青色、濃い紫色、ピンク…大輪、ベル型…様々な色の花・形を楽しむことができる「クレマチス」。
薔薇やクリスマスローズと共に、平成から令和の園芸を彩ってきた人気の園芸品種です。
クレマチスは、薔薇には無い花の色を持つことや、花期が薔薇と同じ時期であることから、薔薇と一緒に育てている方も多いのではないでしょうか?
また、クレマチスにも1年に1度だけ花を咲かせる一季咲きと、年間を通じて何度か花を咲かせる四季咲きの品種があります。私自身、年間を通じて花を楽しみたいので四季咲きを選んでいるのですが、同じ理由で四季咲きを選んでいる方も多いのではないでしょうか?
さて、今回の記事のテーマですが、春と夏におけるクレマチスの成長の違いや花サイズの違いなどを取り上げたいと思います。
薔薇は春と夏で花のサイズや色、花弁数に大きな違いが出てくることが知られていますが、同じく四季咲きのクレマチスについてはどうなのでしょうか?
実は、クレマチスについても、春と夏で成長の具合に違いが出てきます。その詳細を以下で紹介したいと思います。
四季咲きの植物は春と夏で成長が異なる
まず最初に、四季咲きの植物全般に言えることだと思うのですが、春と夏で成長の具合が大きく変化します。
冬が終わり、春を迎えると、花を咲かせる植物にとっては最適な温度である15~20℃の季節になります。
四季咲きのクレマチスや薔薇は、冬の休眠期に蓄えたエネルギーを使い、ゆっくりじっくりと枝や蔓が育ち、蕾もゆっくりと大きく育つので、一年で最も大きく立派な花を咲かせます。春は園芸を趣味にされる方が待ちに待った季節ですね!
しかし、夏になると梅雨明けの時期には30℃を越える気温になり、真夏には35℃かそれ以上に気温が上昇します。
四季咲きの植物にとっては「暑すぎる夏」になります。
新芽の出る速度も速くなり、蕾が出てくるまでの期間も短くなります。そして、蕾もあっという間に開いてしまうため、枝の長さや花の大きさが春と全く異なるようになります。強い日差しが原因で葉が葉焼けを起こし、成長に影響が出てしまうような株も出てきますよね…。
これらの特徴は、日本で育てられている多くの四季咲きの植物に言えることかと思います。
春と夏で花の色や形が全く違うと驚かれる方もいらっしゃるかと思いますが、それが四季咲きの植物であり、それが日本の気候に左右されるものなのだと認識しておく必要があるかと思います。
当たり前ですが、ヒマワリの様に春に芽吹いて夏の終わりには枯れてしまうような一季咲きの植物では見られない特徴です。
春と夏の成長を比較するクレマチスについて
今回の記事で春と夏の成長の違いを紹介するクレマチスは、以前の記事でも紹介した「ソワレ」という品種のクレマチスです。
強剪定タイプの四季咲きのクレマチスとなります。
この「ソワレ」というクレマチスの特徴などについては、下のリンクで紹介していますので、もし詳細をご希望の場合には、こちらの記事をご覧ください。
濃い紫色の花を咲かせてくれる品種で、蔓の長さが2m前後まで伸びていくクレマチスです。
夏の方が蔓の長さが短くなる!
さて、ここからは、実際に春と夏のクレマチスの育ち方の違いを紹介していきます。
まず最初に取り上げるのは「蔓の長さ」です。
以前の記事になりますが、下のリンクでクレマチスの成長速度を測定した結果を紹介しました。
これは春の開花の時の記事なのですが、蔓の長さは概ね2mを越えるような長さまで成長していきました。
しかし、夏の開花の時期には蔓の長さは2mにも満たない1m50cm程度までしか伸びませんでした。
春と夏の開花時の株の状態を比較した写真を下に掲載します。
使用しているオベリスクが1.5mの高さになります。
春の開花の時にはオベリスクの高さを越えて蔓が伸び、オベリスクが無い部分の蔓は下に垂れ下がっている状態になりました。この時、蔓の長さは約2mまで蔓が伸びていきました (左の写真) 。
しかし、夏のクレマチスの蔓は、オベリスクの頂点に達しない状態でした (右の写真) 。
単純に考えて、春と夏で蔓の長さに約50cmの差があることになります。
夏は花のサイズが明確に小さい!
次の変化は花のサイズです。
これは、他の四季咲きの植物にも言えることですが、夏は花が明確に小さいです。
下の写真がクレマチス「ソワレ」の春と夏の花の比較です。
写真にスケールが無いのが申しわけないのですが、夏は平均して直径13cmくらいの花が開花しました。
しかし、夏の開花時には花のサイズが直径8cmまでダウンしました。
蕾の大きさも目に見えて小さく、「これで咲くのかなぁ…?」と心配になるような小ささでした。
ただし、ソワレの場合には花弁数には変化がありませんでした。
薔薇は夏になると花弁数が激減するので、クレマチスも花弁が減るのかと思っていたのですが、クレマチスのソワレの場合には花弁数がもともと6枚と少ないため、夏にはその花弁数に変化がありませんでした。
もしかしたら、花弁数の多いクレマチスでは、夏になると花弁の数に変化が出てくるかもしれません。
夏の葉は大きさが小さく色も薄い…そして構造物に巻き付きにくくなる
3つ目の変化点ですが、葉の状態になります。
春のクレマチスの葉は、大きく鮮やかな緑色をした葉を付けていたのですが、夏のクレマチスの葉は色が少し薄くサイズも小さくなりました。
これは上でも紹介した様に、気温が高くなりすぎていることによるものかと考えられます。
また、もう一つ、クレマチスの葉に関連したことで春と夏で大きな変化が見られました。
下の写真は、春のクレマチスのはなのですが、春には葉が積極的に構造物に巻き付いて蔓を支えようとする動きが見られました。
そのため、少し見ないうちにいろんなところに葉が絡まり、仕立て直すのに苦労します。
しかし、夏は様相が変わりました。葉が構造物に巻き付く力が弱くなっているのです。
これは品種による違いがあるのかもしれませんが、ソワレの場合には夏は葉が構造物に巻き付く力が弱くなります。
下の写真が一つの例ですが、黄色の矢印で示した葉は近くにオベリスクがあるのに、絡みついていないことがわかります。
そのため、夏はなかなか蔓がオベリスクに巻き付かず、何度もクリップで蔓を固定してあげていました。
私の住んでいるのは関西の都市部ですが、クレマチスは日本の夏の暑さに相当堪えているのだと思いますね。
強剪定タイプのクレマチスでは、夏の栽培で注意をすべき点だと言えるかもしれません。
この記事の終わりに
この記事ではクレマチスの成長について、春と夏の違いを紹介させていただきました。
私の栽培環境下でのことですが、夏のクレマチスは春に比べて以下の違いが見られました。
① 蔓の長さが短い
② 花のサイズが小さくなる
③ 葉が構造物に絡みつく力が弱くなる
春と夏の成長を見ると、同じ植物とは思えないような部分もあります。しかし、四季咲きの植物 (特に暑さに弱い種類) を日本で育てる上では、このくらいの変化があることは覚えておくべきかと思います。
もし、皆さんのクレマチスにも、同じような変化があればコメントで教えていただけると幸いです。
また、この記事に掲載できていない夏のクレマチスの特徴などがあれば、コメントで御紹介いただけると幸いです。
では!
【2021/10/27追記】秋には蔓の長さも花の大きさも完全に回復しました
本記事で紹介した春と夏におけるクレマチスの花の大きさの違いですが、秋になると花の大きさは完全に回復しました。
春の花の大きさと秋の花の大きさはほぼ同じレベルになりました。
下の記事で、その詳細を記しています。