10月中旬から11月中旬の深まりゆく秋の中で開花する「秋の薔薇」 … 。
紅葉が色づき始める季節であり、哀愁が漂う中で咲く薔薇のため、春の華やかさとは違った落ち着いた雰囲気があります。
「秋の薔薇は色に”深み”がある」と言われることも多く、同じ薔薇の株でも春と秋では花の色が大きく異なる品種もあり、秋の開花を心待ちにされる愛好家の方も多いかと思います。
秋の薔薇は、その年の最後の開花シーズンということもあり、お世話を頑張ってきた方へのその年の最後の御褒美というイメージも強いですね。
今回は、そんな秋の薔薇の開花に関して、開花後の管理方法と言う観点で私が実施している管理方法を御紹介したいと思います。
記事の中で紹介する方法が最適とはならない場合もありますが、薔薇の栽培を始めたばかりの方に、少しでも参考になる点があれば幸いです。
はじめに -秋薔薇を楽しみたい!-
秋薔薇の開花後の管理方法のお話をする前に、「秋薔薇を楽しむ」と言う観点で少しだけ私の思っていることを記載してみたいと思います。
薔薇には年に一度だけ花が咲く「一季咲き」の品種と、年間を通じて複数回開花する「四季咲き」の品種があります。
皆さんは、一季咲きと四季咲きのどちらの薔薇が好きですか!?
私は薔薇の花をたくさん楽しみたいので、断然「四季咲き」の薔薇が好きで、育てている薔薇の多くが四季咲きの薔薇です。
現在販売されている薔薇の品種も、四季咲き性の品種の方が多いのではないかと思います。
ただ、日本で最も有名で人気が高いと言われる「ピエール・ドゥ・ロンサール」は、一季咲きの品種なんですよね。
一季咲きには一季咲きの醍醐味があるのも確かな事実なので、一季咲きと四季咲きには甲乙つけがたいところ … 。
皆さんは、一季咲きと四季咲き、どちらが好きですか!? (もしよろしければ、コメント欄で教えて下さい。)
さて、少しだけ話を元に戻して…
私が四季咲き性を選んでいる理由は上記の通り、たくさんの花を楽しみたいから…なのですが、特に「秋の薔薇を楽しみたい!」という思いがあるからなんです。
薔薇が最も美しく咲くのは春で間違いないと思います。休眠期に蓄えたエネルギーを爆発させる春の薔薇は、特に花の大きさや花弁の数、発色の鮮明さの点で本当の素晴らしいものがあります。
しかし、私個人としては、それ以上に秋の薔薇の「深み」や「落ち着いた色」が好きなんです。
秋の薔薇は春の薔薇に比べて色が少し濃く出ると言われており、私が育てている薔薇達も、実際にそうなる品種が多いと感じます。
春の華やかな薔薇も好きなのですが、冬と言う寒い季節に向かう中で咲く薔薇は、侘び・寂びという日本人らしい感情と重ねることができ、心から開花を楽しめるように思います。
四季咲きの薔薇のを育てていらっしゃる方には、春の開花と秋の薔薇の開花の違いを、是非楽しんでもらえたらなぁ、と思います。そして、秋の薔薇を好きになって欲しいです。
ちなみに、春の薔薇と秋の薔薇の色の違いを紹介した記事もあるので、下にリンクを張っておきます。
秋薔薇の開花後は休眠に向けたエネルギー補充期間
さて、花を本題に戻して、秋薔薇の開花が終わった後のお世話の話を始めたいと思います。
秋薔薇の開花が終わると、季節は真冬へ向かい、気温が徐々に下がっていきます。
気温の低下に伴い、薔薇達の活動も徐々に減り、やがて葉を落としていきます。
葉が落ちるまでの期間は、薔薇達が休眠の準備をする期間であり、光合成を行いながらエネルギーを株内に蓄えていくことになります。
そのため、秋の開花が終わった後は、出来るだけ多くのエネルギーを蓄えさせてあげることが望ましいと考えています。
エネルギーを作り出すためには光合成が必須となりますので、秋の開花が終わった後は出来る限り多くの葉を残して管理していく方が良いと言えます。
以下で紹介する秋薔薇の開花後の剪定の実例では、それを考慮した方法となっています。
秋薔薇の開花後の剪定 (花がら摘み) の実例
では、秋薔薇が開花した後の剪定 (花がら摘み) について、シェエラザートを例に取って写真と共に紹介していきたいと思います。
秋の開花を迎えたシェエラザートを例に挙げます
今回の記事で例に挙げるのは、下の写真のシェエラザート (10号鉢で管理) となります。
シェエラザートは非常に樹勢が強く、病気にも非常に強い品種のため、鮮やかな緑色の葉がたくさん残っております。
上の写真は、秋に形成された多くの蕾が開花し終わって、秋の開花後の花がら摘みを適宜行っている状態となります。
これだけ多くの葉が残っていれば、上で記載したように、休眠期までに多くのエネルギーを蓄えることが出来そうな感じがしますよね?!
花を楽しんだら花のすぐ下で花がらを摘み取る
秋の開花が終わった後の剪定 (花がら摘み) ですが、私は下の写真の様に、薔薇の花のすぐ下の部分 (花首) で剪定するようにしています。
「薔薇の剪定」と言うと少し深く刈り込むようなイメージをお持ちの方が多いのではないかと思います。
しかし、それは春や夏の剪定の場合であって、秋薔薇の開花後は、なるべく葉を残しておくために深く刈り込むことはしていません。
深く刈り込んでしまうと、それだけ葉の数が減ってしまう事になるので … 。
また、秋に深く刈り込んでしまうと、冬剪定の際に良い芽がある位置で剪定することが出来なくなってしまう可能性もあります。
上のシェエラザートの花がら摘みを全て終えた後の様子が次の写真です。
見事に葉だけが生い茂っている状態となっています。
この状態になった後は、葉の量が多すぎる場合に限っては、葉を一部除去して風通しを良くしてあげるようにします。
また、夏の日差しで傷んだ葉や、明らかに黄色く変色している葉があれば、早めに除去してあげます。
ここから冬までの季節は、薔薇はある意味、観葉植物の様な存在になってしまいますね。
秋の花がら摘みの後は日の当たる場所で管理
秋の花がら摘みを行った後ですが、薔薇はなるべく日当たりの良い場所で管理して、たくさん光合成をさせてあげて下さい。
「花が終わったし、北側の日当たりが悪い場所でも大丈夫でしょう … 。」では無く、薔薇は年間を通じて太陽の光がなるべく当たるところで管理してあげて下さい。
気温が下がるにつれて葉を落としていく薔薇を見ていると、「一年間、お疲れさまでした。」と薔薇達に伝えたくなりますよ!
12月以降に形成された蕾はどうするべき?
四季咲きの薔薇は、年間を通じて蕾を形成する能力があるため、12月の寒い時期に入った後でも蕾が出てくる品種があります。
この蕾は、品種・栽培環境によっては咲く可能性もありますが、私の経験からすると、咲かない可能性の方が高いです。(あくまでも私個人の経験です。)
そのため、晩秋に新しく出て来た蕾は全て摘蕾し、蕾を成長させる無駄なエネルギーを使わせないようにします。
1つでも多くの花を楽しみたいという気持ちも理解できますが、薔薇を休眠へいざなってあげるのも管理者である我々の勤めであるとも思います。
秋に発症した黒星病やうどんこ病には薬剤を使うべき? (筆者の個人的な考え)
薔薇は秋になっても「黒星病」や「うどんこ病」を発症する可能性があります。
黒星病やうどんこ病が最も出やすいのは、梅雨から夏にかけてであることは間違いは無いと思うのですが、晩秋の雨の後に黒星病が出始めてしまう事もあります。
秋に発生した黒星病やうどんこ病ですが、薬剤を使って対処するか否かは人それぞれの考え方次第だと思います。
理想を言えば、薬剤を使って病気を退治すべきだと思います。
薔薇の専門店のプロも、薬剤を使っての対処することをお勧めされると思います。(薬剤を販売をすることもお仕事なので … )
しかし、私はここ何年も秋に発生した病気に薬剤を使っていません。と言うよりも、そもそも薬剤の使用自体を止めてしまいました。
薔薇を始めてから数年間は薬剤を使っていましたが、ここ2, 3年くらいは薬剤をほとんど使っていません。使っているのは、培養土の上に撒く「オルトラン」くらいです。
秋に出て来た黒星病やうどんこ病は、冬を越して次の年の春にも影響が出るという方もいます。
しかし、私の育てている薔薇は、秋に黒星病が出ても次の春に持ち越した株がほとんど無いんですよ。
秋に一時的に黒星病になっても、翌年の春には全く黒星病が出て来ない品種が多いんです。
そのため、私の経験から言えることは「秋に発症した黒星病やうどんこ病は、放置しても大丈夫なのでは …?」ということです。
私は薬剤を完全に否定するわけでは無いので、薔薇の病気が心配な方は薬剤を使って対処したら良いかと思います。
しかし、秋に発生した黒星病やうどんこ病に関しては、薬剤を使わないという選択肢も一つの考え方として間違いでは無いのかと思っています。
それを、ここで書き留めておきたいと思います。
気温の低下と共に葉が落ちるので葉の清掃を忘れないように!
上でも少し記載をしましたが、秋の薔薇は気温の低下と共に葉を落としていきます。
品種によっては、12月前半には多くの葉が落ちてしまう場合もあります。
薔薇の落ち葉に関しては、なるべく頻繁に掃除してあげるようにしてあげて下さい。
これも私の経験ですが、薔薇の落ち葉を放置すると、あまり良いことが起こらない … 。
2021年の12月前半の事ですが、地植えにしている薔薇の落ち葉を放置していたことがありました。
「あまり良く無いなぁ~」と思いながらも、清掃を怠ってしまっていたのですが … 。
すると、その落ち葉の下に、大量のナメクジが発生してしまっていたのです…。
30cm×30cmの面積の中から、ナメクジが5, 6匹出てきました。
秋は虫たちの数が減ってくるので、落ち葉が虫の温床になる懸念は減るイメージがあるかと思います。しかし、それでも「ダンゴ虫」や「ナメクジ」の数はまだ多く、落ち葉の下はそれらの虫たちの温床になります (筆者の住む関西の住宅街の話です。) 。
虫たちが苦手な方は、秋と言えど薔薇の落葉には気を遣ってあげた方が良いです。
この記事の終わりに
この記事では、秋薔薇が開花した後の薔薇の管理方法として、剪定 (花がら摘み) の方法や休眠までの管理方法を紹介しました。
秋の薔薇を楽しんだ後は、薔薇は休眠に向けて準備を始めますが、初秋から晩秋にかけての期間も、なるべく葉の数を多く残すことが重要になります。
(秋の開花後は、深く剪定しすぎないように注意が必要です。)
葉を残すことで、休眠に向けて多くのエネルギーを株内に蓄えることができます。
そのエネルギーは、翌年の春の開花にも繋がるものがあり、翌年の春の開花を無事に迎える準備が秋から始まっている言っても過言では無いのかもしれません。
秋の開花後の剪定 (花がら摘み) を適当に行っていた方もいらっしゃるかと思いますが、少しだけ気を遣ってお世話してあげてみてくださいね!
翌年の春、今まで以上に綺麗な薔薇が咲くかもしれませんよ!?
それでは。