春の1番花が4月に咲き、成長が早い薔薇は6月には2番花が咲きます。
四季咲きの薔薇は、特に開花の調整をしなければ、夏の高い気温が影響して次々に蕾を上げて、開花させていきます。
薔薇の花を多く楽しむという観点では、年間を通じて多く咲いてくれた方が嬉しいのですが、夏の季節に入ると薔薇の株には大きな変化が出てくると感じます。
花の大きさ、花の色、株の成長…様々な観点で考えると、開花させた方が良いのか?蕾は摘心してしまった方が良いのか?迷うことが多いです。
この記事では、夏の薔薇の特徴や私が実践している管理方法を紹介しておこうと思います。御参考になれば幸いです。
夏に咲く薔薇の花の特徴
まず、夏の気温の高いシーズンに咲く薔薇について、その特徴を記載しておきたいお思います。
花が小さく花弁数が少ない場合が多い
まず最初の特徴として、夏に咲く薔薇は花の大きさが春に比べると確実に小さくなります。
これは、夏に伸びる新芽 (花芽) の成長速度が春に比べて速いため、あっという間に蕾が形成されてしまうためです。
春の1番花の場合、冬の間に蓄えた養分を使って、比較的気温の低い中、ゆっくりと茎や葉を展開させながら蕾が形成されるため、蕾自体が大きく花弁数も一番多い状態になります。
しかし、6月以降の薔薇は、わずか1か月も経たないうちに蕾が膨らみ、開花しようとするものもあるくらいです。
蕾がじっくりと大きく成長せず、短期間で咲いてしまうため、大きさは小さく花弁数も少ない薔薇になります。
「夏の薔薇」は「春の薔薇」に比べて美しさが乏しいと言われることがありますが、その理由がこの現象によるものです。
花芽が伸びてから咲くまでの期間が短い
上で記載をしたことの再掲になりますが、夏薔薇は蕾が形成されるスピードが非常に速いです。
特に7月8月の高温環境の中では、蕾を摘心しても2週間経たないうちに新しい蕾が成長点から出てきます。
このような成長は、私の栽培環境下では四季咲き性が比較的強い薔薇やフロリバンダ系の薔薇で顕著に見られています。
僅か2週間で蕾が作られても、本当に小さな花しか咲かないので、咲かせる意味が無いなぁ~と思いながら8月は摘心を繰り返しています。
春と比べて色が変わる
夏の花のもう一つの特徴は色が出にくいことです。
本来は色が濃く出る部分なのに、色が薄くなったり、花全体の色やグラデーションも変わってきます。
良い例が無かったのですが、下にジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコの例を写真で載せておきます。
左側は春の1番花で、右側が昨年試しに咲かせてみた8月前半の3番花です。
見て分かると思うのですが、花弁の色自体が大きく異なります。
春の開花時には花弁のピンク色の部分が多いのですが、夏の花の時には花弁の縁だけがかろうじてピンク色になっています。
また、分かりにくくて申し訳ないのですが、花弁数が夏の方が少ないです。
ジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコは、とても花の形も美しい花なので、夏の花も綺麗なのですが、やはりピンク色が鮮明に出てくる春の方が、見た目が豪華に思えます。
夏に咲かせないメリットは?
夏の薔薇、特に3番花以降のの花を咲かせないメリットはあるのでしょうか?
一般的に言われているベーサルシュートの発生に加えて、耐病性の観点でも咲かせないことの意味があるのだと思っています。
ベーサルシュートの発生を期待
夏の時期は、薔薇にとっても暑さが厳しいシーズンでもあるのですが、成長する勢いがあります。
そのため、薔薇を咲かせず蕾が小さな時点で摘心することで、蕾の成長にエネルギーや養分を使うのではなく、株の充実、特にベーサルシュートの発生を誘発できるという利点があります。
青々とした葉が多く茂り、日差しも多いため光合成も盛んに行われるので、養分を新しい枝の発生に使うことができます。
私の経験上ですが、8月一杯くらいまではベーサルシュートやサイドシュートも多く出やすいので、摘心によるエネルギーの蓄えは良い影響があるのだと思います。
耐病性を上げることが出来る可能性
薔薇の病気で最も発生頻度が高いものは「黒星病」で間違いないかと思います。
この黒星病は、比較的株の勢いが落ちている時期に出やすくなります。
例えば、春の一番花の後はエネルギーを使い果たすので、黒星病に最も気を遣わなければならない時期だと言えます。
黒星病は、株元に近い位置の葉から発生しますが、これは株元に近い位置の葉の方が養分をもらうことが出来ず、葉の耐病性が落ちているためです。
そのため、花を咲かせず、養分を株の充実に使うことで、株全体が黒星病に対して耐性を維持することができるのではないかと思います。
私の栽培経験の中でも、春の1番花後の黒星病は最も出やすく、夏の間は実はそこまでひどくなったことがありません。毎年7月と8月は摘心をしているので、その効果が出ているのかと思っています。
夏に咲かせるメリットは?
夏に咲かせるメリットは「花を楽しめる」ということに尽きると思います。
例えば、玄関先で鉢植えで薔薇を育てている場合、お客さんをお迎えする玄関なので出来れば花が常に咲いていて欲しいものです。開花数が増えれば、他の草花と共に育てることで、玄関先に花が無くなることがなくなります。
また、切り花で薔薇を楽しんでいる方も、なるべく咲いてくれた方が年間を通じて部屋の中を彩ることもできます。
夏の薔薇は春に比べると豪華さに欠けると言われますが、それでも花の中では女王に君臨する花ですし、主役になれることは間違いはありません。
これから薔薇の栽培をやってみようと思われる方は、一度夏に咲かせてみて、どんなものなのかを確認して、今後の管理 (咲かせるか咲かせないか) を決めても良いかと思います。
私自身は2番花までは咲かせ、それ以降は秋まで咲かせません
私自身ですが、上でも少し触れましたが、2番花までは咲かせて楽しんでいます。
しかし、7月以降の3番花については、蕾が出てきた時点で摘心をしています。
私が住んでいるのは関西の都市部ですが、夏の気温は非常に高いです。35℃くらいになるのは当たり前で、薔薇にとっては相当厳し環境だと言えます。
花の大きさが小さいだけでなく、葉の大きさも小さく、花茎の長さも短いため葉の数自体も少ないです。
そのような状態で夏の薔薇を咲かせると、どうしても株の体力の消耗が激しいことを経験しているので、7月8月は咲かせないようにしています。
もう少し涼しい地域 (最高気温が30℃程度) でしたら、咲かせても問題は無いのかもしれませんが、都市部での薔薇栽培では咲かせない方が良いのではないかというのが私の意見です。
この記事の最後に
この記事では、夏に薔薇を咲かせるべきか?という観点で、夏の薔薇について私の意見を交えながら書かせていただきました。
ここ数年、日本の夏の最高気温がどんどん上昇しており、夏のシーズンは人間だけではなく薔薇にとっても厳しいシーズンになっているのが現状です。
夏の薔薇は成長が早く、蕾を形成するのに要する期間も短いため、花が小さく花弁数が少ないという特徴があります。また、花の形や色も変わることが一般的です。
そんな夏の間に花を咲かせないことで、株自体が充実し耐病性を維持することができるので、7月8月は咲かせない方が良いのかと考えます。
しかし、夏に薔薇が体力を消耗したとしても、薔薇は強い植物なので水切れを起こしたり害虫被害 (カミキリムシの幼虫) に合わなければ枯れることは無いです。そのため、栽培される皆様の考え方やライフスタイルもあるかと思いますので、それに合わせて栽培することも「趣味」だと思います。