【薔薇】培養土のpH調整をしたらベーサルシュートが出てきました

薔薇栽培を趣味にされている方にとって、元気なベーサルシュートが発生した時は、一番うれしい瞬間の一つかと思います。

毎年、ベーサルシュートが本格的に発生するのは1番花が終わる6月くらいからになりますが、私も毎年そわそわしながらベーサルシュートの発生を心待ちにしています。

しかし、2020年の1番花の後は、どの薔薇からもベーサルシュートが全く出ませんでした。1番花どころか2番花が咲いた後もベーサルシュートが全く出ない状態でした。

理由が分からず、色々と調べて試行錯誤したのですが、あることを実施したら、約20日後に元気なベーサルシュートが発生しはじめました。

その「あること」とは、「培養土のpH調整」です。

この記事では、pH調整にたどり着くまでに行った試行錯誤と、実際に行ったpH調整の内容を含めて御紹介します。


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1番花の開花は例年通りでした

2020年の4月中旬には早咲きのブルームーンが開花し、とても良いブルー系の香りが花壇に立ち込め、2020年の薔薇のシーズンが始まりました。

毎年、我が家ではブルームーンから開花が始まるので、例年通りの1番花のシーズンが始まったことに喜びを覚えていました。

ブルームーンの写真

4月から5月中旬にかけて、時期をずらしながら花壇でどんどん咲く薔薇を見るのは、薔薇栽培を趣味にする方にとっては、1年間頑張ってきた御褒美の様なものですね!

この約1か月の間のために、1年間の栽培を色々考えているようなものです。

「ベーサルシュートが出てきたら、どの芽の位置で剪定して次の春を迎えようか?」

「冬選定の時には春の開花を想像して、どこまで深く剪定しようか?」

薔薇を栽培されている皆様にとって共通の悩み事だと思います。

今年もそんなことを考えながら春の開花を迎え、いつも通りの剪定を済ませて、次はベーサルシュートの発生を心待ちにする状況になりました。

ジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコと言う名の薔薇の写真

梅雨時期になってもベーサルシュートが一つも出ませんでした

ところが、6月になっても薔薇の株元は静かなままで、ベーサルシュートが出てくる気配が全くありませんでした。

それも、私が管理している薔薇の全てがベーサルシュートを出しませんでした。

例年であれば、毎年6月入ると複数の薔薇からベーサルシュートが順番に出始めて、喜びを感じる時期なのですが、このような年は初めてです。

毎日、毎朝、会社への出勤前に薔薇の株元ばかりを確認していました。

剪定方法や5月のお礼肥を含めて、例年通りのお世話の内容だったので、「なぜ?」の一言です。

薔薇自身も歳を重ねてきている株も多いので、ベーサルシュートが出にくいのは仕方ないと思いながら過ごす日々でした。


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ベーサルシュート発生のために実施した対策

6月になってもベーサルシュートが出てくる気配が全くなかったので、6月の初旬から、ちょっと株に対してテコ入れをしてあげようと次の対策を施しました。

① 活力剤の併用で根の活動を改善

まず、1番花の後に薔薇が体力を使い過ぎたことを考え、活力剤で根から元気回復をしてあげることにしました。

いつもは2週間に1度くらいのペースで薄めた活力剤を、毎週末1回の与えるようにしました。

活力剤は与え過ぎても意味は無いのですが、規定量より少し薄くして毎週挙げることで、定期的に根に活力剤を吸わせて、ベーサルシュートの芽吹きを促進するようにしました。

また、活力剤に併用して、根に吸収されやすい液肥も使っていきました。

② 少し深い中耕による酸素供給

また、活力剤と同時進行で、例年よりも深めの中耕を行い、土の中に空気がしっかりと入っていけるような状態にしてあげました。

通常の中耕は表面を1~2cm程度耕す程度ですあ、5cm位は表面を耕しました。

少し薔薇の白い根が見えつつある限界まで掘り起こしたので、相当空気が入りやすい状態になったと思います。

③ 芽かきと摘心でベーサルシュート発生のエネルギー確保

これもベーサルシュートを出させるための定番対策の一つだと思いますが、出てくる新芽は芽かきによってほぼ全て除去していきました。

気温も高いので、株の上の方にある頂点から、どんどん新芽が出てくるのですが、容赦なく全てを芽かきで除去していきました。

1番花の後に葉が少なくなってしまった株は葉を増やす意味で、芽かきを控えましたが、葉がしっかり残っている薔薇は全て新芽を芽かきしていきました。

また、葉が少なかった株も、新芽の葉が出てきて葉の数が十分稼げたら、蕾は全て摘心で除去し、その後は新芽を除去します。

新芽が伸びたり蕾が膨らんでくると、薔薇はそちらにばかり養分を使うようになり、ベーサルシュートのために養分が回りにくい状況になります。

今年のベーサルシュートは半分諦め状態になりました

7月前半まで①~③の管理を続けてきたのですが、約1カ月経っても、どの薔薇の株元も静まり返ったままです。

正直、ここまで出ないとほぼ諦め状態でした。

例年は6月から7月にベーサルシュートが出て、8月以降にベーサルシュートが出る株はほとんど無かったので、7月までベーサルシュートが出て来ないとなると、もう無理だと思い始めました。

ベーサルシュートが出やすい地植えのミニ薔薇でさえも、ベーサルシュートが1つも伸びない有様です。

何年も薔薇の栽培を続けてきて、最も大きなショックを受けた期間だったかもしれません。

諦めないという意思表示の写真

解決のきっかけは園芸番組で見たpHの調整

ベーサルシュート発生のためのきっかけを得たのは、たまたま見ていた園芸関係のテレビ番組でした。皆さんも多分知っている有名な番組だと思います。

その番組の中で、野菜が健全に育つための土壌改良として「pHの調整」と言う作業を紹介していました。

多くの野菜は培養土のpHが弱酸性になる様に管理されているということで、pHが低すぎる場合には苦土石灰などを使って、酸性化した土のpHを中和調整するとのこと。

「そういえば、薔薇の培養土は一度もpHを測ったことが無いなぁ」と、気づきました。

園芸用の苦土石灰は何かの時のためにと購入はしていたのですが、2年くらい前に1度だけ薔薇にも使ったきりで、それ以来は倉庫の中で眠っていました。

「pHは薔薇のベーサルシュートには関係無いだろうなぁ。」と思いながらも少し心配になることもあり、pHを測定してみることにしました。

pH測定器はホームセンターでも安いものでは1000円~2000円くらいで販売されているので、それを使って試しに測定してみたのですが…

鉢植えの培養土のpHが5.5~5.9、花壇に植えている薔薇の培養土のpHが5.6です。

pHが5.5~5.9ということで、これが良いのか悪いのか直ぐには分からなかったのですが、後から調べてみると少しpHが低いということが分かりました。

薔薇に適したpHは6.5前後の弱酸性であることが望ましいとのことですが、6.0以下と言うのは少し酸性化が進んでしまって、根の働きを阻害している可能性が出てきました。

これがベーサルシュートが出ない原因かもしれないと思い、土壌改良のために苦土石灰を使って、pH調整を行うことにしました。

pH調整をするのは、正直なところ、学生時代の化学の実験以来の作業です。


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土は何もしないと基本的に酸性に傾く

そもそも、なぜ土が酸性に傾いていくのでしょうか?

原因はいろいろありますが、基本的には雨の影響と化成肥料の影響が主な原因と考えられます。

園芸用の土は、新品で使い始める時にはpHが弱酸性くらいになるような土で売られており、土の中に含まれる石灰分などもあるので、使用してしばらくはpH=7弱の弱酸性状態を常にキープする能力があります。

しかし、近年の雨は多くが酸性雨で、屋外で雨に当たるような場所で栽培している場合には、土の中に酸性の雨が降り続けることになります。雨は車や工場から排気された二酸化炭素や窒化酸素などを含むため、それが原因で雨が炭酸や硝酸を含むため土が酸性化します。

また、化成肥料の中に含まれる硫黄分も、水分と化学反応をすることで硫酸となり、土を酸性に傾ける原因となります。

また、新品の土の中に入っていた石灰分 (酸性土壌をアルカリ性で中和する効果がある) については、月日が経つと共に水分によって溶かされ、どんどん流れ出ていきます。そのため、酸を中和するアルカリ成分が土の中に無くなってしまいます。

このため、園芸に使用する土は月日を経るごとに酸性に傾いていく傾向になります。

この現象は自然の中では起きにくいです。例えば川や山の中では、岩盤から溶け出したミネラル分が石灰分が供給されていくので、土が酸性化することがやわらげられています。

苦土石灰を使用して土を中和する

培養土が酸性になる原因の説明が長かったのですが、話を元に戻して、pH値が6.2だった培養土の中和の説明に入ります。

培養土のpHが6.0以下と少しpHが低い状態ですので、アルカリ性の苦土石灰を用いてpHを中和してあげます。

2020年7月の前半になりますが、鉢植えと花壇の両方に苦土石灰をまくことにしました。2年前に購入していた古いものですが、無いよりはあったほうが良いだろうということで、説明書に記載の適量を薔薇の根元に撒きました。

また、それと同時に、化成肥料も少し与えて栄養補給し様子を見ることにしました。

使用した苦土石灰は下の写真のものです。園芸店で安く売られているものですが、pH調整だけが目的なので石灰などでも代用は可能だと思います。

この苦土石灰は、固形のものになるので、雨に溶けて土の中に染み込んでいくタイプです。そのため、撒いた後は毎日水やりをして鉢の中、花壇の土の中に満遍なく浸透していくようにしました。

苦土石灰の写真

苦土石灰を与えてから2週間後に再びpHを測定しましたが、鉢植えと花壇と両方ともpHが6.5~6.7くらいに中和されていました。梅雨時期ということもあり、苦土石灰の成分が雨で溶け出しやすかったのだと思います。

今回のpH調整で、初めて苦土石灰の中和力を体験することができました。

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苦土石灰使用から3週間後にベーサルシュートを確認!

苦土石灰を使用したのが7月前半ですが、それから約3週間経った2020年7月25日 (土) に歓喜の瞬間が訪れました!

何と3つの薔薇の株元から元気なベーサルシュートが顔を出し始めていたのです。

気付くのが遅れたのですが、私のブログにもたびたび登場している玄関先のミニ薔薇の株元から元気なベーサルシュートが出てきたのです!すでに3cm位伸びてきております!

ミニ薔薇の新しいベーサルシュート

さらにさらに、全ての薔薇を見ていくと、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの株元にも下の写真の様にベーサルシュートの芽が出てきてるじゃないですか!

ルージュピエールのベーサルシュート

ルージュ・ピエールは我が家のシンボルローズとして10号鉢のオベリスク仕立てで育てているのですが、正直10号鉢では窮屈で、それが原因なんじゃないかと思っていたのですが、無事にベーサルシュートを出してくれる気配が出ました。また、今年の一番花の後は元気を無くしたので、ほぼ諦めていたんですよ。

また、玄関先で管理しているガブリエルの株元からも、下の写真の通り、ベーサルシュートが顔を出し始めていました。ガブリエルは株元が木質化しているのでベーサルシュートが出にくいと思っていましたが、無事に新しいベーサルシュートの発生が確認出来て良かったです。

ガブリエルのベーサルシュート

あれだけ様々な試行錯誤しても発生しなかった今年のベーサルシュートが、培養土のpH調整を加えたことで発生したのです。

もちろん、pH調整だけが効果を発揮したとは思っていません。活力剤や培養土の中耕など、様々な要因が重なり合ってベーサルシュートが発生したのだと思います。その中で、pH調整がベーサルシュート発生の最後のトリガーになってくれたのかもしれません。

これまでの薔薇栽培の中で、pH調整は全く気にかけたことも無かったのですが、また一つ大きな勉強になりましたね。

この結果から、他の薔薇にもベーサルシュートの期待が持てる状況となりました。

【8月15日追記】ルージュピエールからは2本目のベーサルシュートが出ました

上記でルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールについにベーサルシュートが出たことを記載しましたが、8月の中旬に入って2本目のベーサルシュートも確認出来ました。

その他の薔薇にも新しいシュートが何本か出てきましたので、今回の土の状態の改善が良い方向へ向かっているのだと思います。

一番右側の白いシュートが上で紹介したシュートのその後で、左側に小さな芽が出ていますが、これが8月15日の追記で確認した新しいシュートになります。

この記事の終わりに

2020年の春の1番花以降、我が家の薔薇には全くベーサルシュートの発生が無かったのですが、土壌のpHの調整を行ったことでベーサルシュートが出始めた経験をブログにさせていただきました。

今回は苦土石灰を使用した3週間後にベーサルシュートが伸びてきたので、苦土石灰がベーサルシュートの起爆剤になった可能性があるかと思います。

しかし、苦土石灰の使用の前には、芽かきや摘心、また活力剤も定期的に与えていたので、それらの効果も加わって出てきた可能性もあります。

そのため、今回ご紹介した内容はあくまでも御参考までと言うことで、お願い致します。栽培環境によっては、効果が薄い可能性もあるかと思います。

また、あらためて「薔薇栽培を上手く進めるには、薔薇との会話が大切」ということなんだなぁと思いました。

普段行っている管理で問題が無くても「知らぬ間に薔薇にとっては育成の障害になるようなことが起こっている」と考えるべきなんだと気付かされる良い機会になりました。

ベーサルシュートが出ないことでお悩みの方も多くいらっしゃるかと思います。普段の薔薇の管理の中で、管理できていないと思うことを探し出すということは、ベーサルシュートを発生させるきっかけになるのかもしれません。

皆さんも、園芸の原点に立ち返ってみて、普段の管理の抜け漏れを探してみはいかがでしょうか?

私もまだまだ勉強が足りないと気付かされた2020年の梅雨でした。

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