【薔薇】花が咲いた新苗を購入したら直ぐにやるべき事 -花が咲いた弊害の実例も紹介-

桜が満開になる3月後半から4月初旬にかけて、薔薇の新苗たちが園芸店の店頭に顔を出し始めます。

薔薇の新苗は大苗に比べて枝の数が少なく、枝の太さも細いため、まさに「薔薇の赤ちゃん」と言えるような状態。

販売用のポットも小さなビニールポットに植えられていることが多く、本当に小さな苗の姿です。

下の写真は、日本で最も名前が知られている薔薇「ピエール・ドゥ・ロンサール」の新苗です。春になると、ホームセンターなどでも販売されるとても有名な薔薇で、薔薇栽培を趣味にされている方にとっては春の風物詩の様な光景ですね。

しかし、薔薇の新苗と言えど薔薇は薔薇です。

4月の上旬になると小さな蕾を形成して、4月後半には立派な花を開花させます。よく園芸店に行かれる方は、その姿を見たことがあるのではないでしょうか?

ただし、薔薇の新苗は花を咲かせると株の成長が遅くなってしまうことが一般的に知られています。花を咲かせることに大量のエネルギーを使ってしまうため、株の成長に使うエネルギーが無くなってしまうのが原因です。

とはいえ、4月後半から5月前半に薔薇の新苗を購入された方は、花が咲いている状態で購入される方が多いかと思います。

花が咲いている新苗は購入しない方が良いのでしょうか?それとも問題無く育てられるのでしょうか?

この記事では、花が咲いた薔薇の新苗について、花が咲いてしまったことのデメリットを実例と共に紹介します。また、購入直後の取り扱い方法についても詳細に紹介したいと思います。


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花が咲いた薔薇の新苗について

まず最初に、花が咲いて販売されている薔薇の新苗の実例から紹介します。

下の写真は、ロサ オリエンティスの木村卓功さんが作出された「シャリマー」という品種の薔薇です。

新苗とは思えないような立派な花を咲かせてくれていることがわかります。

シャリマーは、本当に綺麗な花を咲かせてくれる薔薇ですね。私はこの花の姿を見て新苗購入を決断しました。(本当は花が咲いていない新苗が良かったのですが…)

新苗の状態を見て見ると、花を咲かせている立派な枝は、実は今年発生したばかりのベーサルシュートです。

そして、その下の方に見えている小さな枝が接ぎ木部分の枝になります。この接ぎ木の枝からも大きな蕾が一つ出てきている状態でした。

新苗の多くは春先にはベーサルシュートを伸ばし始めるものが多く、そのベーサルシュートに立派な花を咲かせてくれます。

しかし、新苗の成長を考えると、開花した状態と言うのはあまり良い事ではありません。

その弊害が出てしまっている実例を次に紹介します。

株元にベーサルシュートとして伸びなかった芽が存在

花を咲かせてしまったことによる成長の弊害として代表的なものがベーサルシュートやサイドシュートの本数減少です。

下の写真は、上で紹介したシャリマーの株元の様子となります。

写真だと非常にわかりにくいのですが、赤色の矢印で示した部分にベーサルシュートの新芽が出てきています。

しかし、このベーサルシュートは顔を出したにもかかわらず全く伸びていない状態、つまり成長が止まってしまった状態です。

この写真には写っていませんが、株の反対側には出開き状態になってしまっているベーサルシュートもありました。

せっかく芽を出してくれたベーサルシュートの成長が止まってしまった理由は何なのでしょうか?

その理由を以下で考察してみたいと思います。


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ベーサルシュートが顔を出したのに伸びない理由

薔薇は株元からベーサルシュートが顔を出しているのに、元気に伸びてくれない場合があります。

それは新苗であっても、大苗であっても、数年栽培した薔薇であっても同じ現象が起こり得ます。

その理由は様々考えられますが、代表的なものは「日照条件」「土の状態」「根の状態」「肥料の与え方」などが理由になっている場合が多いです。

薔薇の新苗のベーサルシュートの場合には何が最も影響するのでしょうか?

「これが理由だ!」と断定することはできませんが、概ね予想は付くと思うので考えてみたいと思います。

まず最初に、日照条件については、薔薇の生産者さんの下でしっかりと太陽を浴びているはずですので、それが原因だとは考えにくいです。

私の意見ではありますが、新苗の場合には「根がしっかりと張れていない」こと、そして「花を咲かせてしまったこと」が大きな原因だと考えられます。

以下で詳しく考えていきたいと思います。

根がしっかりと張れていないと地上部が成長しない

薔薇に限らず植物はどれもそうなのですが、地上部がしっかりと成長するには、それに比例して根がしっかりと成長していることが重要になります。

街中に植えられている桜の木や神社のクスノキなどは、大きな地上部を支えることができる根が張っているからこそ、あれだけ大きく成長することができます。

もちろん、根がしっかり張って株がグラグラと不安定になっていない事に加え、その大きな株を育てるための多くの養分を根が吸収してくれていることも必要です。

薔薇の成長にもこれと同じことが言えます。

地上部に太く大きな枝を何本も出させるためには、それ相応の根の成長が必要です。

しかし、新苗の販売形態である小さなビニールポットでは、とてもじゃないですが大きく育つ地上部を支えるだけの根を張ることができません。

そのため、ベーサルシュートになる芽が株元から発生しても、薔薇の株が自分の判断で成長を止めてしまう場合があるのです。

「こんな小さなポットに押し込められた根では、まだベーサルシュートなんて無理ですわ!」と薔薇が言っているような状態かもしれませんね…。

薔薇は花を咲かせると多くのエネルギーを花のために使ってしまう

もう一つの理由は、この記事のタイトルにもなっている「花を咲かせた新苗」であるということです。

薔薇は冒頭でも述べたように、大きく立派な素晴らしい花を咲かせてくれます。

しかし、その花を咲かせるためには、相当な量のエネルギーや養分を使っていることは容易に想像できるかと思います。

薔薇は観賞用に品種改良をされてきた植物ですが、もともと植物が花を咲かせるという行為は、虫たちに自分の事を見つけてもらい、受粉の手助けをしてもらうための目的があります。

つまり、自分の子孫を確実に残すために必要なことが開花と種の形成であり、植物の成長の中で最も体力を使う行為であると言えます。

薔薇の新苗が花を咲かせるということは、自分の持つエネルギーを開花のために優先的に使うことになるので、株の成長 (新しい枝や葉の形成) が後回しになってしまうのです。

「私は子孫を残すために開花させるの!ベーサルシュートなんて後回しよ!」と薔薇が言っていると想像できますねよ…。

花の咲いた薔薇の新苗を購入したらやるべきこと

では、花の咲いた薔薇の新苗を購入したら直ぐにやるべきことを紹介します。

花が咲いていても薔薇は枯れることはありません。

購入して持って帰ったら、まず最初に次の3点を実施してあげて下さい。

① 花と蕾を切り落とす

まず最初に、花と蕾は切り落としてしまいます。

せっかく咲いているのでもったいない気もするのですが、新苗の成長のためです。

花の姿をカメラで撮影して、香りを楽しんだら、心を鬼にして切り落としましょう!

どこで切るのかというと、下の写真の様に、花・蕾のすぐ下の部分で切り落としてあげて下さい。

何故、花・蕾のすぐ下で切るのかと言うと、株になるべく多くの葉を残すためです。

新苗は、枝が少ないため葉の数も多くありません。

薔薇が光合成をして、次の枝やベーサルシュートを伸ばすためには、葉の数は出来る限り残しておいた方が良いです。

実際に花と蕾を除去した株姿が次の写真になります。

開花した新苗の枝も、枝の半分くらいの位置で切るという意見もあるかと思います。しかし、私個人としては、葉を多く残すために、このような処理が望ましいと考えます。

② 元気の無い葉は少し除去する

次に行うのは元気の無い葉を除去 (整理) することです。

新苗は4月の初旬の段階では、全ての葉が青々とした元気な状態なのですが、花が咲く頃になると一部黄色く変色したような葉が出てきます。

下の写真は、上で紹介した薔薇「シャリマー」の新苗の株元ですが、先端が黄色く変色した元気の無い葉があることがわかります。

このような元気の無い葉は、ハダニが発生した時に真っ先に被害を受ける葉になりますし、今後病気に罹ってしまう可能性も高い状態と言えます。

また、株の成長に伴い、株元の葉が混み合った状態になっていることもわかります。

そのため、元気の無い葉は可能な限り除去してあげることも重要です。

ただし、もし葉の数が少ないような新苗であれば、少し元気の無い葉を残しておくことも選択肢としてアリだと思います。

③ 直ぐに植え替えを行う事 (これが最も重要だと思います)

①②の作業が終わったら必ず植え替えを行ってあげて下さい。これが根を育てるために最も重要な作業です。

鉢植えにするのであれば、今後の株の成長を見越して、6号から7号くらいの大きさの鉢がお勧めです。(あまりにも大きな鉢は逆効果になります。)

また、新苗であっても地植えにして栽培することも可能です。私は今回のシャリマーを地植えにすることにしました。

次の写真が、ポットからシャリマーの株を抜いた時の根鉢の様子です。

4月後半から5月になると、薔薇の新苗の根はポット一杯にびっしりと張っている状況です。

これだけ窮屈になっていると、根の成長が妨げられていることは間違いないので、一刻も早く植え替えを行ってあげる必要があります。

地植えにした状態が下の写真になります。

本当であれば、もう少し広い場所に植え付けてあげたいのですが、限られたスペースで薔薇栽培をしているので仕方ありません…。


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花が咲いた新苗が絶対にダメというわけでは無い!重要なのは植え付け後の管理

花が咲いた新苗はデメリットが大きいということを述べてきたわけではありますが、薔薇の新苗に花が咲いるからと言って、その後の成長に大きな影響が出る訳ではありません。

重要なのは新苗の植え付け・植え替えを行ってあげた後の管理です。

薔薇の新苗に最初の花が咲く時期は、4月から5月にかけての約2カ月くらいです。

それに対して、皆様のお手元で薔薇を栽培する時間はその後に何年間も続きます。

つまり、薔薇の栽培の中でわずか2カ月だけ成長に遅れが出てしまっただけの事なのです。

確かに、新苗が販売される4月から6月は、ベーサルシュートを含む新しい枝が沢山発生する時期です。そのため、花が咲いたことで、ベーサルシュートを1本犠牲にしてしまった可能性はあります。

しかし、新苗の植え付けを行った後に、適切な栽培・管理を行えば、その2ヵ月間は直ぐに帳消しにできるものです。

実際に、上で地植えを行った「シャリマー」ですが、花と蕾を切り落として地植えにした2週間後には、下の写真の様にベーサルシュートが3本も出てきました。これだけ成長してくれれば、花を咲かせたことの影響は小さいと判断しても良いかと思います。

冒頭で、薔薇の新苗は「薔薇の赤ちゃん」と言いました。

しかし、新苗の1年目の成長速度は、薔薇の成長の中で最も劇的に成長する期間でもあります。

そのため、新苗購入時に花が咲いていたというデメリットなんて、直ぐに忘れてしまうくらいに薔薇が成長してくれることは間違いありません!

この記事の終わりに

この記事では、花が咲いた状態の薔薇の新苗について、花が咲いてしまったことによるデメリットの実例とその原因、そして新苗購入直後の取り扱いについて紹介をさせていただきました。

薔薇の新苗はとても若い状態とはいえ、立派な花を咲かせる能力があります。

しかし、株をスムーズに成長させることを考えると、花を咲かせないことが望ましい事は間違いありません。

ただし、花が咲いてしまったからと言って悲観的になる必要は無く、御自宅での植替え・植え付け後に適切な管理をすれば成長に支障が出ることはありません。

重要なのは、植替え・植え付けを行ってあげた後の管理です!

適切な管理をしてあげれば、新苗購入時の成長の出遅れなんて、あっという間に挽回してくれる株に成長しますよ!

この記事で紹介した薔薇「シャリマー」の成長については、また別の記事で紹介しようと思います。

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