12月末になると、私の住んでいる関西の都市部でも最高気温が10℃くらいになり、毎朝の最低気温は2℃まで落ち込んできます。まさに冬本番と言った季節になりました。
この季節になると、薔薇達が冬の休眠に向けて準備を始めていることが目に見えて分かるようになってきます。
気温が低い中での園芸作業は少し気が引けてしまうところはありますが、開花期や株の成長期と同じくらい大事なのが冬のお手入れになりますので、基本的な作業は忘れないように実施していきましょう!
この記事では、薔薇が休眠に向かっているサインや、休眠へいざなうために必要な作業について理由も添えて御紹介したいと思います。
薔薇が休眠に向かっているサイン
薔薇は冬の休眠期に向かうと、目に見えて株の様子が変わってきます。このサインを知ることで、薔薇の冬剪定に向けた作業を開始することができます。
以下で3つの主要な変化について紹介します。
葉が変色して枯れ落ち始める
薔薇は「落葉樹」になります。薔薇の事を草花だと思われている方も非常に多いのですが、薔薇は花木に分類されています。つまり、花が咲く「木」です。
薔薇の株姿を見ると、若い薔薇は木の様に見えませんが、樹齢が多くなると茎が木質化して木の性質が見えてきます。
落葉樹になるので、薔薇は冬には葉が枯れ落ちます。一部の品種では、冬にも緑色の葉が残っている薔薇もありますが、多くの薔薇は葉が黄色く変色して枯れ落ちていきます。
下の写真はルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールになりますが、12月の半ばくらいになり、株の下の方にある葉が鮮やかな黄色に変色してきました。
薔薇は頂芽優勢という性質があり、高い位置にある葉や芽の方が養分を多くもらえるため、休眠前には下の葉から枯れ落ちてきます。
また、次の例はイングリッド・バークマンですが、葉は黄色くなっていないのですが、色がかなり色褪せてきていることが分かるかと思います。このような変化があった場合にも、休眠に向けた落葉の直前と言えます。
茎が赤く変色する
私が薔薇の栽培を始めた当時、冬の薔薇を見て驚いたのが茎や枝の色の変わり方でした。
春から秋にかけては緑色であった茎が、冬になると深紅に変化します。
下の写真に12月末のイングリッドバークマンの茎を載せておきますが、枝が赤く染まっていることがわかります。
これは、薔薇が寒さから身を守るために備えている性質になります。赤色になる正体は、アントシアニンの生成です。薔薇は寒さから身を守るために、株の中に糖分を蓄えるのですが、その一部がアントシアニンとなるため、茎が赤く染まるのです。アントシアニンと言うと、紅葉が赤く色づくのにも関係している分子になりますね。
薔薇の株内に糖分があることで、水分の凝固点が下がります。これにより、寒い冬でも株内を凍らせることなく越冬することができるようになります。
温かな地域では氷点下になることが少ないところも多いのですが、薔薇に自然に身に付いている防衛本能なので、多くの品種に見られる現象です。
枝が赤くなると、上で紹介した落葉と同様に、薔薇の休眠を意識するようなタイミングになりますね。
新芽の成長が完全に止まる
最後に紹介する休眠のサインですが、新芽の成長が完全に止まるということです。
下の写真はミニ薔薇のノヴァという品種ですが、12月の半ばになると新芽の成長が完全に止まります。
赤色の葉が付いている部分が11月末くらいに芽吹いた新芽ですが、12月の寒さの中で成長が完全に止まり、これ以上成長しないような状態になりました。
株の最も高い部分にある芽なので優先的に成長する場所ではあるのですが、そのような芽も成長が止まっていることから、活動が止まってきていることが伺えるかと思います。
完全な休眠に向けた作業は葉の除去
12月末の薔薇ですが、完全に休眠をしているようなものもあれば、休眠に向けた最終段階に入っているような薔薇もあります。
この時期に行うお世話としては、葉を全て除去してしまうということです。
以下で、例を紹介したいと思います。
まず最初は上でも紹介しましたがイングリッド・バークマンの例です。
左の写真は葉を除去する前、右の写真は葉を完全に除去した後の写真になります。枝は切らずに、葉だけを除去しました。
薔薇の葉はした方向に引っ張ると簡単に取れるので、作業自体は大変なものではありません。ただ、葉の数が多かったり、棘が多い品種は作業に時間がかかります。
下の例は、同じ要領でガブリエルの葉を除去した後の写真になります。
ガブリエルは冬になっても青々とした葉を残しているのですが、葉がかすれてきたり、葉の色が夏に比べると少しくすんでくることで、休眠に向かっていることを判断できます。
また、ガブリエルも茎が赤く変色するので、休眠のサインを読み取ることができます。
冬剪定の前に葉を全て除去する目的とは?
なぜ、12月に葉を除去してしまうのでしょうか?
正直なところ、葉を全て除去しなくても、冬剪定をすることは可能です。皆様の中には葉の付いた状態で1月を迎え、葉が残ったまま冬剪定してしまう方も多いのではないかと思います。それでも問題は無いと思います。
しかし、以下の理由で私は12月に葉を全て除去してしまうようにしています。
完全に休眠させること
まず一つ目の理由は、薔薇を完全に休眠状態に移行させてしまうためです。
枝の色が赤くなったり、葉の一部が枯れ落ちてしまったとしても、薔薇が完全に休眠状態に入っているとは限りません。
冬の選定では、薔薇の太い枝を切り落とす作業が待っていますので、それまでには確実に休眠状態にしておきたいところです。
そのため、葉を除去してしまい、強制的に休眠へいざなってあげることが必要かと思っています。
茎でも光合成を行いますが、光合成を行うメインの場所は葉です。その葉が無くなってしまえば、光合成を行うことができないため、活動することができず休眠期に入るということです。
私の場合には、1月の中旬に冬剪定を行いますので、12月の末までには葉を全て除去しています。
冬剪定の際に樹形を確認しやすくすること
もう一つの理由は、冬剪定の際に株の形を見やすくするためです。
葉が残っていると株全体の樹形を把握することが難しく、冬剪定で切り過ぎたり、切り忘れてしまうような場所が出てきます。
完全に葉が無くなっている状態にすることで、要らない枝を切り落としたり、樹形をより綺麗なものにすることが可能になります。
葉を除去する作業は手間ですが、冬剪定のやりやすさを考えると、葉を除去しておいた方が良いと思っています。
この記事の終わりに
本記事では、薔薇の休眠前に見られる株の変化と、冬剪定前の12月に行うべき作業として葉の除去を紹介させていただきました。
12月は気温も下がり、薔薇が休眠を始める時期となりますが、冬剪定までの間も適切にお世話をすることで、負担の少ない冬剪定が出来るようになります。
冬剪定の前に葉を全て落としておくことで、薔薇を確実に休眠させることができますし、来年の樹形を考えた冬剪定を実施することが可能になります。
葉を除去するという作業は少し大変な作業ではありますが、大事な冬剪定を成功させるためにも、寒さに負けずに実施したい管理になるのかと思います。