年々、気温の上昇が顕著な日本の夏…
都市部では最高気温が35℃を越える日が続くのが当たり前の日常の様になっています。
夏の気温が高くなることは、私達人間にとっても厳しい現実なのですが、薔薇をはじめとする園芸品種の植物にとっても厳しい季節であることは間違いありません。
薔薇を栽培している方であればと、誰もが一度は目の当たりにするであろうトラブルが夏に起こります。
「水切れ」や「夏バテ」の状態です。
朝の水やりを1日忘れただけで、薔薇の新芽が垂れ下がって元気が無くなっていたり、知らぬ間に株全体の葉が黄色くなってしまっていることもあります。
大事に育てて来たお気に入りの薔薇が、そのような状態になっていたら…ショックが大きいですよね!
「この薔薇は、もう枯れてしまったのではないだろうか?」
「夏に葉が無くなったら、秋には薔薇が咲かなくなってしまうのではないのか?」
という焦りも出てくることかと思います。
しかし、実は薔薇はとても強い植物なので、相当な事が無い限りは多少の水切れや夏バテを克服してくれます。
この記事では、夏に水切れを起こしてしまった薔薇の実例を紹介し、その復活までの対処方法や秋の開花に至るまでの過程を掲載していきたいと思います。
薔薇の水切れや夏バテは8月に注意
まず最初に、薔薇が最も水切れ・夏バテを起こしやすい季節についてですが…
皆さんは、どのくらいの季節が、最も水切れや夏バテを起こしやすいと想像されますか?
薔薇を何年も栽培しているベテランさんからすると、「私の住んでいる地域では何月頃だよ!」という的確なお答えが返ってくるかもしれません。
もちろん、お住まいの地域の気候や気温によっても左右されるものではありますが、私が住んでいる関西の都市部では、8月の中旬から後半に薔薇が夏バテを最も起こしやすいです。
薔薇の水切れや夏バテは、毎年のように起こるのですが、8月の発生が最も確率・頻度が高いです。
その理由としては、
① 梅雨が明けて雨天が減る傾向にある
② 夏本番で最高気温35℃越えが連日となる
③ 熱帯夜が続き24時間高温状態
などが挙げられます。
薔薇が最も綺麗に咲くのは20℃前後の気温と言われていますので、雨量が少なく35℃を越えるような季節 (8月) になると、薔薇にとっても厳しい季節となるのは間違いありません。
もちろん、薔薇だけが夏に弱いわけではありません。春に開花を迎える草花も、夏の暑さが原因で活動をとめてしまうような園芸品種も多くあります。
逆に言うと、8月の酷暑を乗り切ることができれば、薔薇を水切れ・夏バテから守ってあげることが出来るということなのだと思っています。
水切れや夏バテを起こしてしまった薔薇の実例
では、次に実際に水切れを起こしてしまっている薔薇の実例を紹介します。
薔薇の品種はロサ オリエンティスの「シャリマー」になります。
2021年の春に新苗で我が家にお迎えした薔薇で、花壇に地植えにしている株となります。
春に地植えした時点では、ベーサルシュートもしっかりと伸ばしてくれて、順調な成長を見せてくれていたのですが、初めて迎える夏の暑さに負けてしまいました。
下の写真が8月後半のシャリマーの状態ですが、株の所々に鮮やかに変色した葉が見えているのが分かるかと思います。また、株元には枯れ落ちてしまった葉も複数確認できる状況です。
このシャリマーの状態は、水切れ・夏バテの初期の頃に見られる症状となりますが、このまま放置しておけば葉がさらに枯れ落ちてしまい、株が丸坊主の状態になることは避けられません。
薔薇栽培の初心者の方に限らず、ベテランの方でも、薔薇が夏にこのような症状に見舞われることは珍しくないと思います。
毎朝・毎晩の水やりを忘れなかったとしても、35℃を越える気温と強い日差しが続くと、薔薇は徐々に体力を奪われていき、写真の様な症状 (葉が黄色に変色) が見られるようになります。
植物は葉から水分を蒸散しているのですが、水切れを起こし始めると葉からの蒸散をストップして株内の水分を保持するために葉を自ら落としていきます。
これが葉が黄色く変色する根本的な理由になりますが、植物にとっては自分の身を守る能力であったとしても、突然葉が黄色く変色したら心配になってしまいますよね…。
しかし、葉が黄色くなっただけであれば、下で説明する作業を行うことで、次の開花シーズンには株を復活させることが可能です。
また、ここで紹介してるシャリマーの栽培記録については、下のリンクで詳細を紹介しています。もし御興味あれば、下のリンクから御確認下さい。
夏バテした薔薇に最初に行う作業 -葉の整理と夏剪定-
それでは、水切れ症状を起こしてしまっている薔薇について、どのような作業をしていくべきなのかを考えていきたいと思います。
水切れを起こしてしまった薔薇を発見するのは、上記の通り8月中であることが多いのですが、実は夏剪定の時期 (8月後半) に重なることも多く、株をリセットさせるシーズンでもあるんですね。
ですので、「水切れ・夏バテをしてしまった…」と落胆する必要なそれほどないのだと感じます。
次の作業①②③を実施するだけで、秋には綺麗な薔薇が咲いてくれるものと思います。
ただし、株全体で茎も茶色く変色してしまっている場合、薔薇が完全に枯れている可能性が高いので、その場合には薔薇の処分が必要になります。
茎が緑色であり、枝を剪定した時に茎の中から水分が出てくれば薔薇は生きていますので御安心を。
作業① 黄色く変色した葉は株から除去
まず最初に、黄色く変色した葉を株から除去していきましょう!
黄色く変色してしまった葉は、既に役割がありません…
役割が無いどころか、落葉を放置しておくと、害虫・病気の温床になってしまう可能性があります。
下の写真の様に、黄色く変色した葉を全て除去すると、株全体の状態や枝の出方なども見やすくなり、剪定もしやすくなりますね!
一部、葉の先端が黄色くなり始めている葉もありますが、これらは近く枯れ落ちてしまう可能性が高いです。
葉が完全に黄色く変色してしまったら、その都度除去してあげてください。
この後になりますが、夏剪定を迎えることになります。
夏剪定の時期については、お住まいの地域ごとで最適時期が変化しますので、適切な時期に作業②に進んで下さい。
作業② 秋の開花に向けた夏剪定を進める
次に、秋の開花に向けた夏剪定を進めていきましょう。
葉が黄色くなって落葉してしまった薔薇は、剪定をするとさらに葉が無くなってしまいます。
そのため、「剪定をするのが怖い」という気持ちになる方が多いと聞きます。
しかし、薔薇は株が枯れない限りは、葉が少なくなっても新芽を出して葉をたくさん展開してくれる植物です。
あまり神経質になり過ぎずに剪定を進めても良いと考えます。
では、実際に上で紹介したシャリマーの夏剪定を進めていきます。
まず最初に、夏剪定をする時に最も困る例を紹介したいと思います。
薔薇は水切れ・夏バテをすると、下の写真の様に、株元に葉が全く無く、枝の先端にだけ葉が残っているような部分が散見されるようになります (黄色の矢印で示した枝) 。
「このような枝は、どこで剪定したほうが良いのか?」という質問を持たれる方は多いと思います。
これについては、正直なところ、葉を残しておく必要は無く、枝の半分くらいの所で剪定してしまえば良いです。
薔薇の剪定は、正解があるようで正解は無いんですよね。
多少失敗したと思っても、薔薇は何事も無かったように新芽を出して花を咲かせてくれます。
神経質になり過ぎて剪定をあまりしないと、逆に立派な花が咲かない事の方が多いくらいです。
下の写真に剪定前後での株姿を載せていますが、右の写真のように、ほとんど葉が無い状態で夏剪定を終えることとなりました。この状態となっても、秋には葉を茂らせて開花してくれることと思います。
作業④ 適切な施肥と活力剤の導入、そして水やりの管理徹底
剪定が終わった後になりますが、まずは定番の「活力剤」を与えて、根から株を元気にしてあげるようにします。
その後、適正量の施肥を行い、新芽を出すための栄養補給をさせてあげます。
個人的な考えですが、即効性のある液肥よりも緩効性の置き肥の方が適切かと思います。株が少し弱った状態になっているので、急激に強い肥料が与えられるよりも、じっくりと効いてくる肥料の方が株に優しいかと。
そして、水やりの徹底管理もぬかりなく。地植えにしていある場所の土の質にも依りますが、朝と晩の水やりは忘れないようにします。ただし、季節が秋に移る中で、土の乾き具合を見ながら、水やりの量を減らすこともお忘れなく。
剪定から1週間で秋薔薇の新芽が顔を出し始める
以下では夏の剪定を行ってから1週間が経過した株の様子を、写真と共に紹介していきます。
まず、最初に葉が全く無く、枝だけになっていた部分の様子ですが、枝の頂点付近の発芽点から多くの新芽が顔を出し始めていることがわかります。
剪定をしたことによって、株に新芽を出すスイッチが入り、葉が無くとも新芽を出してくれています。
「葉が無くなり、枝だけになっても大丈夫なの?」と思われる方も多いですが、薔薇は強い植物なので、枝だけの状態になると、新しい芽を出すスイッチが入ります。そして、新しい新芽を次々と出し、新しい葉をたくさん展開してくれるようになります。
枝が茶色く変色して枯れた状態になっていなければ、高い確率で新芽が出てきますよ!
次に、最も太い枝に発生している新芽の様子になります。
「さすが最も太い枝!」という感じですね。立派な新芽が頂点部の発芽点から発生しています。
この新芽が最も立派に育っているので、秋には最も大きな花を咲かせてくれるのだと期待します!
剪定から3週間後には秋の開花に向けた蕾が顔を出し始める
剪定を行ってから3週間後になりますが、下の写真の通り、新芽が成長して葉の数もかなり多くなってきました。
比較のために、剪定直後の株の様子も載せております。葉が無く、ほぼ丸坊主だった薔薇の株も、剪定してあげると3週間で葉がリフレッシュして立派な状態になってくれます。
これだけ新芽が伸びてくると、新芽の先端には秋の開花に向けた蕾も確認できるようになります。
夏バテ・水切れをしてしまった株でも、株が枯れていない限りは、短期間でこれだけ回復できることがお分かりいただけたかと思います。
この記事の終わりに
この記事では、夏バテ・水切れしてしまった薔薇の株でも、適切な剪定をすることで回復させることができることを実例と共に御紹介させていただきました。
年々暑くなる日本の夏は、薔薇にとっても厳しい環境となり、水やりに気を遣っていても夏バテをしてしまう事があります。また、水やりを1日忘れてしまっただけでも、水切れの状態になってしまう事も多々あります。
夏バテや水切れが起こると、薔薇の葉が鮮明な黄色になって枯れ落ち、枝だけの状態になることが多いです。
しかし、適切に剪定を行い、施肥と水やりの管理をすることで、短期間 (約1ヵ月) のうちに薔薇は回復してくれます。
夏に薔薇の葉が全て枯れ落ちてしまった方、この記事で紹介の方法で薔薇を回復させてみてはいかがでしょうか?
しっかりとお世話を擦れば、秋には綺麗な薔薇の花が見られるかもしれませんよ!?