春の薔薇の開花シーズン…。
それは、薔薇栽培を楽しんでおられる方にとっては、1年で最も心が躍る時期です。
一年の中で薔薇が最も大きく・美しく咲くのが春ですので、4月になると毎日の様に薔薇の状態をチェックしたり、開花した薔薇の写真をスマホにおさめている方も多いのではないかと…。
私自身、今年も4月後半から5月の終わりまで、次々と開花する薔薇の花を毎日の様に楽しむ日々が続いておりました。
そんな心躍る開花シーズンが終わる5月末、薔薇の株は花が無くなり葉だけの状態になります。
綺麗に咲いてくれた薔薇達にお礼を言うタイミングでもありますが、それと同時に開花後の管理をしっかりと行うタイミングでもあります。
この記事では、開花後の薔薇 (本記事では「シェエラザート」) を例に取り、春の開花後の株の状態や管理すべき項目を、私の経験を基にして紹介していきたいと思います。
春の開花が終わった株の例 -シェエラザート-
さて、春の開花後の薔薇の例を一つ挙げたいと思います。
私のブログでは頻繁に登場してもらっておりますが、「シェエラザート」となります。
下の写真は、春の開花が概ね終わった5月後半の様子になります。
春の開花期間中は、多くの花を咲かせてくれて、今年も本当に楽しませてくれました。
そんなシェエラザートも葉だけの状態になっております。
このシェエラザートを例に取り、春の開花後の管理方法を紹介していきたいと思います。
春の開花が終わった薔薇は疲労困憊の状態
春の開花が終わった薔薇は、春の大仕事を終えて非常に疲れている状態といえます。
人間に例えるなら … 例えば、長距離走を走り切った後のような状態です。
まさに「疲労困憊」という状況。
私自身は長距離走が苦手なのですが、高校時代に体育の授業で15㎞を走った経験があります。
その時は、授業の後、1週間くらい筋肉痛と疲労が残っていたような記憶があります。
そのため、開花した後の薔薇にも同じように様々な症状が出る可能性があります。
この状態を早く回復させるためも、春の開花後の管理はとても重要なものになります。
春の開花が終わった後は、年間を通じて最もベーサルシュートが出やすい初夏を迎えるので、早く薔薇を回復させることが大切であることは言うまでもありません。
春の開花後の薔薇は葉が落ちる場合がある (病気ではない)
上記の通り、春の開花後の薔薇には様々な症状が出てる可能性があります。
その代表的なものが「葉の変色」「落葉」かと思います。
春の開花シーズンは元気で青々とした葉を茂らせていたのに、開花が終わった5月中旬から葉が黄色くなってしまう品種があります。
今回紹介するシェエラザートも、毎年、その症状が出てきます。
下の写真がその症状です。
株を上から見ると、黄色くなった葉が目立たないのですが、横から見ると下の写真の様に、黄色く変色した葉が多くみられるのがわかるかと思います。
葉が黄色くなる姿を見ると、「あれ?これは黒星病では?」と思われる方も多いかと思います。
しかし、「葉が黄色くなる=黒星病」では無いです。
薔薇の葉は、水切れした際や役目を終えた葉が、鮮やかな黄色になって落葉することがあります。
今回は開花を終えて株が疲れ切った状態になったため、薔薇が自ら葉の一部を落葉させていると考えて良いかと思います。
次の写真を見ていただくとわかるかと思いますが、黒星病の典型的な「斑点」は見られていません。
特に、株元に近い位置の葉は、優先的に養分をもらう事が出来ないため、最も枯れ落ちやすい葉であると言えます。
もしかしたら、皆様の育てている薔薇の中にも、このように株元の葉だけが枯れてしまっている品種があるかもしれません。
もちろん、品種だけに依存したことでは無く、栽培環境や水やり、肥料などにも依存している可能性は十分あります。
そして、このように黄色く変色した葉は、緑色に復活することはありません。
時間が経てば、落葉して地面に落ちるので、早めに除去してあげることがお勧めです。
春の開花後は株を整理する大チャンス!
見出しとして「春の開花後は株の整理をする大チャンス!」と記載しましたが、私自身はまさにその通りだと考えています。
開花が終わっているので、開花前の薔薇の様に神経質になることなく手入れを進められます。
(開花前の薔薇は、手入れをすると蕾が折れてしまったり、下手に手入れをすると蕾の成長が止まったりすることもあるので…。)
ここからは、開花後の株の整理として、合計で4つの項目を紹介しておきます。
① 葉の整理(葉の数を減らす)
上で記載した通り、春の開花後は葉が黄色く変色することがあり、それらの葉は早めに除去していくことが必要です。
しかし、葉が黄色くならなかった薔薇については、葉が減るタイミングが無いため、必要に応じて葉の数を故意に減らすという検討も必要です。
春の開花期は、冬の休眠期に貯めたエネルギーを一気に爆発させるため、枝の数が短期間で最も増加する時期といえます。そのため、葉の数も非常に多くなります。
冬の剪定が少なかった場合には、株の至る所から枝が出てきて、特に株元が葉で混雑していることが多々あります。
そのような場合、次にやってくる梅雨や夏の暑い時期に「黒星病」や「ハダニ」の被害を受けやすい状況になる可能性が高くなります。
その懸念を考慮し、春の開花後の時点で葉の数を減らすことも考えるべきかと思います。
② 出開き・ブラインドの除去
次は「出開き」と「ブラインド」の処理です。
これも春の開花後にお勧めのお世話です。
「出開き」と「ブラインド」については、下の記事で詳しく紹介しておりますので、こちらが御参考になれば幸いです。
「出開き」とは下の写真に示すように、発芽点から葉だけが展開して茎が伸びなかった部分の事を言います。
この部分は、茎が無いため、蕾も形成されず、葉だけが展開している状況です。この出開きは、放置しておいても花は咲かない部分になりますので、葉が混み合っている場合には除去してしまっております。
次の写真は、葉が一枚だけ発生した「出開き」の状態の例となります。
これを放置しておいてもハダニの被害に合う可能性が高いので、除去してしまった方が無難ですね。
今年の春のシェエラザートには、「ブラインド」となった枝が奇跡的に無かったのでブラインドの例は掲載できませんが、ブラインドの茎についても剪定対象として考えて良いと思います。
ブラインドになってしまう枝に共通して言ことは、基本的に「枝が細い」ということです。
元気よく伸びて花を咲かせる枝は太くがっしりとしていますが、ブラインドになる枝は花を咲かせる枝に対して1/2くらいの太さしかない場合が多いです。
そのため、ブラインドになった枝を1/2だけ残して剪定しても、次も花が咲かない例が多いです。
したがって、ブラインドになった枝も、葉や茎の量を見ながら、根元から剪定しても良いかと考えます。
③ 枯れた枝の剪定
3つ目は枯れた枝の剪定です。
春の開花後は薔薇が疲れている状態となるため、養分が送られない茎の一部が枯れ落ちて変色することが多いです。
下の写真が、その一例となります。
冬の剪定で発芽点の残らかなった枝の頂点付近に多い症状ですが、茎が黄色やオレンジ色に変色して枯れている状態となります。
この部分は放置しておいても良い事は無いので、発見したら直ぐに剪定してしまいましょう!
④ 咲かなかった蕾の除去
4つ目は「咲かなかった蕾」を除去することです。
「咲かなかった」というよりも「咲けなかった」と表現する方が正しいかもしれません。
下の写真がその一例となります。
薔薇の蕾は、基本的には新しく伸びが枝の先に形成されます。
しかし、上の写真の例では、発芽点から直接蕾が出てきています。
このような蕾は、春の開花シーズンの後半に現れやすいですが、咲かない場合も多いですし、咲いても花が小さい場合が多いので除去してしまいます。
この花を咲かすことにエネルギーを使わせるよりも、6月に発生しやすいベーサルシュートにエネルギーを使ってもらった方が効率的かと思います。
梅雨を迎える準備も進めましょう (適切な薬剤使用も考慮)
さて、ここまでは春の開花後の薔薇のお世話の話をしてきましたが、春の次には薔薇にとって試練の時期となる「梅雨」がやってきます。
「黒星病」や「害虫」が最も出やすい時期となり、多くの薔薇愛好家の皆様を悩ませる時期だと言えます。
そのため、適切な薬剤の使用も視野に入れて良いかと思います。
私自身は最近は農薬を最小限にとどめ、使わない時期の方が多いくらいですが、薬剤の使用は個人の自由なので、薬剤を使用したければ使用して良いと思います。
薬剤を使用することで黒星病の発生・蔓延を防げるのは確かですし、オルトランを撒けば害虫の被害を抑制することが可能です。
薬剤の使用は個人の判断に委ねられるのですが、使用される方は梅雨が来る前から対策を行っていってくださいね!
梅雨が来て雨が本格的に降り始めてからでは遅いと思いますので…。
薬剤の使用は「治療」ではなく「予防」が大切だと常々思っています。
この記事の終わりに
この記事では、春の薔薇の開花後のお世話として、葉の整理や咲かなかった蕾の処理などの基本的なお世話の内容を紹介しました。
春の薔薇を楽しんだ後は、薔薇が葉だけの状態になりお手入れを怠けがちになってしまいます。
しかし、春の開花後のお世話は、株の次の世代を担うベーサルシュートの発生や病害虫の予防を行う良いタイミングであることは間違いありません。
開花を楽しんだ後に一休みしたい気持ちも理解できますが、時間は待ってくれないので可能な限り早くから着手していただければと思います。
この記事を公開するのが6月初旬ですが、我が家でも既にベーサルシュートの発生が始まりました。
元気よく伸びる新梢 (ベーサルシュート) を見ると、来年以降も美しい薔薇の花が見られることが約束されたようで嬉しい気分に浸れます。
それでは!