以前の記事で、2020年は薔薇の1番花後のベーサルシュートが全く出ず、培養土のpH調整することでベーサルシュートが発生したことを御紹介させていただきました。
その時の記事では、花壇と鉢植えともに培養土のpHが6.0以下で、思った以上に酸性化が進んでいたことを紹介し、苦土石灰を用いて薔薇に適したpH=6.5前後に培養土の調整を行ったことを紹介しました。
その成果もあったのだと思いますが、無事に複数の薔薇からベーサルシュートの発生が確認出来ました。
そんなベーサルシュートの記事を書いていて、私がずっと疑問に思ってことがありました。それは、ベーサルシュートはどのくらいの速度で育つのか?という点です。
その疑問を調査するため、上の記事で紹介したつる薔薇のルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールのベーサルシュートの成長速度を測定してみましたので紹介させていただきます。
ベーサルシュートの成長速度の測定方法
今回採用したベーサルシュートの成長速度の測定方法ですがとても簡単です。
ベーサルシュートの発生が確認できた7月後半から、毎週末長さをメジャーで測定していくという方法です。
ベーサルシュートが少し曲がるので、正確な長さを測定することは難しいですが、その点は気にせずに大体の長さを測っていきました。
2020年の夏に、ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールからは2本のベーサルシュートが出たのですが、その2本のベーサルシュートについて長さを測定して成長速度を観察していきました。
測定を行う期間ですが、ベーサルシュートの発生が始まってから、蕾が形成されるまでの間となります。
ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールのベーサルシュートの発生と成長の様子
ここからは、実際にルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールのベーサルシュートの成長を写真で見ていきたいと思います。
ベーサルシュートの発生を確認した7月後半
今年のベーサルシュートのうち、1本目は7月の後半に発生を確認することが出来ました。
ベーサルシュートの芽は下の写真になりますが、このまま成長が止まってしまう場合もあるので、何とか成長してほしいと祈る日々が続いたことを覚えています。
少し見にくいですが、接ぎ木部 (クラウン) の右下部分に、黄緑色の芽が出てきていることがわかります。
無事に成長開始が確認出来た8月初旬
ベーサルシュートの発生が順調に進むと、下の写真の様に元気な枝がどんどん成長してきます。ルージュ・ピエールだけではなく、多くの薔薇は真っ赤な葉と共に凄い速度で成長が始まるので、見ていて成長速度に見応えが出てくるのもこの時期からです。
8月中旬に2本目のベーサルシュートの発生を確認
1本目のベーサルシュートが順調に育つ中、8月の中旬にはもう一本のベーサルシュートの成長が始まりました。1か月の間に2本のベーサルシュートが発生するとは、なかなか嬉しいものです。
冒頭でも紹介しましたが、酸性化した培養土を苦土石灰で中和した効果が表れていたのかもしれません。ただ、ベーサルシュートが出てきたのは、既存の太いベーサルシュート同士の間でした…。このまま成長して大丈夫なのか?と思える場所です。
9月の前半に1本目のベーサルシュートに蕾が形成されました
1本目のベーサルシュートは、何事もなく無事に成長し、9月の前半に蕾の形成が確認出来ました。
この時点で成長速度の測定を終了して、成長速度を測定するためのグラフ作りを開始しました。そのグラフを以下で紹介していきたいと思います。
ベーサルシュート全体の写真は下に示しますが、無事に長く成長をしてくれました。少し見にくいですが、2本目のベーサルシュートも順調に成長してくれています。
ベーサルシュートの成長速度の測定結果
それでは、実際にベーサルシュートの長さを測定した結果を紹介します。
1本目のベーサルシュートは7月27日に発生を確認し、2本目のベーサルシュートは8月8日に発生を確認しました。
青色のグラフが1本目のベーサルシュート、オレンジ色のグラフが2本目のベーサルシュートとなります。1本目のベーサルシュートについては2020年9月2日に蕾が形成されていることを確認しました。
成長の特徴としては、ベーサルシュートの発生初期は成長が少し緩やかなのですが、成長が本格化すると一気に成長の速度が上がります。
最も成長した時で、1週間で約20cmの成長を確認出来ました。1週間に20cmですよ!1日当たり3cm程度成長していることになります。
薔薇は成長する時には1日に数cmは成長するということを聞きますが、勢いのあるベーサルシュートとなると、1日に3cmも伸びるんですね。こうして結果を見るととても驚きです。
2本目のベーサルシュートも、1本目と同じようなグラフの形状になっているので、今後も同じような成長をしていくものと思われます。
また、もう一つの特徴としては、蕾を確認した時点で成長がかなり緩やかになりました。これは、ベーサルシュートの成長が、枝を成長させることから蕾を成長させることに変化したためであると考えられます。
この後は、花を咲かせることに養分を使うため、茎の長さの成長が止まっているようなイメージかと思います。
私の以前の記事で、2020年の春の1番花の花芽 (枝) の成長速度を測定した結果を紹介させていただきました。この時は、四季咲きの木立性の薔薇について、花芽の成長速度を測定したのですが、2カ月で約50cmから60cmの成長でした。
この記事で紹介した成長速度に対して、今回のベーサルシュートは約1か月の間に1m近く成長していることになるので、ベーサルシュートの成長速度の速さがいかに速いかが分かるかと思います。
ベーサルシュートが発生すると、株の中の養分を使って優先的に成長してくると言われますが、まさにその通りですね。養分を独り占めして成長しているのがわかる結果です。
ベーサルシュートの成長中は肥料切れに注意
ベーサルシュートの発生から成長にかけては、薔薇が多くの養分を必要とします。上で紹介したように、ものすごい速度で枝を伸ばしていくことになりますので、それだけ多くの養分を必要とします。
そのため、肥料切れにだけは注意して管理をしていました。
具体的には、薔薇専用の緩効性肥料を規定量与えると共に、隔週で活力剤と液肥を与えています。
液肥については、緩効性肥料との併用になるため、規定濃度よりもさらに薄めたものを与えるようにしています。
活力剤は根を活発に活動させるためのものですが、ベーサルシュートが発生している間は、根から吸収した養分が成長の糧となるので、根の成長もサポートできるようにしています。
この記事の終わりに
この記事では、2020年の夏に発生したルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールのベーサルシュートについて、その成長速度を測定した結果を紹介させていただきました。
薔薇のベーサルシュートは、株の養分を独り占めして成長してくると言われますが、まさにその通りで、1カ月の間で約1mまで成長をしました。最も成長した時は、1週間に20cmの成長を見せてくれました。
この成長を支えるためには、それなりの養分が必要になるので、ベーサルシュートの成長期間中は、肥料切れに注意して管理することも重要かと思います。
ベーサルシュートを放っておくと、あっという間に長く成長するので、適宜麻ひもや支柱で固定するなどして保護することもお忘れなく!