薔薇を育てていると、誰もが一度は目にすることがある異常な形をした葉 (形態異常)。
私も初めて薔薇を育てた年は、この突然変異の形態異常が多くみられ、大丈夫かなぁ…と心配になったことを覚えています。
結論から言うと、特に問題は無いのですが、初めて育てられる人は心配になると思いますので、簡単ですが記事に残しておきたいと思います。
薔薇の葉の形状異常 (例)
イングリッド・バークマンの例
イングリッド・バークマンは、薔薇の殿堂に選ばれている有名な薔薇です。
ハイブリッド・ティー系統で深紅の大輪の花を咲かせてくれます。
そんな丈夫で由緒ある薔薇にも形態異常の葉は現れます。
上に写真の例は、2020年4月の一番花の花枝に付いた形態異常ですが、葉っぱの真ん中あたりがくしゃくしゃになっているのがわかります。蕾の付いた花枝の5枚葉で、枝に近い方の葉でした。
プラム・パーフェクトの例
プラム・パーフェクトはドイツのコルデス社が2009年に発売した薔薇です。
フロリバンダ系統で、中輪の紫色の薔薇を咲かせてくれます。
上の写真も2020年4月の一番花の枝に現れた形態異常の葉です。
イングリッド・バークマンの例と同じように、葉の中腹部に形態異常が出ていました。5枚葉の真ん中の葉です。この例は、比較的軽度の形態異常です。
ミニ薔薇 (ポールセンローズのノヴァ) の例
ポールセンローズのノヴァというミニ薔薇の葉に出てきた形態異常も紹介しておきます。
葉の色がプラム・パーフェクトと似ているのですが、ノヴァはピンク色の中輪の花を咲かせるミニ薔薇です。ミニ薔薇にも同じように出てきています。
形状異常は様々な種類の薔薇に現れる
上で紹介した例では、
・イングリッド・バークマン (ハイブリッド・ティー系、深紅の大輪)
・プラム・パーフェクト (フロリバンダ系、紫色の中輪)
・ノヴァ (ミニ薔薇、ピンク色の中輪)
という3種類を紹介しました。
敢えて系統や花の色、花の大きさを変えて紹介をさせていただきました。つまり、どんな系統の薔薇にも形状異常の葉が出てくるのです。
また、花の色や花の大きさにも関わらず出てきます。丈夫で有名な薔薇にも出てきますし、今回紹介していないツル薔薇にも出てきます。
葉の形状異常の原因は?
葉の形状異常が現れる真の原因については、決定的な原因というのは明らかになってはいないと聞いたことがあります。私自身も薔薇の本や植物の本を読んでいますが、参考になるような内容が見つけられていないのが現状です。
しかし、これが原因ではないか?と考えられていることはありますので、紹介しておきます。
細胞分裂の過程の突然変異
最も有力なのは細胞分裂の過程で起こる突然変異だと考えられます。
薔薇の花枝は、先端が細胞分裂を繰り返し葉や蕾を形成していきます。その過程で、上手く正常な葉の形状にならなかったものが形状異常として現れてきます。
細胞分裂ということで考えると、成長速度が速い薔薇と遅い薔薇がありますが、私の経験上は成長速度の速い薔薇の方が形状異常が現れやすいと感じます。
様々な薔薇に現れると書きましたが、頻度や起こりやすいという点では成長速度や樹勢というところは関係がありそうな感覚があります。
これは細胞分裂の速度が速く、葉の形状が正常に整う前に成長してしまうからかなぁ?と個人的には思っています。
新芽の初期に虫や害虫に襲われた
これは不運な場合ですが、新芽というのはどうしても虫に狙われやすいです。
葉が柔らかく瑞々しく、栄養も豊富なので…。
そのため、花枝が伸びる成長の初期に虫にかじられていたりすると、その部分が形状異常として残ってしまう場合があります。
春の芽吹きのシーズンにきちんと薬剤を散布して害虫予防をすれば防げるものかと思います。
葉の形状異常は問題では無い
形状異常となってしまった葉が、どうしても見栄えは良くないものです。
しかしながら、光合成をおこなうという基本的な能力は備わっている葉になります。ですので、葉としての役割には問題はありません。
そのまま残しておき、光合成を担当する大事な一員として考えましょう。薔薇は成長する速度も速く、どんどん葉を展開させていきますし、剪定をするとすぐに新芽を展開させていきます。
その中で1枚や2枚は形状異常が出てしまうものです。薔薇の葉の個性として考えておけば良いかと思います。
また、葉の形状異常が出やすい株は、良くない株なの?という疑問もありますが、私の経験上ですが問題ないと思っています。
葉に形状異常が起こりやすく、成長力も低く、元気のない株であれば、株自体が弱っている証拠なのかもしれません。
しかし、毎年花をきちんと咲かせ、新しいシュート (新梢) も伸ばしているのであれば葉の形状異常は心配することはありません。私の管理する薔薇たちは、形状異常が見られますが、どれも元気に毎年花を楽しませてくれています。
また、形状異常の葉が耐病性に弱いということも感じたことがありません。黒星病になる時には、形状異常の葉だけではなく健全な形状の葉も黒星病になります。また、葉が黄色くなって落葉するタイミングも他の葉と同じタイミングです。ただただ、形状が少し異常を来しているだけで、その他のことは正常な形の葉と何の違いも無いと思います。
本記事のまとめ
この記事では、薔薇栽培の中で必ず目にする「葉の形状異常」について記載させていただきました。
その形状異常の原因は、まだ完全に解明されていないのが現状かと思いますが、細胞分裂の過程や害虫による被害などが主要因かと考えています。
しかし、形状異常の葉が出ても、光合成をする能力はありますし、耐病性や枯れるタイミングなども全て正常な形の葉と同じ能力を持ちます。薔薇栽培ではしばしば見られる現象なので、特に気にせず個性と思って育てていただければ大丈夫だと思います。