気温が高くなる5月下旬から夏の時期にかけて、薔薇の花壇や鉢植えで一気に増殖する害虫…
それが「ハダニ」です。
繁殖能力が非常に高く、オルトランなどの殺虫剤では退治することができないため、一度広がり始めると対処しきれなくなってしまう非常に厄介なダニです。
一般的に言われているハダニが発生しやすい環境は「高温になる場所」や「乾燥しやすい場所」ですが、私の経験上、ハダニが発生しやすい環境はそれだけではないと感じます。
「ハダニは薔薇が好きだから、薔薇にはハダニがたくさん発生する」と思われている方が多いかと思いますが、実はそうでもないんです。
実はハダニが薔薇に付きやすい環境を、栽培者である我々が生み出してしまっている場合もあるのです。
この記事では、薔薇に発生するハダニについて、栽培環境が与える影響について考えてみたいと思います。
我が家の2021年6月のハダニ発生状況について
まず最初に、我が家の薔薇に発生しているハダニの例から紹介したいと思います。
毎年、ハダニの発生には同じような傾向があるので、以下で紹介する内容は突発的なものでは無く、毎年恒例となっているハダニの発生だとお考え下さい。
後から説明する内容にも沿わせるため、以下の通り、3つの栽培環境に分けて実際の例を説明をしたいと思います。
我が家の栽培環境の中でも、ハダニが早々から発生している株と、抑制できている株が明確に分かれています。
玄関前にある鉢植えの薔薇
まず最初に、玄関前に置いてある薔薇になります。
毎年、新苗や大苗でお迎えした薔薇を育てるのに、玄関前の軒下スペースを使うことが多いのですが、実はこの環境は、我が家の中でも最もハダニが発生しやすい環境となっています。
黒星病を発生させないため、雨を避けて大切に育てているのですが、毎年ハダニだけは回避することができません。
ハダニは薬剤への抵抗力を身に付けやすいので、頻繁に薬剤を散布できない現状もあり、防ぎたくても防ぎきれていない状況です。
上の例では、株の下半分くらいの葉に多くのハダニが発生してしまっている状況になります。
他の植物と一緒に管理している鉢植えの薔薇
次の例は、他の植物の鉢植えが周りに置かれている環境となります。
薔薇の鉢植えが多くなると、どうしても他の植物の鉢植えを並べて育てざるを得ない状況があるかと思います。下の写真は、まさにその状況です。
鉢があまり整理されていない状況で、風通しも少し悪いような環境に見えるので、ハダニが発生しやすそうに見えますよね?
でも、実はこの環境ではハダニの被害が少ないんです。
このように様々な植物の鉢植えを集めて育てている場所は、ハダニが発生したとしても大被害になることは少ない傾向にあります。
このような環境では、ハダニを発見した時点で葉を除去したり、有機農薬で処理する程度で落ち着いてくれることが大半です。
コンパニオンプランツと一緒に植えてある地植えの薔薇
そして、3つ目の例になりますが、コンパニオンプランツと共に花壇に地植えしてある薔薇になります。
下の例では、薔薇の株元にクリスマスローズを植えている花壇になります。(クリスマスローズと薔薇は相性が悪いと言われますが、我が家では花壇が小さいので仕方なく近くに植えています。)
この写真の花壇には2株の薔薇 (ブルームーンとジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコ) が植えられていますが、実は毎年ハダニの被害がほとんどありません。
写真では見にくいのですが、青々とした元気な葉が残っている状態です。この写真を撮影したのは2021年6月中旬の時点ですが、上で紹介した様に鉢植えの薔薇はハダニの被害に合っている中で、花壇の薔薇にはハダニがほとんどいません。
少し分かりにくいですが、花壇には雑草も生えており、かなり緑が茂った状態です。風通しが悪そうであり、ハダニが発生したら一気に蔓延しそうな雰囲気ですが、その傾向はあまり見られていません。
ハダニは薔薇を狙ってやってくるのか?
「ハダニは薔薇を狙って寄生するのか?」
この疑問は、私が薔薇を始めた頃からずっと疑問に思っていた事でした。
「何故薔薇にはハダニが発生して、それが目立ってしまうんだろう…。」…と。
しかし、ダニは街中の花壇や道端、そして家の外壁などにも生息していて、薔薇がある場所にだけ発生しているわけでは無いんですよね。
公園に植えられているツツジの葉の裏、道端に生えているクローバー…それらの葉にもハダニは発生しています。
つまり、ハダニは薔薇だけを目掛けて集まってくるわけでは無いんです。薔薇が無い場所では、ハダニは近くにある植物から栄養分をもらっているはずなのです。
薔薇を大事に育てている方からすると、薔薇に発生してしまったハダニにだけ焦点が当たるため、どうしても「薔薇はハダニの被害に合いやすい」というイメージが生まれてしまったのだと思います。
そして、次の項目で説明しますが、薔薇を大事に育てている方は、薔薇を大事に育てているからこそ、それが原因で薔薇にハダニが発生してしまう状況を作り出しているかもしれないのです。
ハダニの立場で考えると薔薇にハダニが付く理由がわかる
まず最初に、薔薇を栽培する環境について、当てはまりやすい栽培環境のパターンを挙げてみたいと思います。
皆様の薔薇を栽培している環境は、次に挙げる①~③に当てはまる方が結構多くいらっしゃるのではないでしょうか?
① ベランダで薔薇を大切に栽培している状況
② 花壇に薔薇ばかりが植えられていない状況
③ 花壇に雑草がほとんど無い状況 (薔薇の花壇を大切にされている証拠でもありますね)
①については、マンションのベランダで薔薇を栽培されている方に当てはまりやすい環境かと思います。また、薔薇が好きな方は薔薇だけを集めてしまう方も多いので、②に当てはまる栽培環境も多いでしょう。そして、薔薇の花壇は、お手入れがしっかりと行き届いている場合が多いと思いますので、③の環境も当てはまる方が多いと思います。
実際、私の薔薇の栽培環境は②と③に当てはまっている状況です。
実はこれらの環境は、ハダニが発生しやすい状況を作り出してしまっていると言えるのだと考えます。
上で紹介した様に、ハダニは薔薇だけを目指してやってくるわけではありません。他の植物にも寄生します。
しかし、ハダニが活動している場所の近くに、薔薇だけしか無かったら…どうでしょうか?
ハダニの気持ちになって、一度考えてみて下さい。
そこにある薔薇は、ハダニにとっては「砂漠の中のオアシス」の様に見えるはずです。
①の環境であれば、ベランダに住み着いているハダニたちは、ベランダの薔薇を目掛けてやってくるでしょう。そして、高温になりやすいベランダは住みやすいので、薔薇に大量にハダニが発生することになります。
②の花壇に薔薇しかない場合も同じです。他に植物が無かったら、ハダニは生きるために薔薇に寄生するしかないのです。
そして③の環境も同様に考えれます。近くに雑草が生えて無ければ、ハダニは薔薇に向かって突撃してくるわけです。
つまり、ハダニが薔薇に集まってくる環境を栽培者である私たちが作り上げてしまっているのだと考えられるのではないでしょうか?
薔薇にハダニが大量発生してしまっている皆さん (私がそうですが…) 、是非一度、栽培環境について考えてみて下さい。
薬剤の使用に加えて薔薇栽培環境の変更も一考すべき
上で我が家のハダニの発生状況を紹介しましたが、他の植物と一緒に育てている鉢植えの薔薇や、コンパニオンプランツと一緒に育てている地植えの薔薇は、ハダニの被害が確実に少ないです。
ハダニの被害がゼロとは言えませんが、ハダニが原因で元気な葉が少なるなってっしまう確率が確実に少ないです。
しかし、鉢植えの薔薇を玄関前に単独で置いあるような状況では、ハダニの被害が毎年のように起こっています。これは、玄関前がアスファルトで囲まれており高温になりやすく、しかもそこには薔薇しかないという状況であるが故のハダニ発生だと思われます。
つまり、ハダニを防ぐためには、一般的に言われている高温と乾燥を防ぐだけでは無く、他の植物も一緒に育てるという方法も対策になるのだと言えるのではないでしょうか。
栽培環境を変えることは難しいことですが、例えば、ベランダに他の植物の鉢植えを複数置くだけでも被害が軽減される可能性もあります。
薔薇花壇には何かコンパニオンプランツを植えた方がハダニの被害を減らせる可能性もありますし、薔薇の花壇には、実は少しくらい雑草が生えてても良いのかもしれません (見栄えの問題は別として) 。
あらためて考えてみると、薔薇の本や雑誌に掲載される様なローズガーデン (薔薇以外にも植物が多用されているガーデン) は、夏になってもハダニの被害が少ないイメージがあります。
それは、ハダニが住み着く場所が他にもたくさんあり、薔薇だけが集中的に狙われる環境になっていないからなのではないでしょうか?
この記事の終わりに
この記事では、初夏から秋にかけて薔薇の葉に発生するハダニについて、栽培環境の観点でその原因を考えてみました。
ハダニは、一般的には「高温になりやすい環境」や「乾燥している環境」を好むため、そのような場所では大量に発生する可能性があると言われています。
しかし、ハダニは常に薔薇を目掛けてやってくるわけではなく、他にも植物が多くあれば、そちらに寄生する場合も多くあります。もちろん、ハダニにとって薔薇は御馳走になる植物なのかもしれませんが…。
そのため、薔薇が狙われにくい環境を整えるというのもハダニを防ぐ第一歩なのかもしれません。
ハダニにお困りの薔薇愛好家の皆様、難しい事ではありますが、殺ダニ剤の使用に加えて栽培環境の見直しをしてみてはいかがでしょうか?
また、以下の記事ではハダニが大量発生したミニ薔薇を回復させた事例も紹介しています。もしお時間あれば、御参考になれば幸いです。