晩秋の薔薇は葉をたくさん残して休眠の準備

11月の半ばになると、多くの薔薇が秋の開花を終えて、花後の花柄取り作業が始まります。

秋の開花後の薔薇も、春や夏と同じように花後の処理が必要ですが、少しだけ剪定や花後処理のやり方を変えるだけで、冬の休眠の前に蓄えられrエネルギーの量が大きく変わってきます。

晩秋以降、真冬の到来までにもう一度咲いてくれる薔薇もありますが、基本的には休眠に向けた管理をしていく必要があるかと思います。

この記事では、秋の薔薇の花後について、休眠期のエネルギーを蓄えるという観点でお世話の内容を紹介できればと思います。


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秋の開花後は浅い剪定が基本

秋の花後ですが、どのように処理をされていますか?

春や夏と同じようにバッサリと切ってしまう方、少し切る量を減らす方、全く剪定を行わない方…色々な場合があるかと思います。

公園に植えられている修景薔薇などを見ると、花後に誰も処理をしないので、花弁が散り、品種によってはローズヒップが形成されているものも見かけます。

しかしながら、個人宅の薔薇については、花弁が散った状態は庭や花壇の見栄えがあまり良くないですし、花弁が散らない品種は花が付いた状態で腐っていってしまうものもあります。

そのため「冬には薔薇が咲かないから剪定はしない…」と言うのではなく、出来れば秋の花後もしっかりと花後の処理はしてあげたい所です。

秋の花後の剪定は深く切る必要は無いと思います。下の写真に示すように、花のすぐ下の部分で切ってあげる程度で十分です。

春や夏であれば「5枚葉の上で」とか「茎がふと部分で」ということを言われがちですが、冬に向かう晩秋の中では次の開花が見込めないですので、深く切り込む必要は無いというのが私の考えです。

剪定を浅くすることで、下でも紹介しますが、枝には多くの葉が残るという利点もあります。

咲かなかった蕾は速めに切り取ることも重要

晩秋になると、薔薇の株には咲くことができなかった蕾も出てきます。

春は気温が高くなる方に季節が進むので、基本的には蕾がボーリング (蕾が開かず咲かない状態) する可能性が少し低くなります。しかし、秋は気温が低くなるため、薔薇の中には気温が下がったことでボーリングしてしまう品種も出てきます。

下の写真はガブリエルという薔薇の例です。ガブリエルは春から夏にかけては、全くボーリングせず、全ての蕾が開花していました。しかし、晩秋に入る時期になると、残っていた蕾は開花することなく蕾の色が変わり始めました。

もちろん、年間を通じてボーリングしやすい薔薇もあります。しかし、ボーリングしにくいと言われている薔薇でも、秋には一部の蕾がボーリング状態になってしまうものも出てきています。

このように開かなくなった蕾は、株に残しておいても意味は無いですし、残しておくと腐ってくるので、早めに取り除いてしまいましょう。咲かないものは、いくら待っても咲きません!


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秋も葉が多い方が絶対に良い!

上でも少し記載しましたが、秋から冬にかけての薔薇も、葉の数は多い方が良いことは間違いありません。

薔薇が休眠期に入る前、基本的に薔薇は株を成長させたり、新しい花を咲かせるのではなく、休眠に向けてエネルギーを蓄える方向に活動が変わるはずです。

そのエネルギーを作ってくれるのも光合成を担う「葉」です。

秋の剪定の時に、深い位置まで剪定してしまうと、葉の数が少なくなり光合成の量が少なくなります。

それがどのくらい翌年の花数やベーサルシュートの数に影響があるのかは明らかではありません。しかし、年間を通じて、光合成によって元気の良い株を維持することは、確実に良い方向に影響があると思います。

下の写真は、鉢植えの「イングリッド・バークマン」ですが、この株は今年は葉を落とさないように気を遣ってお世話したので、11月の中旬になっても青々とした元気な葉が一杯です。これだけ多くの葉があれば、休眠まで安心して管理できますね!

次の写真は上でも少し紹介した「ガブリエル」です。

ガブリエルは繊細で耐病性が少し低い薔薇ではありますが、軒下での管理によって秋にも大量の葉を残すことができました。場合によっては、黒星病やうどんこ病で葉が無くなることがあると聞きますが…。この状態で冬の剪定を迎えられれば、安心して次の春を迎えられそうです。

秋は新芽もあまり伸びず休眠へのカウントダウン

秋は新芽の伸びもあまり無くなります。

下の写真は、上で紹介したイングリッド・バークマンの花後処理から2週間経過した時の写真です。

黄色の矢印の部分に、新しい新芽が顔をだしていますが、これ以上伸びてくるような様子がありません。春や夏であれば、2週間も経つと新しい芽が数cmくらい伸びるようなイメージですが、最低気温が10℃を下回るようになると、新芽の伸びも悪くなりますね。

こうなると、今年の開花と病害虫の対策は概ね終わり、冬支度をするサインになります。

また、次の写真は生育が旺盛なミニ薔薇です。同じように秋の花後処理から約2週間後の写真を撮ったものです。黄色の矢印の部分に小さな新芽が伸びていることがわかりますが、この新芽は成長が非常に遅いです。

育成が旺盛なミニ薔薇でさえも、晩秋になると成長が目に見えて鈍化します。

このまま放置しても花を咲かせることはできそうにないですが、残しておいても特段困るものでも無いので、このような新芽は放置しています。放置しても冬の剪定の時に無くなる部分なので、何の問題も無いです。


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秋の剪定と同時に水やり頻度と肥料も見直す

秋の開花のシーズンは、気温が20℃の過ごしやすい陽気でしたので、水やりも毎日または2日に一度のペースで行っていたかと思います。

しかし、秋の花後処理をする季節は水やりの頻度を変えるサインにもなると思います。花が終わると、薔薇の成長が緩やかになり、気温が下がることで葉からの水分の蒸散も少なくなるので、確実に土が乾きにくくなります。

「土がしっかり乾いてから水やりをする」ということが一般的に良い水やりの方法と言われます。しかし、秋のシーズンは土の表面は乾いて内側は湿ったままと言う状況が出やすいと思います。晩秋と言うのは、実は年間を通じて水やりが最も難しくなる季節でもあると思っています。

そのため、適当に土を掘って、湿り具合を確認するなどして、水やり頻度を調整しています。

また、この時期には肥料はストップですね。与えても株の成長にはあまり使われないので…。次に肥料を与えるのは冬の寒肥ですね。それまでは、水やりだけで過ごしていきましょう!

この記事の終わりに

この記事では、秋の開花後の薔薇の管理について、晩秋も葉を多く残してエネルギーを蓄えるという観点に着目して記載させていただきました。

秋になると、冬が目前なので管理がおろそかになってしまいがちな季節になるのですが、冬の剪定と来年の春に向けて大切な時期になります。

花柄取りと咲かなかった蕾の除去、そして適切な水やりに心掛けて、来る冬剪定へ向けた今年最後のお世話を進めていきたいですね。

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