クレマチスの植替え方法を実例で紹介 -根の扱いに注意-

薔薇やクリスマスローズに並んで、平成から令和の園芸を盛り上げてくれた園芸品種の一つが「クレマチス」です。

薔薇には無い青い色の花や、ベル状の花を咲かせる品種もあることから、庭や花壇にアクセントとして導入された方もいらっしゃるのではないでしょうか?

もちろん、脇役だけではなく、大きな花を咲かせる品種は、花壇のメインとして取り入れることも可能です。

そんなクレマチスですが、2月か3月頃にかけて店頭に多くの苗が並びます。そして、庭上や鉢植えで栽培をスタートさせることになりますが、最初に行うべきは植え替え・植え付けになります。

販売用の小さなポットでは、根を健全に伸ばせませんので、今後の成長のためにも、お気に入りの鉢への植え替えや花壇への植え付けを行ってあげる必要があります。

この記事では、クレマチスの植替え方法について、根の取り扱いやその手順に焦点を当てて紹介したいと思います。


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クレマチスの植え付けの最適期は冬から初春

私の住む関西圏での話ですが、クレマチスの苗は早ければ晩秋から店頭に並びますが、多くの場合2月から3月くらいが最も品種が揃う時期となります。

店頭に並ぶ時期は、地域によっても変わると思いますので、園芸店さんにお問い合わせいただくと確実かと思います。

人気の品種から売切れていきますので、確実に確保するためには予約が必須ですね!

クレマチスは冬になると休眠期に入りますので、生産者さんの所で掘り上げられた苗が小さなポットに入れられて初春に店頭に並びます。

そのため、クレマチスの植え付けや植え替えの最適期は2月から3月になります。私も今までに家にお迎えしたクレマチスは、全て2月に購入した苗でした。そして、3月の初旬には植え替えを完了させています。

春以降にもクレマチスが店頭に並びますが、基本的に開花株になっており、株が活動期・成長期に入っている状態になります。そのため、活動期のクレマチスの植替えについては、下で説明するように根を崩す作業は行わず、根鉢を崩さないように植え替えることが基本となります。

この記事では、2月から3月初旬にかけて行う、休眠期のクレマチスの植替え・植付けについて紹介していきたいと思います。

クレマチスの根は直根であることに注意

まず最初に、クレマチスの植替えに関わる「根」のお話をしたいと思います。

クレマチスの直根について

クレマチスは、クリスマスローズと同じで「キンポウゲ科」の植物となります。

クリスマスローズを育てたことがある方は、根を見たことがあるかと思うのですが、下の図の様に根が株元から地中に向かってまっすぐ伸びていく特徴があります。

このような根を「直根」といい、途中で根が分岐しにくく、真っすぐ地中へ伸びようとする性質があります。クレマチスの根も、このような直根となります。

そのため、根が切れてしまうと、切れた部分から新しい根が分岐していくことが難しいという特徴があります。

したがって、植え付け・植え替え・移植の際は、根はなるべく切らないようにすることが好ましいです。

冬の時期は休眠期に入るので多少根が傷付いても問題無いですが、株が成長する時期になると、株の不調に繋がる可能性もあります。また、根が切れた部分は細菌の侵入経路にもなるため、出来る限り根は傷つけないようにします。

ただし、古い根が黒くなって腐りかけているような場合には、植え付けの際に除去してあげるようにすることはお忘れなく。

クレマチスに最適な鉢と土

次にクレマチスに最適な鉢と土ですが、上述の通り、クレマチスの根は直根で地中へ下へ向かって分岐せずに伸びようとします。

そのため、鉢は横に広いものではなく、縦に長いものを使用することがお勧めです。

クレマチスが春から秋に成長することを考えると、少なくとも30cmくらいの深さがあるものが良いかと思います。

そして、将来的にクレマチスの株が大きく育ったら、株の大きさ・根の状態に合わせて鉢増しをするという作業になります。

次に適切な培養土についてです。

クレマチスは大変多くの品種が育種されていますが、原種となるクレマチスは比較的乾燥した土地を好むことが知られています。

そのため、培養土も排水性が良いものを選びます。

また、クレマチスの根を健全に成長させるためには、培養土の中の空気 (酸素) の入れ替えも必要になります。そのため、排水性が良く、空気 (酸素) が取り込まれやすい土が栽培に適していると言えます。

自分で土を配合するのが手間であれば、クレマチス専用の土も販売されていますので、それらを使っても良いと思います。


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今回植替えを行うクレマチス「ソワレ」

本記事で実際に植替えを行うクレマチスは「ソワレ」という青い花 (直径 7 ~ 8 cm) を咲かせてくれる品種となります。

新枝咲き (強剪定) の品種で、蔓の長さは最大で2mから3mくらい伸びる四季咲きの品種です。

「蔓が2mから3m伸びる」と記載のある品種がありますが、これは剪定によって小さくコンパクトに栽培することも可能ですので、それほど大きな心配はいらないかと思います。

薔薇には無い濃い紫色 (青に近い色) を選んだので、薔薇と一緒に咲いてくれる時期が楽しみですね。

植替えの実例・手順を写真で紹介

クレマチスには様々な系統がありますが、以下で紹介する植替えの手順は、基本的にどの系統のクレマチスにも共通です。

ジャックマニー系、パテンス系、フロリダ系…覚えられないくらいありますのですが、植え付け方法については、この系統は気にしなくても大丈夫です。

また、新枝咲き、旧枝咲き、新旧両枝咲きについても、同じ方法で植替え可能です。

今回は、深さ30cm程度の7号鉢に植替えを行っていきます。

ポットから取り出して根の確認

まず最初にクレマチスの苗についてですが、クレマチスの品種によっては、どこに株があるのかが分からない状態で販売されている場合が多いです。

下の写真では、黄色の矢印の部分に、かろうじて新芽が見えます。

初めてクレマチスを育てる方からすると「これは枯れているんじゃないの?」と思われるかもしれません。

大丈夫です、この状態でも春の芽吹きに向けて準備をしている状態です。

少しだけ土をどかすと、上の写真の様な株元が見えてきます。

新芽が少し出てきているものに関しては、ポットから抜き出す時に新芽を折ってしまわないように注意が必要です。

そして、ポットから取り出した状態が次の写真になります。太く元気な根がポット一杯に入っていました。葉も茎も無い地上部から想像ができないような根の状態かと思います。

根の色も良い状態ですので、かなり元気な株だと言えますね。春の芽吹きや開花が楽しみに思えてきます。

古い土を可能な限り除去 -根はできるだけ切らない-

次に古い土を落としていく作業です。

ここでの作業では、上記の通り、なるべく直根を切ったり傷つけないようにします。

しかし、実際の植え付けの作業では、少なからず根を切ってしまう作業になります。正直なところ、それは仕方が無いことですので、少量であれば気にしなくても良いです。

ただし、故意に根をハサミで切ったりすることは避けて下さいね。間違っても根を1/2の長さに切るような事はしないように…。

古い土は特に根鉢の内側にあるので、少しずつ根をほぐしながら土を除去していきます。

次の写真が古い土を全て落とした状態になります。上で「直根」の説明をしましたが、根の写真を見て分かるように、太い根がまっすぐ伸びていることが分かるかと思います。

途中で根が分岐をしている箇所もありますが、分岐している部分が少なく、分岐したとしても、分岐先の根は非常に細いものばかりです。

新枝咲き (強剪定) のクレマチスは、冬場は地上部がほどんどなく、大部分が根だけの状態になります。冬はこの状態が正常なので、地上部が無くても気にする必要は無いです。冬に見るべきポイントは根の健康状態です。

では、次に植え付けを行っていきます。

根の中に土を入れながら植え付け

クレマチスの株が鉢の真ん中に配置されるようにしてから、土を入れていきます。

この時に絶対に注意すべき点は、根の中にもしっかりと土を入れるということです。

上で紹介したように、根の内側にある古い土も落としているので、根の中には空洞ができている状態となります。

このように根が土と接していない状態だと、根が水分や養分を効率良く吸い上げられませんので、根の内側にもしっかりと土が入るようにしてあげて下さい。

下の写真の様に、指で土を根の内側に入れながら作業すると良いです。割りばしなどを使うと、根を傷つけそうで怖いので、私は指で触りながら行っています。

そして、根が完全に隠れる位置まで土を入れてあげます。

下の写真で黄色の矢印の部分に新芽となる部分が顔を出しています。

既に4本くらい新芽が出てきていました。春の成長と開花が待ち遠しいですね。


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オベリスクやトレリスは植え付け後に直ぐに設置

クレマチスは蔓性の植物になるので、放っておくと地を這うように成長してしまいます。

そのため、オベリスクやトレリスなどの構造物に絡ませながら育てる事がお勧めです。

トレリスでも良いのですが、狭い空間で育てるなら、小さなオベリスクを鉢に立てる方法がお勧めです。

下の写真の様に、軽い高さ1.5mくらいのオベリスクであれば、7号鉢にも立てることができます。支柱でもクレマチスの蔓を支えることができますが、支柱だと味気ない鉢植えになってしまうので…オベリスクの方が良いかなと思います。

鉢増しせずに管理することも可能

今回の記事では、購入したクレマチスを大きな鉢に植替えを行うという作業を紹介させていただきました。

大きく成長したクレマチスは、出来れば株にあったサイズの鉢に鉢増しを行っていくことが望ましいですが、栽培環境によっては鉢増し出来ない場合があると思います。

例えば、ベランダで栽培している場合や、玄関先の限られた空間で育てている場合などです。

そのような環境の場合には、鉢増しせずに植替えを行うことも可能です。

クレマチスが休眠状態になっている冬限定の作業になりますが、鉢から掘り出して、古くなった根だけを切り落としてあげることで、元々使っていた鉢に植え直すことができます。

鉢のサイズが大きくできない場合には、休眠期に根を整理して植え直すという方法を取ってみてください。

この記事の終わりに

この記事では、クレマチスの植替えの作業について、クレマチスの根の性質や根の取り扱い方法に焦点を当てて紹介させていただきました。

クレマチスは、栽培が難しそうというイメージがあるのですが、実際にやってみるとそこまで難しいものではありません。

私も実際にクレマチスを育ててみて、初めてクレマチスを育てる方にとっても敷居が低く、チャレンジしやすい植物だと感じます。

是非、お家に一株お迎えして、クレマチス栽培をスタートしてみて下さい!

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