摘蕾 (摘心) 有無による薔薇の花のサイズ変化を実測

薔薇栽培の管理に「摘蕾 (摘心)」という作業があります。

薔薇の業界では「ピンチ」と呼ぶこともあります。

摘蕾は薔薇の株に無理をさせないために蕾の一部を摘み取る作業なのですが、摘蕾をしなかったら薔薇にはどのような変化がおこるのでしょうか?

私は何事も自分で確かめたい派の人間なので、2020年の春は自分が管理する薔薇のいくつかで摘蕾を行いませんでした。

そうです、摘蕾の有無による花の違いを見るために敢えて行わなかったのです。

結論として摘蕾しなかった結果、薔薇の花の大きさに大きな変化が生まれました。この記事では、その詳細を御紹介したいと思います。


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摘蕾の役割は?

薔薇にもいろいろな品種・種類があります。

1つの花枝に1つの大輪を咲かせる薔薇、先端にたくさんの花を咲かせる房咲きの薔薇などです。

基本的に植物にとって花を咲かせるという行為は、光合成で得た多くのエネルギーを利用するため、非常に体力を消耗する作業になります。

薔薇の場合、蕾が付き始める時期や花を咲かせる時期に、葉の一部が黄色くなってしまったりするくらい養分を使う命がけの作業になるのですね。

薔薇は頑張ってたくさんの蕾を付けてたくさん咲こうとするのですが、全ての蕾を咲かせてしまうと薔薇が付かれてしまうので、蕾を取って咲かせる量を調整するのです。

摘心することでエネルギー使用を抑えて、1番花の後のベーサルシュートを出しやすくしたり、夏へ向けてのエネルギー貯蓄に役立てることができるのです。

今回の検証の背景

では、摘蕾をしないとどうなるのでしょうか?

例えば、摘蕾をしなかったブルームーンの1番花の花芽を見てみましょう。

下の写真が2020年の春の蕾の様子ですが、凄いことになっています。

先端で分岐を繰り返して、合計で12個の蕾を付けています。

ブルームーンの蕾の写真

「これは、何もしなかったら全て咲くのでしょうか?」という疑問も残りますよね…。薔薇の教科書を読んでいる方々なら、12個も咲かせずに蕾を4個くらいに絞りますよね…?

しかし、2020年の春は写真の蕾を全く摘蕾をしませんでした。

薔薇が頑張っているのだから…咲かせようとしているのだから…蕾を全て咲かせてみようと考えたのです。

もし咲かなかったら咲かないで、それも経験になりますし、咲けばラッキーだと思うくらいの考えて実験的に咲かせてみたのです。

2019年の春はきちんと摘蕾をして、咲かせる蕾の数を制限させましたので、2019年と2020年の花のサイズを比較してみたいと思います。


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今回の実験で花のサイズを調査をした薔薇

今回の調査で摘蕾をしなかった薔薇の一部でデータを取りました。

協力してもらった薔薇達は以下の通りです。

  • ルージュ ピエール ドゥ ロンサール
  • ブルームーン
  • プラム パーフェクト

なぜこの薔薇を選んだのか? 読者の皆様は分かるでしょうか?

ルージュピエールは、非常に花弁数が多くボーリングしやすいことで有名な薔薇です。つまり、咲かせるエネルギーを膨大に使いそうな品種です。

ブルームーンは大きな花を咲かせるのですが、実は花弁数が比較的少ない品種で、蕾が開きやすい薔薇です。

プラムパーフェクトは、実は花弁数が蹴校多くて30枚くらいあります。しかし、一つの花弁の大きさが小さく、ボーリングはしにくい薔薇です。

このような花弁数や咲きやすさの違いも影響を確認したかったのです。

花の大きさの測定について

比較した花の大きさは、上で紹介した通り、2019年と2020年の春の花です。

2019年は摘蕾を行い、一つの花枝に蕾を最大で4個くらいにしていました。

2020年は摘蕾を行わず、開花を薔薇に任せて、自由に花を咲かせました。

薔薇の花の大きさは、花が開ききった時の直径をメジャーで測定しました。

大きさは測定した花は、その年の春に最初に咲いた花から10個分を記録しています。薔薇の花は、春に最初に開花した蕾が最も大きくなる傾向があるので、今回の検証では、その薔薇の一番大きな花を順番に測定していることになります。


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摘蕾の有無による花の大きさの違い

さて、検証の内容や懸賞の方法の説明は以上にして、実際の結果を見てみましょう。今回は比較した薔薇それぞれに分けて結果を紹介します。

ブルームーンの結果

ブルームーンの花の大きさの比較結果を紹介します。まずは以下のグラフをご覧ください。

摘蕾の有無によるブルームーンの花サイズの違い
ブルームーンの写真

実はブルームーンの花の大きさについては、摘蕾の有無によってあまり変わらないのではないか?と予想をしていたのですが、その通りの結果になりました。

12cmの大輪の花は数が2020年 (摘蕾無し) の方が少ないのですが、そこまで悲観するような結果ではないと思います。

全て咲かせてしまっても、実は花の大きさはそこまで大きく変動しませんでした。

これは、花弁数が少ないということが最も大きな要因かと思います。花弁数が少ないので、花一つ一つが使うエネルギーがそこまで大きくないということなのだと考えられるかと思います。

プラムパーフェクトの場合

次に、プラム パーフェクトの場合です。

この薔薇は私の予想としては、花が小さくなるのではないかと思っていました。

しかし、下の結果に示すように、それほど大きな違いがありません。

プラムパーフェクトの摘蕾有無による花サイズの違い
プラムパーフェクトの花

プラムパーフェクトは、花弁数が多く、概ねブルームーンの2倍弱はあります。そのため、必要なエネルギーが多いと思ったのですが、そこまで影響がないような結果です。

後から考えたのですが、実は花弁のサイズがブルームーンの花弁よりも小さいことが特徴でした。花弁が多くとも、花弁自体が小さいと花の大きさに影響が少ないのかもしれません。

ルージュ ピエールの場合

最後にルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの結果です。

実は、この薔薇の摘蕾有無による違いを見るのが、最も楽しみだったんです。

昨年もボーリングを気にしながら丁寧に育てて咲かせたので、野放しにした2020年の春はどんな結果になるのだろう…と…。

とにかく、結果から載せますね。衝撃です。

ルージュピエールドゥロンサールの摘蕾有無による花サイズの違い
ルージュピエールドゥロンサールの写真

2020年の春は、ひどい結果ですね。

摘心をしないと平均で2cmくらい花のサイズが小さくなりました。

しかも、6cmという小さなサイズのものまで出てくる結果です。

ルージュ・ピエールは、薔薇の中でも開花させるのが難しく、蕾がボーリング状態になりやすい品種です。そのため、栽培にかなり気を遣う薔薇なのですが、摘蕾をせずに野放しにすると本当に多くの蕾を付けます。

そのため、全ての蕾を開花させるには、相当なエネルギーを使うことになりますし、多くの蕾を付けるとエネルギーが分散してしまうので一つの蕾自体が小さくなってしまうんですね。

また、ルージュ・ピエールは非常に花弁数が多い薔薇なので、他の薔薇よりも一つの蕾に必要なエネルギーの量が多くなります。その観点でも、摘蕾をしないと花のサイズが小さくなってしまうのだと考えられます。

今回の実験比較を終えて

薔薇を始めてから、摘蕾の意味について、色々考えることがありました。

「薔薇は咲こうとしているのに、それを人が阻害してしまうことに本当に意味があるのか?」という疑問です。

薔薇の始めて、インターネットの情報等を見ていくと、摘蕾が必要だとあるのですが、実際にその比較するデータが見当たらなかったので自分でやってみようと思い立ちました。そして2019年と2020年の比較を自分のノートに記したものを記事しました。

結果としては、想像が付く結果もありましたが、摘心をしなくても薔薇の大きさが変わらないものもあります。

今回の検証の一つの結論としては、花弁数が少ない薔薇というのは、摘蕾することなく咲かせても立派な花を咲かせると言えるのかと思います。

しかし、「エネルギーの消費」という観点で考えると、咲かせた分だけエネルギーを消費するということは当たり前の事実です。

薔薇も1株ごとに樹勢が違っていたり育成条件が異なるので、咲かせる能力が有るのか無いのかも株ごとに異なります。私の今回の結果が皆様の御家庭では再現しない可能性もあります。

今回の結果は、栽培条件によっても左右されるものかと思いますので、皆様も一度試してみるのも良いかと思います。摘蕾を怠っても、薔薇は枯れることはありません。

今回の結果が、皆様の薔薇栽培に有益な情報になりましたら幸いです。

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