薔薇を栽培する中で、最も嬉しい出来事の一つが根元から発生するベーサルシュートが出た瞬間ではないでしょうか?
もちろん、春や秋の薔薇の開花時期も嬉しいですが、ベーサルシュートは来年以降の薔薇の開花を担う大事な枝になります。そのため、ベーサルシュートが育った時点で、来年も多くの花を楽しめることが約束されたようなものです。
そんなベーサルシュートは、薔薇の教科書を読むと、ある程度育った時点で成長点をピンチ (枝の先端を切り落とすこと) して成長を止め、枝数を増やすことが推奨されています。
しかし、つる薔薇の場合には異なり、来年のためになるべく枝 (つる) を長く伸ばしたいので成長点をピンチせずに成長させます。
この記事では、夏に発生したつる薔薇のベーサルシュートに、一つだけ大きな花を咲かせて楽しむという内容を御紹介したいと思います。夏の暑い時期は薔薇の花がとても小さく見応えが無いのですが、その夏に発生したベーサルシュートの先端には、蕾を1つに制限することで立派な花を咲かせることができます。
もしよろしければ記事の最後までお付き合いください。
つる薔薇のベーサルシュートは成長させることが基本
つる薔薇はつるを短く切ってしまえば、木立性の薔薇の様に仕立てることも可能です。伸びた分を常に切り戻していれば、少し花枝の長い木立性の薔薇の様な仕立てになります。
しかし、つる薔薇の醍醐味は長くつるを伸ばして、そのつるにたくさんの薔薇を咲かせることかと思いますので、なるべくつるは長く伸びてくれた方が嬉しいです。
つるが長く伸びてくれることで、オベリスクやフェンスなどの構造物や、家の壁面などに誘引しやすくなるというメリットもあります。
そのため、基本的につる薔薇のベーサルシュートが発生したら、成長するところまで成長させてあげます。ただ、つるが長く伸びすぎて困るようであれば、途中で切り戻すようにしても問題は全くないです。
栽培環境に合わせて、適切なつるの長さに育てていくことが最優先ですね。私はたくさん花が咲いて欲しいので、つる薔薇のベーサルシュートは伸びるところまで伸ばして、構造物に誘引するような仕立てにしています。
つる薔薇のベーサルシュートはとても長く成長中は気を遣う
つる薔薇という名前がついているくらいですので、つる薔薇のベーサルシュートはとても長いです。
四季咲きの木立性の薔薇は、ベーサルシュートが1mも育たずに蕾がでてくるものが多いですが、大輪の花を咲かせるつる薔薇はベーサルシュートの長さが余裕で1mを越していきます。
しかも、つる薔薇のベーサルシュートは成長速度が非常に早く、1週間に20cm以上伸びます。
私が栽培しているつる薔薇も、その特徴は同じで、ベーサルシュートの長さが1m以下になることの方が稀です。
ベーサルシュートの勢いが強すぎて、ほぼすべての養分を使って伸びてくることも多く、既存の枝からの新芽の成長が遅くなるようなこともあります。
また、ベーサルシュートが長いことで、普段の管理の中で気を付けるべきこともあります。折れてしまわないようにしっかりと誘引して固定してあげることです。
折角伸びて成長したベーサルシュートが折れてしまうと、本当にショックが大きいので、成長に合わせてオベリスクや支柱などに固定して揺れないようにすることは忘れずに。
また、ベーサルシュートは風で揺れると成長にも支障が出てくると言われています。枝が風に常に揺られて不安定な状態だと、薔薇自身がベーサルシュートが折れるのを防ぐように成長を遅くするという性質があります。
これは薔薇に限らず、他の植物にもみられることと聞きますが、つる薔薇のベーサルシュートを長く丈夫に育てるには、折れてしまったり揺れ過ぎるのを防ぐ工夫が必要になります。
つる薔薇のベーサルシュートの先端は蕾がたくさん出てきます
つる薔薇のベーサルシュートですが、伸び切って開花の準備が始まると、先端にたくさんの蕾を出すようなものが多いと感じます。
私のブログでもよく取り上げている「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」や「つる性のアイスバーグ」等が例ですが、ベーサルシュートの先端の部分の成長点から多くの蕾が出てきます。
下の写真がルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールの例ですが、数えてみると先端には合計で6個の蕾が顔を出していることが分かります。
べーサルシュートは、御存じの通り、薔薇の新梢の中で最も優先的に栄養分をもらいながら成長をします。
そのベーサルシュートの先端 (=頂点) となりますので、ベーサルシュートの中でも最も栄養分が回ってくる場所になります。したがって、これだけ多くの花を咲かせようするエネルギーがあるのだと思います。
ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールは、ベーサルシュートが成長している間は、上で紹介したように、既存の枝からの新芽の発生がかなり鈍くなります。
エネルギーをもう少し分散させても良いかと思うのですが、薔薇にとっては最も元気で最も花を咲かせる能力がある枝にエネルギーを集中させて、しっかりと花を咲かせることをが優先事項なのかと。
ベーサルシュートは一つだけ蕾を残して花を楽しみましょう!
上で紹介した6個の蕾を全て咲かせるとなると、正直なところ相当な養分を使い切ることになります。
また、今年の春の事ですが、ルージュ・ピエールの摘心をしなかったら、春の一番花の後にルージュ・ピエールが不調になった経験があるので、蕾はできる限り摘心で数を制限することが大事かと思います。
この記事の本題でもありますが (やっと本題に入りましたが…) 、私はつる薔薇に発生したベーサルシュートには、1つだけ蕾を残して1つだけ花を楽しむようにしています。
上のルージュ・ピエールの写真に記した番号で言うと、最も蕾が成長している1番の蕾以外は全て摘心で除去し、1番の蕾だけを大事に育てます。
ベーサルシュートは梅雨から初秋の時期に出てくることが多いのですが、その夏の暑い時期というのは、薔薇の花のサイズがとても小さくなる傾向にあり、咲かせても見ごたえが全くありません。
しかし、そんな暑い中でも栄養分を独り占めして育つベーサルシュートは、蕾が形成された場合も栄養をたくさんもらえるので、蕾が比較的立派に成長して大きな花を咲かせてくれます。
つまり、夏の暑い間に大きな薔薇の花を咲かせることができる唯一のチャンスだと思っています。
ベーサルシュートの蕾を全て咲かせたらエネルギーを使いすぎるのですが、1つだけ立派な花を楽しむくらいであれば、正直なところベーサルシュートへの悪い影響は無いと思います。
夏の間はほぼ全ての蕾を摘心で除去してしまうので、ベーサルシュートに咲く立派な花は、夏の間の唯一のオアシス的な存在です (笑)。
蕾を1つにすると蕾の成長速度が速くなる
蕾を一つの制限してあげると、ベーサルシュートの持つ栄養分を、その一つの蕾が独り占めできるようになりますので、蕾の成長が速くなり大きく育つようになります。
実際に、上で紹介したルージュ・ピエールのベーサルシュートですが、残した一つの蕾は10日後には赤い花弁が見え始め、蕾も夏のものとは思えないような大きさに膨らんできています。
蕾だけではなく、ベーサルシュートの葉は、つやつやに輝きとても綺麗な葉をしていますね。この蕾が咲いたら、また記事を更新して紹介したいと思います。
この記事の終わりに
この記事では、初夏から初秋にかけて発生するつる薔薇のベーサルシュートに、一つだけ立派な花を咲かせることを楽しむという内容を御紹介させていただきました。ちょっとマニアックな記事で申し訳ないです。最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
つる薔薇のベーサルシュートは成長の途中で成長点をピンチすることがないため、ベーサルシュートが成長すると先端部分に多くの蕾が形成されます。
その蕾を全て咲かせるとベーサルシュートのエネルギーを使いすぎてしまうのですが、蕾を一つだけに絞って咲かせることは、それほど株に負担をかけることでは無いと思います。
夏の間は薔薇の花がとても小さくなり、見ごたえの無い薔薇ばかりが咲いてしまいますが、その年に発生したベーサルシュートには夏でもとても立派な薔薇が咲きます。
つる薔薇を育てられている方は、夏の暑い季節、ベーサルシュートの先端に形成される大きな薔薇の花を体験してみはいかがでしょうか?