夏剪定する場合には9月の前半には済ませましょうという目安があったかと思います。私も、薔薇を始めた時には9月の前半までに夏剪定しましょうと園芸雑誌で読んだことを今でも覚えています。しかし、気候の変動を考えると、9月の前半で本当に良いのでしょうか?
私個人としては、地球の気候変動の事を考えると、夏剪定の時期は9月前半から少し時期を遅らせるべきではないかと考えています。
この記事では、近年の薔薇の夏剪定時期について、気候変動の観点からあらためて考えてみたいと思います。
1990年と2019年の9月から10月の気温を比較
年々暑くなっている言われる日本の夏ですが、8月が暑いのは誰もが知るところですが、夏剪定を実際に行う9月の気温はいかがでしょうか?
実際にどのくらい暑くなっているのか?を知るために、気象庁のHPを利用させていただき、1990年と2019年の9月から10月の最高気温をグラフにしてみました。観測ポイントは私の住んでいる場所に近い大阪市です。
青色のグラフは1990年、オレンジ色のグラフが2019年のグラフになります。
あまり違っているようには思えないのですが、9月の最高気温の平均としては、1990年が29.7℃、2019年が31.2℃ということで、平均で1.5℃も気温が上昇しています。
また、10月の最高気温の平均を見てみると、1990年は22.9℃、2019年は24.8℃となり、こちらも1.9℃の温度上昇が見られています。
つまり、データで見ても年々気温が上昇していることがわかるかと思います。
特に、上のグラフで示した緑字のAという区間を見ていただくと、夏剪定を行って蕾のでき始めるような時期に気温が大きく上がっていることがわかります。また、その後の10月の後半に入ると1990年と2019年で気温の変化はあまり無いこともわかります。
つまり、夏の暑い時期が9月の後半まで尾を引いているような状態になっているんが見て取れます。このような気候を加味すると、9月の前半に剪定をするということが、秋の薔薇を美しく咲かせるのに、本当に適切なのか?という疑問が残ります。
いつまでも昔の気候、そして昔の夏剪定の考え方をしていてはいけないのではないでしょうか?と感じます。
気温が高いと想定外に早く花が咲いてしまう
気温が高いと薔薇の株は成長が非常に早く、蕾の形成から開花までに1か月を要さないことがあります。
特に剪定から開花までの期間が短い品種の薔薇は、7月から9月の間は剪定後に1カ月経たないうちに次の花が咲いてしまうこともあります。
また、夏の花は別の記事でも紹介していますが、とてもサイズが小さく、咲かせてもあまり綺麗なものではありません。
そのため、9月の早い時期に剪定をしてしまうと、気温が下がりきらない時期に剪定をすることになるため、秋の薔薇ではなく夏の名残が残った薔薇 (色が悪くサイズも小さい薔薇) が咲く可能性が高いです。
つまり、近年の夏剪定は気候変動の事を考えて、9月前半から少し遅らせることが望ましいのではないかと思います。
2019年の夏剪定と秋の開花までに要した時間
実際に私の育てている薔薇について、2019年の夏剪定の日から秋薔薇の開花までに要した時間について、各品種ごとに御紹介させていただきます。
昨年のデータではありますが、データの残っている品種を幾つか紹介します。以下の日数は、夏剪定から最初の秋薔薇が咲いた日までの日数になります。
①ブルームーン…32日
②ジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコ…26日
③アントワーヌ・デュシェ…38日
④ミニ薔薇のノヴァ…31日
よく、薔薇の開花までの期間は平均で剪定後45日前後という話もありますが、そんなことは無い…夏の薔薇は30日前後で咲いてしまいます。
2019年は9月第一週目に全ての薔薇を夏剪定しましたので、10月の前半には秋の薔薇が全て咲き揃っているような状態になります。
ただ、あらためて上で紹介した気温のグラフを見て下さい。2019年の10月前半の最高気温は、まだ30℃近くまで上がっている状態なんですよ。
つまり、春の薔薇の様にじっくり成長するのではなく、剪定後の多くの時間を最高気温が30℃以上ある中で育ってしまっているわけです。
そのため、薔薇の花のサイズも夏薔薇よりも、ちょっとだけ大きいくらいのサイズにしかなりませんでした。色については、深みのある秋の薔薇と言うものでは無かったです。
そのため「夏剪定の時期を間違えた…。」と感じたことを今でも覚えています。
実は秋には10月前半の開花の後、11月の中旬にも開花を迎えたのですが、その薔薇の方が色が美しかったことを今でも覚えています。
温暖地では9月の2週目から3週目くらいが夏剪定に最適では?
私が読んだことのある薔薇の本には、「夏剪定は9月前半に済ませましょう」「夏剪定は遅くとも9月2周目まで」という記載がありました。
しかし、年々気温が上がっている日本では、9月前半では早すぎると思います。
勿論、北海道、東北地方、北関東などの比較的温度の下がりやすい地域にお住まいの方は、9月前半でも十分に気温が下がっているので、従来通りで問題は無いかもしれません。
また、10月の前半には必ず咲かせたいという希望がある場合にも、9月前半に夏剪定してしまっても良いかと思います。
しかし、温暖な地域で年々気温が上がっている場所では、9月の夏剪定の時期を見直す必要があると思います。
平均気温で20年前と比べて1℃以上も上がっている現代の日本ですので、9月の夏剪定は9月2周目から3週目くらいにずらして実施することが良いのではないかと思います。
9月の暑い時期で平均気温で約1℃下がるためには、10日から2週間程度は季節が進む必要があるかと思います。
私自身、2020年の夏剪定は9月の第2周目から第3週目くらいかけて実施してみようかと思っています。2020年の夏剪定の実施については、あらためて記事を更新したいと思います。
この記事の終わりに
この記事では、夏剪定の適切な時期について、近年の日本の気候変化を考慮してあらためて考えてみました。
従来は9月の前半には夏剪定を済ませるということが定説の様に言われてきていたかと思いますが、近年は20年前に比べて最高気温が平均で1℃以上上昇しています。
つまり、夏剪定をしても暑い時期に薔薇が育つため、奥深い秋の薔薇がじっくり育つことが出来ない環境になっていると言えるかと思います。特に都市部で気温の上昇が大きな地域では、その傾向が強いかと思われます。
今年も夏剪定の時期がやって来ます。薔薇を楽しまれている皆様は、昨年の夏剪定から秋薔薇の開花までの事を思い出して、あらためて夏剪定の最適な時期を考えてみてはいかがでしょうか?