薔薇を楽しんでいる方の一つのお悩みに、薬剤による薬害があるのではないでしょうか?
規定量の濃度を守ったのに薬害が出てしまった…という話は良くある話です。
私自身も初めて薬剤を使用した時、葉が縮れる薬害が発生してしまい困ったことを今でも記憶しています。それ以来、自分の薔薇栽培の中で薬害を出さない方法を自分なりに工夫してきました。
今回の記事は、薔薇の薬害にお悩みの方にお役に立てるように、私の実践している薬剤散布の方法を紹介していきたいと思います。
私が実践している薬剤散布のポイントは、薔薇の年齢ごとに薬剤散布の方法を変えること、そして葉の上に長時間薬剤を残さないようにすることです。
以下で、その詳細を記していきたいと思います。
【2021年11月18日追記】この記事は、2020年以前、私が農薬を積極的に使って薔薇栽培を行っていた時の事実を基にした記事となります。2021年は殺菌剤を使わない薔薇栽培を心掛け、実際に良い結果を得ることもできています(下のリンクを参照ください)。
この記事の背景 -私も薬害経験者-
何も隠すことなくお話しますが、私も薬剤による薬害に悩まされた一人です。
薔薇栽培を始めた当初は、参考書やインターネット上の情報を基にして、薬剤の散布方法を学び、薬剤ごとに決められた規定濃度を厳密に守って散布をしていました。
しかし、初めて薬剤 (ダコニール) を散布した次に日に薬害がでました。
人生で最初に買った薔薇の一つにイングリッドバークマンという深紅の薔薇で、薔薇の殿堂にも選ばれている丈夫で強い薔薇です。その薔薇にダコニールを規定濃度で散布したところ、翌日に葉の色が変色して縮れていました。
当時は「薬害」というものの存在を知らず、何が起きたのか全く分からない状況に陥り、各種情報を集めて勉強を始めました。
この経験が私の薬害との闘い、そして上手な薬剤散布の学びの原点です。
薔薇に薬剤は必要なの?
「薔薇に薬剤は必要なのでしょうか?」という質問をされたら、私は基本的に「ある程度は必要です。使用することをおすすめします。」と答えます。
こんなことを記事に書いたら、有機農法・無農薬栽培をされている方々に怒られてしまうかもしれませんが、私は正直に記載します。
薔薇の健康のバロメータ、そして健康な花を咲かせる秘訣は、何と言っても丈夫で健康的な葉とその葉による光合成です。
葉が全くない薔薇も茎や少ない葉を使って花を咲かせますが、花数は圧倒的に少ないです。
その葉を確実に守るためには、適切な量の薬剤は必要です。
殺菌剤を使っても黒星病やうどんこ病は避けられない場合もありますが、虫による葉の食害は殺虫剤で高確率に防ぐことができます。
玄関前に置いてある、御自宅のシンボルローズに虫が湧いていて葉がボロボロだったり、葉が黄色く変色して見た目が悪かったら…ちょっと自慢の薔薇とは言えませんよね?
私だったら、そうなってしまったら玄関以外の隠れた場所で再起を願いながら栽培します。
そうならないためにも、薬剤との上手な付き合いをしていきましょう。
育てている薔薇の薬害が出た葉
実際に薬害が出てしまった葉の写真も掲載しておきます。
これは、3年目のピエール ドゥ ロンサールに1,000倍希釈のダコニールを散布した2日後に出てきた症状です。
葉の先が変色し、葉が縮れてしまっていることがわかります。
この葉は、既に元気が無く枯れ落ちるものなので、放置しておくと各種病気の原因になり得ます。ですので、薬害が出てしまった葉は、私は切り落とすようにしています。
5枚葉のうち2枚が薬害を受けたら、薬害を受けた葉だけを切り落とすと、葉の数を維持できます。
「病害虫に強い」はミスリーディング
薔薇販売のHP等を見ると「最近の薔薇は病害虫に強い」というキャッチフレーズがよく見られます。
しかし、この記載は私個人としては、間違っているのでは?と思っています。
確かに、黒星病やうどんこ病と言われる、薔薇の「病気」には罹りづらくなっていることは確かです。そこは私も同意です!
しかし、「害虫に強いか?」と言われるとそれは違います。
アブラムシやヨトウムシ等の害虫は薬剤を使わない限り、確実に薔薇の葉を食べていきます。薔薇の葉は害虫に大人気ですので…。
もし、薔薇の葉が害虫を寄せ付けない匂いや成分を発するのであれば、害虫にも強いというのは分かります。しかし、そんな薔薇は見たことも聞いたこともありません。
最近の強い薔薇と言えど、害虫の被害を無くすためにはオルトランなどの殺虫剤の使用は必須です。
「病害虫に強い=何もしなくて良い」ではないのです。
私が実践している薬害を出さない薬剤の散布
ここからは、私が実践している薬害を出さない薬剤散布の方法を御紹介します。
私は、薬剤を全ての薔薇に同じように散布をすることしていません。
薔薇や新梢にも「年齢」があり、それぞれに適した薬剤散布の方法は変わってきます。
子供用の薬と大人用の薬がありますよね? 薔薇も同じだと考えます。
面倒くさい気もしますが、薬害を出さないためには、薔薇の成長具合によって薬剤の使用方法を分けて使う方法がベストです。
私はこの方法を取り入れて、薬害の頻度が一気に改善しました。
新苗とベーサルシュートに対する薬剤散布
新苗は皆さんが御存じの通り、もっとも若い苗で、いわば薔薇の子供のような存在です。
また、ベーサルシュートは、薔薇の根元から新しく発生した新梢で、将来のその株の花を担う大事な存在です。
私個人としては、この2つについては、最も薬害に気を遣います。
例えば、黒星病の予防に有効なダコニールという農薬があります。その使用濃度は、説明書通りにすると1,000倍希釈となります。皆さんは、新苗やベーサルシュートに対して、そのまま1,000倍で使いますか?
私の経験上ですが、新苗とベーサルシュートについては、規定濃度の1,000倍では薬害が出やすいです。
薔薇の子供の苗・新梢に、成木と同じ濃度で薬剤を散布したら…言い換えれば、子供に大人用の薬を飲ませたら…という考え方です。
新苗とベーサルシュートに薬剤を使用する際には、規定数量以上に薄めたものから慣れさせることが望ましいです。
私の散布方法ですが、黒星病予防に有名なダコニールを新苗やベーサルシュートに「初めて」使う場合、1,500倍に薄めて使います。
そして、2回目の時には1,000倍希釈で散布します。
薬剤に慣れさせてあげるために、規定量よりも薄くすることが必要だと考えています。
また、下の2年目以降の薔薇への薬剤散布でも紹介します、サッと少量を散布することや長時間、薬剤を葉に残さないことが大切です。
2年生大苗や3年目以上の薔薇の薬剤散布
2年生大苗や、既にご自宅にある3年目以上の薔薇であれば、ある程度の薬剤への耐性は付いていると考えています。
しかしながら、成長した薔薇であっても薬害は出ます。
上で紹介した「薬害の出た葉の例」は3年目のピエールに、規定量である1,000倍希釈のダコニールを散布したものでした
この薬害が一番悩ましい所です。どうやって防いだら良いか、悩みました。
私が実践して、薬害が減った方法は、
「なるべく霧状になる噴霧器を用いて、サッと葉裏が湿るくらいに散布する。そして、葉の表面に薬剤を長時間残さない。」
という方法です。
薬剤を散布する時、葉にボタボタと薬液が葉の上に残るように大量に散布されていませんか?
私は、その原因が葉に残った薬剤が薬害の原因ではないかと考えました。理由は次の通りです。
薬剤の散布が終わった時は、葉の上に残る薬剤は1,000倍希釈です。
しかし、薬剤が乾いてくると、水分だけが蒸発するため葉の上に残った薬剤の農薬濃度は濃くなります。例えば、15分後には中央の絵の様に700倍になってしまいます。さらに水分蒸発が続くと、どんどん薬剤の濃度が濃くなり、規定の濃度以上になることは確実です。
最終的に葉が乾く時、農薬の濃度がどのくらいになっているかわかりませんが、葉の上に長時間薬剤が残ることは、薬剤の濃度的に好ましい状態と言えません。
私はこの状態を防ぐために、薬剤散布が終わってから10分後くらいに、葉の表面に残っている葉を枝を揺らして落としてあげています。
少し面倒な作業ですが、これを実践したことで、薬害の出る葉が確実に減りました。
薬害が出るは、葉の先が多くないですか?薬剤を散布すると、葉の先に薬剤が残る傾向が強いです。つまり、気づかないうちに薬害が出やすい状態を作ってしまっているのです。
私がこの方法に気付いたのは薔薇を始めて2年目の事ですが、薬害の頻度は確実に減っています。どれくらい減ったか?という定量的なデータが無くてすいません。
薬剤準備と散布の方法を順を追って説明
上の記載で、新苗やベーサルシュート、そして2年目以降の薔薇に対しては薬剤の希釈濃度を変えたほうが良いということをお話させていただきました。
ただ、倍率を変えた薬剤を作り直して散布するのは面倒ですよね。
その面倒さを解決するために、最初に1,000倍希釈の薬剤を用意して2年以上栽培している薔薇に散布し、その後で若い苗・ベーサルシュートのために薬液に水を追加するという方法がお勧めです。
図で示した方が分かりやすいので、下に図を用意ししました。例として、3Lの薬剤を準備するバージョンです。
まず、希釈率1,000倍の薬液を3L作ります。それを2年以上栽培している「大人の薔薇」に散布します。そして、残りが1Lくらいになったら0.5Lの水を薬液に追加して希釈します。これにより1,500倍になります。この1,500倍になった薬液をベーサルシュートや新苗に散布するのです。
薔薇の苗の数によって必要な薬剤の量は変わりますので、ご自身の環境に合わせて作る量は調整してくださいね。
散布が完了した後は、なるべく葉の表面に薬剤が残らないように、軽く枝を揺らして薬剤を落としてあげて下さい。
私の栽培環境では、この方法にしたことで薬害を減らすことができました。もしかしたら、皆様の栽培環境では効果が出にくい可能性もありますが、薬害に本当に困っている時には参考にしてみて下さい。
この記事のまとめ
薔薇栽培は薬剤散布との付き合いになるということは、昔から変わらない事実だと考えます。
近年発表されている薔薇は、確かに耐病性は高いのですが、害虫に強いという薔薇は存在しません。必ず害虫には狙われるので、少なくとも殺虫剤は必須と考え提案す。
薔薇を育てている方は、多くの方が「綺麗な花を咲かせたい」という目標で栽培をされているものと思います。そのためには「葉」の保護は絶対に必要です。
この記事では、薬害を出さないために私が実践している薬剤散布の方法を御紹介させていただきました。ポイントとなるのは以下の2点です。
①薔薇の年齢や枝の年齢に合わせて薬剤の濃度を調整すること
②薬剤を葉の上に長時間残さないようにすること
「年間を通じて3輪か4輪くらい咲けばいいよ」という方であれば、薬剤散布は必要ないと思いますが、この記事をクリックして読んで下さっている方は、たくさんの花が咲いて欲しいと願う方が多いと思います。
薬剤の散布は面倒な作業でばありますが、薬剤散布しなかったことによる弊害を悔やむよりも、薬剤散布したことで綺麗な薔薇を咲かせる方が私は良いです。
今後は、病気に強い薔薇が多く作出されるかと思いますので、薔薇の栽培は害虫との戦いだけになるのかもしれません。
正しい散布と薬剤との付き合い方を心掛け、薔薇を楽しんでいきましょう!