【薔薇栽培】農薬散布を1年止めて感じたこと -農薬は本当に必要?-

薔薇の栽培をする上で、誰もが必ず耳にするであろうことがあります。

「薔薇は病気や害虫だらけ…」

「病気を防ぐために農薬を適宜使用して育てましょう!」

私も薔薇の栽培を始めるにあたって、インターネットや参考書を見る度に、農薬散布の重要性や病気に効く農薬の種類を目にしていました。

それもあって、薔薇の栽培を始める際には高い敷居を感じましたし、「自分にできるのか?」という懸念を抱いていたことを今でも覚えています。

病気に強い薔薇が作出されているとはいえ、それでも私が薔薇栽培を始めた時には、薔薇と農薬は切っては切れない関係にありました。

園芸店で販売されている季節の草花を育てる時に、農薬の散布なんてしたことはありませんし、農家でもないのに一般家庭で農薬を使わないといけないのか!?と思っていたのも事実です。

しかし、「郷に入っては郷に従え」と言われるように、薔薇栽培を始めた当時は参考書に習って農薬・噴霧器を揃えて、薔薇の葉や茎に農薬の散布を行ってきました。

ただ、「出来れば農薬の使用は避けたい」という思いは常に変わりませんでした。

そこで、物は試しで、2021年の薔薇栽培では噴霧器を用いた大掛かりな農薬 (殺菌剤) の散布を行わないことしました。

最低限の害虫対策として、「培養土に撒くオルトラン」と害虫を見つけた時に害虫に噴射するハンディタイプの「ベニカXネクストスプレー」だけを用意しました。

つまり、黒星病やうどんこ病の予防となる殺菌剤の散布は全く行わなかったということです。

この記事では、農薬 (殺菌剤) の散布を止めた1年の薔薇栽培について、その結果や私自身が思うことを色々と記載していきたいと思います。

あくまでも個人的な意見なので、「そういう考えを持つ人もいるんだなぁ」と思う程度の感覚でご覧いただけましたら幸いです。


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2021年の薔薇栽培は農薬 (殺菌剤) の散布を止めました -その理由とは-

栽培している薔薇の株が多くなると、農薬の散布には噴霧器を使用することが一般的だと思います。

1株、2株であればハンディタイプのスプレーがあればOKですが、10株を超えてくると噴霧器で散布した方がコストと時間を節約することができます。

しかし、この噴霧器を用いた農薬散布こそが、薔薇栽培で最も大変な作業と言えるんですよね…。

(好き好んで薔薇に農薬散布をされている方はいないと思います。)

薔薇を健康的に育てるには、確かに黒星病やうどんこ病を防ぐ殺菌剤を使うことが理想的です。

それを否定する方は、あまりいないんじゃないかなぁ、と思います。

しかし、私の場合ですが、家庭事情を考慮すると農薬の散布は実施したくないという希望があったんです。2020年までは、やりたく無い農薬散布を続けていた…ということになります。

まず第一に、住んでいる場所が住宅地であり、周囲に迷惑をかけれないということです。

基本的に早朝の人通りがほとんど無い時間帯に農薬散布を行っていましたが、それでも人目は常に気になるものです。農薬用の防御マスクをした人が、正体のわからない農薬を撒いていたら…普通に考えると心配になりますよね…。

2つ目の理由は、家の周りで子供達が遊んでいるということです。

私の子供や近所に住む子供が、よく家の前で遊ぶのですが、その時に子供達に悪影響が無いか心配でした。子供が好奇心で、薔薇の葉を触ってしまうような事があれば、その手には農薬が付着してしまう事になります。

健康被害が出ることはほとんど無いとは思いますが、子供が遊ぶ場所に近くに農薬散布した薔薇があることが心配事の一つでした。

3つ目の理由は、単純に「農薬の散布が面倒臭い」ということです。

農薬の散布をする際には、噴霧器の中に濃度を調整した薬剤を作り、薔薇1株1株に順番に農薬散布を行っていきますが、我が家の場合には約30分は要する作業でした。もっと株が多くなれば、1時間以上かかることもあるかもしれません。

農薬の散布はローテーション散布が基本で、最も病気の出やすい梅雨から夏にかけては月に2回かそれ以上の散布が必要と言われています。

会社が休みの土日に作業していましたが、朝早く起きて散布しなければならないし時間もかかります。

農薬の散布をする度に、「この作業が無くなればなぁ…」と思い続けていました。

そのような背景があり、2021年は農薬の使用を最小限にしたいという決意のもとで薔薇栽培を進めたのです。

2021年はオルトランとベニカXネクストスプレーのみで薔薇栽培

冒頭でも述べたのですが、2021年は農薬の散布は止めたのですが、最低限必要な農薬として「オルトラン」と「ベニカXネクストスプレー」だけは用意をしておきました。

オルトランは主に梅雨から夏の時期に適量を培養土の上に撒いておきました。

また、オルトランで対処できなかった害虫を処理する目的で、害虫に直接ふきかけるベニカXネクストスプレーを用意しました。黒星病やうどんこ病の予防には使用せず、害虫発見時にその駆除の目的で使用しました。

芋虫やアブラムシが発生してしまうと、あっという間に薔薇の葉が被害を受けてしまいます。しかも、害虫たちは最も大切な新芽の頂点部の葉を集中的に食べるので、薔薇の見栄えが悪くなります。また、玄関先の薔薇に芋虫が繁殖していたら…お客さんも嫌な気持ちになりますよね…。それを防ぐのがベニカXネクストスプレーの目的です。

スプレータイプのベニカXネクストスプレーにも殺菌剤が含まれているので、それは殺菌剤の散布に含まれるのでは?という御意見があるかと思います。しかし、黒星病の予防のために定期的に使うものではないので、ここでは殺菌剤の散布に入れずに考えたいと思います。

オルトランは土の上に撒くだけなので、作業時間は1回あたり10分程度しかかかりません。ベニカXネクストスプレーも、必要な時だけの使用なので1~2分で作業が終わります。

害虫に対する薔薇のお世話は、この短時間の作業だけで1年間を乗り切りました。

労力をほとんど費やしていないと言えるかと思います。


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農薬 (殺菌剤) 散布を止めて黒星病やうどんこ病は出たのか?

結論から申しますと、私が管理している薔薇15株の中で、1つの株 (地植えのジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコ) に黒星病が蔓延しました。

7月の梅雨の終わりごろだったと記憶していますが、株の下の方にある合計10枚程度の葉に発生しました。その時は、黒星病に罹患した葉を全て除去する処置だけを実施しました。

しかし、この一株以外にはどの株にも黒星病の大規模な蔓延が出なかったんです。

葉の1枚、2枚に黒星病の症状が出ることはあっても、その葉だけを除去してあげることで、株全体の葉に蔓延するようなケースはありませんでした。

そして、うどんこ病に関しては、どの株にも全く出ませんでした。2020年はガブリエルの蕾にうどんこ病が出ましたが、今年はそのガブリエルにもうどんこ病が出ませんでした。

「黒星病の蔓延が一度しか起こらない、それも1株だけという状況であれば、殺菌剤の散布なんてしなくても良いのでは!?」と、正直思いました。

今年の結果が運が良かっただけなのかもしれないので、毎年同じような状況になるとは言えません。

しかし、毎月2回の薬剤散布をしていた2020年と比べても、花の数に大きな変化はありませんでしたし、ベーサルシュートやサイドシュートの発生もほどんど変わりませんでした。

この状況なら2022年の薔薇栽培も殺菌剤の使用を止めて良いのではないか…と考えるようになりました。

下の写真は、今年一年間、出番の無かった農薬噴霧のアイテムたちです。他の農薬も、物置小屋から出すことはありませんでした。

病気に強いと言われる品種は確かに病気に強い!

上でも少し触れましたが、2021年の薔薇栽培の中で、1つの株の中で1枚か2枚の葉に黒星病が発生することがありました。

「蔓延してしまうと困るなぁ…。」と思いながらも、その1, 2枚の葉が黒星病になっただけで済んだケースがいくつかありました。

そのような中でも、「病気に強い」と言われている品種には、本当に病気がほとんど発生しませんでした。

具体的な例としては、ロサ オリエンティスの「シェエラザート」やイングリッシュローズの「ジュード・ジ・オブスキュア」です。

どちらも病気に強いと言われている品種で、2021年の春にお迎えした薔薇達です。

お迎えした年から殺菌剤無しで適当に育ててしまったのですが、害虫の発生はあっても、病気の発症はありませんでした。

育種家さん達の御努力は本当に素晴らしいものがあるなぁ、と実感させてられた一年でもありましたね。

近年発表されている病気に強い品種は、本当に強いんだと思いますよ!

薔薇栽培の初心者の方にもお勧めできそうです!


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農薬散布の必要性に対する疑問 -園芸界の事情?-

ここでは、少しだけダークなお話をしたいと思います。

上で紹介した様に、私の2021年の薔薇栽培の結果を見れば、殺菌剤を使わなくても病気はある程度抑制できるし、病気に強い薔薇を選べば害虫対策以外の農薬散布は必要最低限で問題無いと言えるのかもしれません。

しかし、病気や害虫に強い薔薇が作出されても、園芸店や農薬メーカーさんは積極的に農薬散布を推奨している場合が多々あります。

「複数の農薬を用意して、ローテーション散布しましょう!」

「病気が蔓延する梅雨時期から夏は、月に2回は農薬散布しましょう!」

このようなトークを聞いたことがある方も多いと思います。

確かに、「理想的」な薔薇の栽培を求めたら、農薬を散布して薔薇の葉を保護することが必要なのかもしれません。

薔薇の苗は高価ですし、一つでも多くの花を綺麗に咲かせたいという欲求がでてくると、どうしても安全サイドを選んでしまうのが日本人です。

しかし、品評会に出すような薔薇ではなく、家庭で趣味で楽しむ薔薇栽培であれば、多少の葉が無くなっても構わないと割り切ることもできると思います。

園芸店や農薬メーカーさんが積極的に農薬を使っているのは、販売して売り上げを上げなければならないという使命もあるからなんですよね…。

話が変わりますが、私は海釣りが趣味なのですが、釣りに使う餌についても同じようなことが言えます。釣り餌のメーカーさんは、必要以上に高価な餌を配合して撒き餌の宣伝をします。

初心者が見たら、それをしなければ釣れないと思われる様な動画を目にすることもあります。でも、それって誤った認識を持つ人が出てしまうかもしれないので、私は好きではありません。

薔薇栽培の農薬散布も同じで、自分が必要だと思う最低限の事をしてあげればいいのではないかと思います。

何年か薔薇栽培を続けてみて、自分が満足いく「落としどころ」を見つければ、それがその人のやり方になるんだと思います。

Youtubeや薔薇の教科書に書かれていることが、全ての答えだとは思わない方が良いと思います。

特に「趣味」の世界に関しては。

終わりに -2022年の栽培方針も可能な限り農薬散布は止める方針-

2021年の殺菌剤散布を行わない薔薇栽培は、私の中で良い意味で予想外の結果でした。

2021年は例年に比べると、かなり手抜きをした1年でしたが、それでも薔薇達は元気で健康的に育ってくれました。

一部の薔薇に黒星病が出てしまったのは事実ですが、葉が全て無くなってしまう株はありませんでしたし、全ての薔薇が春も秋も素晴らしい花を咲かせてくれたのも事実です。

農薬は体に影響 (害) がある薬になるので、どうしても人それぞれの考え方があります。

毎月2回の農薬散布をする方…1年に数回だけ農薬散布する方…全く農薬を使用しない方…

それぞれに理由があり、それぞれが尊重すべき考え方だと思います。

御家庭での薔薇栽培は趣味なので、その方が好きなやり方で、楽しくやることが一番です。

無理の無い範囲でやるのが最も大切な事かと思います。

もし、農薬散布を止めてみようかとお悩みの方がいらっしゃったら、この記事が少しでもその後押しになれば幸いです。

また、皆様の農薬に対するお考えも、コメント欄で教えて下さい!

来年 (2022年) も引き続き、農薬は控えて薔薇栽培をしてみようかと思っています。

では!!

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