熱帯夜が始まり、朝から晩まで気温が高い梅雨明けの時期から8月の終わり…。
人間にとっても本当に厳しい季節ですが、それは薔薇にとっても同じです。
人間が夏バテするように、栄養分が少なかったり水切れを起こしかけてしまった薔薇は葉が黄色くなったり、落葉して元気が無い状態になってしまいます。
しかし、夏の季節は秋薔薇の開花に向けた準備期間でもあるので、葉を多く残し養分を蓄え、ベーサルシュートやサイドシュートを出して株を充実させる大切な時期です。
この記事では、薔薇の夏バテによる落葉を防ぐ一つの方法として、葉への液肥・活力剤の散布を紹介します。
夏バテの症状は葉に出やすい
夏バテをして元気が無くなったり、水切れを起こして体内の水分が少なくなってしまった薔薇、また栄養が足りていない薔薇の夏バテ症状は、多くの場合には葉に症状が出てきやすいです。
例えば下の写真に示すように、2番花を咲かせた後に疲れが出てしまった薔薇の中には、葉の色が鮮やかな黄色に変色してしまうものがあります。
1番花、そして2番花と頑張って咲かせてくれた鉢植えの薔薇ですが、2番花が終わった後に、疲れ果てて夏の暑さもあり葉が黄色くなってしまいました。
ハダニが付いてしまったように見えますが、この薔薇にはハダニは付いていません。
単純に葉に元気が無くなり、葉が落ちる寸前になってしまっています。
夏バテをしたり開花によって体力を使いすぎた時、必ず葉の状態から変化が始まります。枝は基本的に緑色をしており、枝に影響が出ても気付きにくいです。
基本的には植物は無くなっても問題ない部分から影響が出始めるので、葉に最初の症状が出てくるのです。
一番大事なものが根と株元、次に丈夫な茎、最後が葉という順番ですね。葉は茎が残っていれば新芽を使って再生できますので、少し落葉しても植物の生命に直ちに危機が訪れる訳ではありません。
夏バテした葉は病気になりやすい
夏バテして黄色く変色してしまった葉は、とても耐病性が落ちている状態になります。
そのため、黒星病に罹りやすい状態であると言っても過言ではありません。
黒星病に罹りやすい葉と言うのは、高い位置にある葉ではなく、地面に近い葉になります。これは、薔薇の頂芽優勢の性質で、高い位置に葉は優先的に養分をもらえるので、葉自体に耐病性があり丈夫な葉になることができます。
しかし、地面に近い葉は優先的に養分がもらえないので耐病性が落ち、黒星病に罹りやすくなります。もちろん、地面に近い方がカビの胞子が地面から飛んできやすいというのもありますが…。
夏バテをした葉というのは、株元に近い葉と同様に栄養分が足りず元気のない葉になります。それは言い換えれば、病気に弱い葉になるのです。
ただし、私の経験上ですが、夏バテして色が少し変色しているような葉は、うどんこ病に罹ったことがないです。うどんこ病は窒素分が多いような場所に出やすいと聞きますので、夏バテした葉はそもそも養分の窒素も少ないためだと思います。
元気のない葉はハダニの格好の餌食に
夏バテして元気のない葉…ハダニの格好の餌食になります。
マンションの高層階や風通しの悪い場所で薔薇を栽培されている方は、ハダニの被害に悩む方も多いかと思います。
ハダニは元気が無く弱ってしまった地面に近い位置の葉に発生しやすいです。
ハダニは薔薇の株の高い位置から発生するのではなく、必ずと言っていいほど地面に近い位置から増殖していきます。
株元の葉から養分を吸い取り切ったら一段上の葉に移動して…と言うことを繰り返しながら増殖して株全体が被害を受けることになります。
そのため、ハダニ発生の起点となる元気のない葉が出ないように管理する努力が必要です。
したがって、耐病性そしてハダニの抑制の両方の観点から夏バテしてしまう葉を無くさないといけないのですね…。
葉に直接養分を与えて英気を養う
薔薇の栄養となる養分は、基本的には根から吸収されるのですが、実は葉も呼吸をしていたり、水分を吸収するので、葉に直接養分を与えることもできます。
葉が弱っているのであれば、根から養分を吸い上げるのではなく、直接葉に栄養を与えることも効果的な方法だと思っています。
下に紹介する液肥や活力剤を霧吹きで散布するという方法が効果的です。
液肥を混ぜた水を葉に散布
まず最初の手段としては、定期的に葉の表と裏に液肥を混ぜた水を散布することが効果的です。
液肥は規定の希釈量で散布すると濃すぎるので、規定用料理もさらに3倍くらいに薄めて散布する必要があります。
この方法により、葉の構成に必要な窒素元素も直接葉に供給できるので、根から吸収するよりも効率よく栄養分を与えることもできます。
活力剤や木酢酢を混ぜた水を葉に散布
植物に必要な微量元素が入っている活力剤や葉や根を元気に育てる効果のある木酢酢の併用も効果的です。
活性剤については、液肥と同様に規定量以上に希釈する必要があります。
また、木酢酢については酸性の液体のため、高い濃度で散布すると酸によって薬害が出てしまう可能性もあるので、かなり薄めに希釈して散布する必要があります。木酢酢については、葉に散布する希釈倍率が記載されているものが多いので、それを参考にすればOKです。
木酢酢は独特な匂いがあるので、この臭いが苦手な方は散布を控える方が良いです。散布すると花壇やお庭、そしてベランダなどに数日間は木酢酢の臭いが残ることになります。その臭いは防虫効果もあるのですが、苦手な方も多い臭いなので注意してください。
葉裏への水の散布はハダニ防止にも役立つ
上で紹介した液肥や活力剤の葉への散布は、基本的に両面に行うことが効果的となりますが、葉裏へ散布することでハダニの抑制にも効果があります。
ハダニは葉の裏側に生息するダニになるので、葉の裏を濡らしてあげてハダニが住みにくい環境にしたり、水分で窒息死させることもできます。
病気を抑制する薬剤を葉の裏をメインに散布するのと同じように、葉裏へ液肥入りの水を散布してあげてください。
葉水頻度は最低限とし葉を濡らしすぎないこと!
ただし、葉への水の散布は注意も必ず必要ですし、知っておくべきことがあります。
葉を濡らしすぎると、皆さんも御存じの通り、葉が黒星病に罹りやすくなります。しっかりと葉に養分を吸収させてあげたいと思ったり、夏の暑い日の夕方に水をかけて冷やしてあげたいという気分になるかもしれません。
しかし、夏の暑い時期に葉が長時間湿っている状態は、黒星病への罹患の観点で危険な時間が続くことになります。
そのため、葉への水の散布で濡らしすぎて、いつまでも葉の上に水分が残るような状況は避けることが大切です。あくまでも葉が少し湿ってくれる程度の散布が基本です。私も大量に水を与えず、さっと葉が湿るくらいの量を心掛けています。霧吹きでワンプッシュしてあげて葉が湿るくらいが丁度良いです。
また、葉が夏バテ知らずで元気な状態だったり、ハダニを抑制できている栽培環境の場合には、基本的に葉水散布は不要だと思います。
ただ、暑い日が続く場合、夕方にさっと軽く水を散布してあげるくらいであれば、クールダウンに効果的だと思います。
肥料切れを確実に防止することが重要
葉への直接の養分補給も大事なのですが、基本的には根を介して養分を補給することが基本です。
土の上への置き肥や液体肥料を混ぜた水やりで、きちんと養分を補給で切れいれば、理想的には葉水での養分補給は不要だと思います。
しかし、夏バテによって根の調子が悪い飼ったりすると、養分を吸い上げる効率が下がってしまうこともあるので、心配になる方は調子を見ながら散布を実施すると夏バテの予防としての効果を発揮してくれることを期待できます。
私自身ですが、梅雨が明けてから9月の夏剪定の時期まで、10日に1度の頻度で、葉水を与える時に液肥や活力剤を併用しています。
それでも完全に夏バテを防げていないので、少し説得力の無い記事なのかもしれませんが…(笑)
夏バテの防止は秋の薔薇を楽しむ出発点
夏バテを防ぎ、夏の間も元気で青々とした葉を維持する。
これは薔薇の栽培で一番難易度の高い管理だと思っています。
梅雨時期から8月後半までは黒星病が本当に出やすいですし、害虫も大量に発生するので葉が食害に合う機会も多くなります。
しかし、秋に咲く味わい深い薔薇を楽しむためには、葉を多く残して光合成を行い株自体を充実させることが本当に大切になります。
葉が無くなり丸坊主の株では、秋の開花維時に花数も少ないですし色も秋らしい色が出なくなってしまいます。
春の1番花を綺麗に咲かせるには「剪定」「寒肥」「芽かき」がとても重要になりますが、秋の薔薇を楽しむのに最も重要なのは「夏の間の葉の保護」だと思います。
春は雨も湿度も少ないですし、害虫も数が多くないので、相当なことが無い限りは美しい花が咲きます。しかし、秋に綺麗に咲かせるのは管理する方の腕にかかっていると言っても過言ではないと思います。
この記事のまとめ
夏の薔薇の管理は本当に手が掛かりますし大変です。薔薇の栽培を趣味にしてから、毎年の様にそう思います。
夏の期間の管理とお世話が楽になったら、薔薇栽培の難易度は本当に下がるのに…と思ったことが何度あることか…。
しかし、秋の味わい深い薔薇を堪能するためには、夏の間の管理は必須の作業で、夏にこそ栽培家の方の実力が出てくのではないかと思います。
秋薔薇を1輪でも多く咲かせる、秋薔薇をよりシックな趣のある色に仕上げるために、夏の間の管理に一工夫してみてはいかがでしょうか!?