日当たり (日照条件) が薔薇の成長に与える影響を実験調査

薔薇栽培を既に楽しんでおられる方だけではなく、これから薔薇栽培を趣味にしようとお考えの方も共通して疑問に思っているであろうテーマがあります。

それは「日当たり (日照条件) は、薔薇の育成にどれくらい影響を与えるのか?」という疑問です。

日本の住宅事情 (特に市街地) では、お隣の家との距離が近かったり、高いマンションやアパートが建っているために日照時間を確保することが難しいのが実状です。

園芸を楽しんでおられる方の中には「日当たりがもう少し改善したら植物がもっと成長するのに…」と感じておられる方も多いのではないでしょうか?

特に花の女王と言われる薔薇となると、日当たりが悪いと立派な花を咲かせることが難しく、花数も少なくなってしまいがちだと言われています。また、病気の発症にも影響が出るということも聞きます。

そのため、日照時間が確保できないことを理由に、薔薇栽培を諦めてしまっている方もおられるのではないかと思います。

では、実際のところ、日当たりは薔薇の育成にどれくらい影響を与えるのでしょうか?

日照条件の違いで、薔薇の成長にはどれくらいの変化があるのでしょうか?

この記事では、ミニ薔薇を複数株用意し、異なる日照条件で育てた場合の成長の違いを調べてみましたので、その記録を詳細に紹介したいと思います。

ミニ薔薇ではありますが、薔薇栽培を楽しむ上での日照条件に関する参考例となると思います。


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日照条件は薔薇栽培を楽しんでいる方が特に気にする項目

薔薇栽培を始める際や、実際に薔薇を育てていく中で、薔薇の教科書的な書籍を目にされることがあると思います。

または、近年ではYoutube動画で薔薇栽培を勉強されている方も多いかもしれません。

それら情報源の中では、日照条件というのは「肥料」、「水やり」、そして「剪定」に並んで重要なファクターであると紹介されていると思います。

「薔薇は朝日を浴びせたほうが良い」

「一日当たりの日照時間は少なくとも○○時間確保したい」

このような記載や紹介を目にしたことがある方も多いと思います。

そのため、薔薇を栽培されている方のほとんどが日照条件の良い場所を選んで、薔薇の栽培をしているのではないかと思います。

薔薇は大きな花を咲かせ、花弁数が多く、花弁の厚みも厚いため、光合成を行ってしっかりと成長させないと様々な不具合が出てしまうのは事実なのかと。

私自身も大切な薔薇をなるべく日照条件の良い場所で育てたいため、南向きの玄関先などに薔薇の鉢を置いており、家族からは「鉢植えが邪魔!」と怒られることもあります…。

では、日照条件が実際にどのくらい薔薇の成長に影響を与えるのか?ということを自分で確かめてみようと思い、今回の実験を実施するに至りました。

どのような実験を行うのか? (日照時間を変化させた実験)

まず最初に、どのような実験を行うのか?という点についてお話していきたいと思います。

下でも記載しますがミニ薔薇の「アロハ」という品種を用いて、異なる日照条件の下で育てるという実験を行っていきます。

日照条件の異なる場所で4株を栽培します -日照条件の詳細-

今回の実験では、4つの日照条件を用意してミニ薔薇を栽培していきます。

下の図が私の家の簡単な平面図となります。

私の家の土地の中で、日照条件が異なる場所を4つ選び、ミニ薔薇を栽培していきます。

上の図にある①②③④と記した場所の日照条件が次の通りとなります。

① 玄関前で朝から夕方まで日光が当たる場所 (最も日照条件の良い場所)

② 家の玄関の右側で、午前中は日光が当たるが、午後は全く日光が当たらない場所

③ お隣さんの家に近い場所で、午前中は日光が当たらないが、午後から日光が当たる場所

④ 家の北側で直射日光がほとんど当たらない場所 (一応、風通しが良く明るい場所)

この①~④の日照条件でミニ薔薇を栽培した時に、成長にどのような影響が出てくるのかを確認していきます。

日照条件以外の栽培環境は全て同じ条件とします

日照条件以外の栽培環境については、基本的に全て同じ条件で育てていきます。

土が乾いた時点で水やりを行い、肥料も同じタイミングで施肥を行います。

また、屋根は無く、雨ざらしの状態での栽培となり、培養土と元肥も同じものを使用しています。

ただし、今回用意した株の個体差を考慮することは困難なので、株の個体差は考慮しないこととします。

実験の期間について

実験の時期と期間としては以下の通りです。

苗の購入: 2022年2月19日 (土)

苗のビニールポットへの植替え: 2022年2月20日(日)

異なる日照条件での実験の開始: 2022年2月26日 (土)

実験期間: 2022年2月26日~2022年5月24日

実験で確かめたいことは?

今回の実験で確かめたいと思っていることは、以下のような項目です。

・成長速度の違いや育成の状態

・蕾が出来るまでの過程の差異 (新芽の長さ等)

・病気の発症の違い

・花の大きさや花弁数、そして花の色

全ての項目で明確な違いが出るかはわかりませんが、これらの項目で明確な差異が生まれてくれると嬉しいと思っています。


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実験に使うミニ薔薇苗の準備

では次に、実験に使うミニ薔薇の御紹介です。

実験のための植替えや、実験前の苗の処理方法についても記載しておきます。

実験に使用した薔薇はミニ薔薇の「アロハ」

今回は、近くの園芸店で販売されていたミニ薔薇の「アロハ」という名前の品種を用いて実験します。

購入した時点では花は咲いていませんでしたが、今にも咲きそうな大きな蕾が付いている株でした。

薔薇には数えきれないくらいの品種があるので、どれが典型的な品種かわからなかったのですが、大苗を4株購入するわけにもいかないので、ミニ薔薇を適当に選んでみました。

ただ、ミニ薔薇「アロハ」は茎が太めで茎の直立性が良い品種だったので、比較的強そうなミニ薔薇という印象でした。

ミニ薔薇なので、1つのポットに4~5本の挿し木がしてある状態で販売されていました。

ミニ薔薇「アロハ」ビニールポットに植替え (蕾は摘蕾で除去)

それでは、購入してきたミニ薔薇「アロハ」の植替えを行います。

今回は1ポットに5本のミニ薔薇が挿し木してあるものだったので、その中で4つの挿し木苗を実験に使うこととしました。

まず、下の写真の様に、ポットに植えられた挿し木苗を分離していきます。多少根が切れてしまう事は仕方ないのですが、なるべく根を切らないように丁寧に分離します。

(この時、根が乾かないように、常に湿らせておくことに注意しています。)

無事に分離が出来たら、それぞれの苗をビニールポットに別々に植えていきます。

培養土は住友園芸さんのマイローズシリーズの培養土を使用しました。

そして、次に挿し木苗に付いていいる蕾を全て切り落としていきます。

「せっかく蕾が付いているのに…」と思われるかもしれませんが、実験のためには不要な蕾なので、切り落としていきます。

そして、最終的には次の写真の様に、全ての挿し木苗から蕾を摘蕾しました。

挿し木株のサイズ感は全て合うように調整しています。

この状態から実験をスタートしていくことになります。

ビニールポットに植え替えてから1週間は同じ条件で栽培

実験に使うミニ薔薇の挿し木苗が準備できたところですが、直ぐに実験を始めるのではなく、1週間は全ての挿し木苗を同じ環境で育てる事としました。

理由としては、植え付けた直後は根が培養土に馴染んでいないと思いますので、株を安定させるための期間として1週間を取りました。

この1週間の間は、午前から夕方まで直射日光が当たる、最も栽培に適した場所で管理しておきました。

そして、1週間後になりますが、ビニールポットに①~④のシールを張り (下の写真参照) 、それぞれの日照条件の場所に配置して実験をスタートしました。

以下では、実験を開始した日からの、成長の違いを詳細に見ていきたいと思います。

実験開始から1ヶ月後 (3月15日) の様子

それでは、実験開始から概ね1ヶ月が経過した3月15日の各株の様子を紹介します。

実験に使用した4株を全て並べると成長の様子が分かりにくいと思うので、それぞれの株について、実験開始日と1カ月後の様子を並べてみました。

まず最初に、①番の最も日当たりが良い場所で栽培したミニ薔薇が下の写真になります。

明確に言えることは、葉の色が銅葉の様に赤くなったことです。これは、植え付けを行ったのが2月中旬の寒い時期だったので、温室栽培されたミニ薔薇が身を守るためにアントシアニンを生成した結果では無いかと思います。

また、小さいながらも、挿し木の頂点に新芽が見えていることもわかります。

次の写真は、②の午前中だけ日光が当たる場所のミニ薔薇です。

基本的には、①の薔薇と同じですね。

葉の色が赤みを帯びて、新芽が顔を出し始めている様子です。

次の写真は③の午後だけ日光が当たる場所のミニ薔薇です。

こちらの薔薇も①②と同じですね。

最後が④の全く日光が当たらない場所のミニ薔薇ですが、こちらも①②③のミニ薔薇と同じような状態になります。

もう少し明確な違いが出るのではないかと予想はしていたのですが、実験開始から約1ヵ月では、どの株も成長に大差はないと言えるかと思います。

個人的な予想ですが、2022年3月初旬はまだまだ気温が低い日が続いていたこともあり、ミニ薔薇が休眠状態になって成長に差が出なかったのではないかと考えられます。


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実験開始から2ヶ月 (4月21日) で成長に大きな差が生まれた!

上記の通り、実験開始から1ヶ月では各日照条件のミニ薔薇の成長には、それほど大きな差が生まれませんでした。

しかし、実験開始から2ヵ月が経過した4月21日には、明確な成長の差が出ていることが確認出来たのです!

その詳細を、以下で紹介したいと思います。

まず最初に①の最も日照条件の良い場所のミニ薔薇ですが、下の写真に示すように、2つの蕾が形成されていることが確認されました。

続いて、②の午前中だけ日光が当たる場所のミニ薔薇ですが、次の写真の様に1つだけ蕾が形成されています。

また、③の午後だけ日光が当たる場所の薔薇についても、次の写真の通り、蕾が1つだけ確認出来ました。

そして、最後は全く日光の当たらない④のミニ薔薇ですが、こちらは株が成長していることを確認できるものの蕾の形成は確認されませんでした。

株の大きさを見れば、蕾が成長してもおかしくない大きさになっているます。しかし、実験開始後2ヶ月では、まだ蕾は形成されていません。

このように、実験開始から約2ヶ月が経過した時点で、ミニ薔薇の成長に明確な差が生まれ始めています。

それぞれの株が持つ特徴があるとはいえ、蕾の数にこれだけ明確な違いが出るとは驚きでした。

薔薇の成長や蕾の形成には日照時間が重要な要素になっているということが見て取れる結果が出てきましたね。

引き続き、花が咲くまで実験を続けていきます。

実験開始から2.5ヶ月後 (5月4日) の様子

さて、蕾の成長が始まったこともあり、観察の頻度を少し上げて2.5ヶ月後の様子も紹介しておきます。

この時点で、各株の状態を比べると、とても興味深い結果が見えてきました。

下の写真は、各条件で育てている4つのミニ薔薇を並べたものです。

左から順番に①最も日光が当たる条件、②午前のみ日光が当たる条件、③午後のみ日光が当たる条件、④日光が当たらない条件となっています。

この写真を見ると、成長の違いが明確にわかると思います。

①の最も日光が当たる条件は、葉の数も多いですし、葉の色も最も良い緑色をしています。そして、脇芽の蕾も成長したことで合計で6個の蕾が形成されています。また、茎の太さも明確に太く、がっちりとした株に成長していると言えます。蕾の成長が最も早く、既に赤色の花弁も見え始めています。

②③の半日のみ日光が当たる条件を比較すると、この2つにそれほど大きな差は見られません。しかし、①と比べると、背丈や葉の数などが少し悪いことがわかります。また、それぞれの株に蕾が3つずつ形成されていました。

そして、④の全く日光が当たらない条件のミニ薔薇ですが、最も背丈が伸びていますが葉の数は明確に少なく、茎も最も細いことがわかります。これは、株自身が日光を求めて背を高くするように成長した結果では無いかと思います。蕾は2個確認出来ましたが、蕾の成長は最も遅いと見て取れます。

また、病気に関しては、現時点で全ての株に関して「黒星病」や「うどんこ病」などは見られていません。

約3カ月の実験期間で全ての株が開花を迎える

さて、実験開始から約3カ月が経過した2022年5月24日になりますが、実験に用いた全ての株が開花しました。

開花時の各株の様子に関して、以下では開花までの日数や花の大きさなどを紹介していきます。

開花時の株の状態の比較

まず最初に、開花時の株の様子を比較してみたいと思います。

下の写真は、左から順番に①最も日光が当たる条件、②午前のみ日光が当たる条件、③午後のみ日光が当たる条件、④日光が当たらない条件となっています。

一つ上の項目でも記しましたが、やはり株の大きさや葉の大きさ等、全てにおいて日当たりの良い条件のミニ薔薇が良い生育を見せていますね。

日照条件が開花日に与える影響について

次に各株の具体的な開花日について記していきます。

① 朝から夕方まで日光が当たる場所:2022年5月15日

② 午前中は日光が当たるが、午後は全く日光が当たらない場所:2022年5月19日

③ 午前中は日光が当たらないが、午後から日光が当たる場所:2022年5月21日

④ 直射日光がほとんど当たらない場所:2022年5月23日

このように、最も日当たりの条件が良い場所が最も速く開花の時を迎えました。そして、日当たりが悪くなるにつれて、開花日が遅くなっています。

最も日当たりの悪い④の条件に付いては、日当たりの良い①の条件に比べると1週間以上も開花が遅くなりました。

日照条件が花の大きさに与える影響ついて

続いて、日照条件がミニ薔薇の花の大きさ (花の直径) に与える影響を調べてみました。

下の写真の様に、花が概ね開き切った時の花の直径を物差しで測定しています。

さて、花の直径にはどのような違いが出たのでしょうか?

以下で、その実測値を記載します。

① 朝から夕方まで日光が当たる場所:約7cm

② 午前中は日光が当たるが、午後は全く日光が当たらない場所:約6cm

③ 午前中は日光が当たらないが、午後から日光が当たる場所:約6cm

④ 直射日光がほとんど当たらない場所:約5.5cm

皆さんも容易に予想が出来たのではないかと思いますが、①の最も日照条件の良いミニ薔薇が最も大きな花を咲かせました。

その差は明確で、④の日光が当たらない場所にくらべて1.5cmも大きいのです。

また、花の色についてですが、今回の実験ではそこまで大きな変化は見られませんでした。アロハと言うミニ薔薇の特徴なのかもしれません。ただ、品種によっては日当たりで色が変化する薔薇もあるかと思います。

さらに、薔薇の病気発症についても、今回の実験では明確な差が見られませんでした。梅雨の時期などには差が出てくるのかもしれませんね。

本記事のまとめ

本記事では、日照条件が薔薇の成長に与える影響について、ミニ薔薇の「アロハ」という品種を用いて実験した結果を紹介しました。

日当たりが良い場所、午前中のみ日光が当たる場所、午後のみ日光が当たる場所、日光の当たらない場所という4つの条件で同じミニ薔薇を育てましたが、以下の結果を得ることが出来ました。

・日当たりが良い条件の方が、成長が速く、葉が多くなり、茎も太くなる。

・日当たりが良い条件の方が、開花までに必要な日数が約1週間程度早い。

・日当たりが良い条件の方が、花の大きさが明確に大きくなる。

このように、日照条件が良い株の方が、育成の状態が明確に良いということがわかりました。

この結果は、容易に予想できることではありますが、実際に実験をして確認をしてみると、これだけ大きな差が生まれたことに驚かされました。

ただ、もう一つ、特記しておきたいことがあります。

それは、日当たりが悪くても、薔薇は咲いてくれるということです。

今回の実験を開始した当初、直射日光がほとんど当たらない条件だと、ミニ薔薇も開花しないのではないかと予想していました。

しかし、開花時期が遅く、花の大きさは小さくとも、日当たりの悪い場所のミニ薔薇も咲いてくれました。

この結果は、日照条件の悪さで薔薇の栽培を諦めている方にとって、勇気づけられる結果では無いかと思います!

薔薇はとても強く、育成が旺盛な植物です。

日照条件を理由に、薔薇の栽培を諦める必要は無いのではないでしょうか!?

少し長い記事になりましたが、本記事が薔薇栽培を趣味にされている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

また、以下のリンクでは、肥料がミニ薔薇の成長に与える影響も実験して結果を紹介しております。こちらの記事も、よろしければ御確認下さい。

それでは。

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